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対角線に薫る風  作者: KENZIE
69/206

第69話 日本選手権女子100m決勝

結果、183センチは2人ともクリアできず、水沢さんは残念ながら準優勝となった。


「惜しかった…」


「パスしないほうがよかったかなあ」


聡志が言ったけど、それは結果なので致し方ない。


どうせ180センチは跳べないと判断したのかもしれない。

183センチくらいは跳べると思っていたのかもしれない。

いずれにせよ、その判断は水沢さんの中にある。

他人が口出しするようなことではない。


とにかく、これで水沢さんも一気に全国区だ。

インカレでも注目の選手の一人となることだろう。


「さあ、今度は100mだ」


「そうだそうだそうだ」


「始まる始まる」


女子100mの決勝には、千晶さんと真帆ちゃんが出場する。


大舞台に強い千晶さんは楽勝で、真帆ちゃんは準決勝はぎりぎりだったけど勝ち残った。

新見が出ていないのは寂しいけど、関カレ女王の千晶さんに何とかしてほしい。

真帆ちゃんはちょっと、日本選手権レベルでは厳しいか。



「on your mark」



選手紹介が終わり、いよいよスタートだ。


本命は、ライテックスの山本幸恵。

日本歴代2位の11秒36の記録を持つ選手だ。

26歳。

今、脂が乗っている時期である。



「set」



号砲と同時にガチャンとスターティングブロックを蹴って選手が一斉に飛び出す。


スタートは山本幸恵がいいようだった。

横一線。

飛び出した選手はいない、横一線だ。

専門の200mなら、千晶さんでもどうにか抗することができるかもしれない。

しかし、どちらかといえば100mが得意な山本幸恵が序盤を押し切って先頭。


そのまま中盤へ突入し、山本がぐっと伸びてきた。

いい加速だ。

どうにか、千晶さんもついていきたいところだが、脚色が違う。


「さっちんがんばーっ!」


ライテックスの応援団が声を上げる。

徐々に、山本がリードを奪い始めた。

スタンドがわき始める。

中盤で一気に前に出る山本。

いい走りだ。


「がんばーっ!」


必死で千晶さんが食らいつこうとするが、じりじりと話されていく。

ほかに追いかけていける選手はいない。

山本の独走。

初の日本一に向けて、山本が走る。

山本1着、千晶さん2着で体勢はほぼ決まったか。


「お」


そう思ったが、残り40mからするするとアウトレーンの選手が前に出てきた。

小さくて見えなかったが、伸びがいい。

中盤はそこそこだったが、後半もスピードが落ちなかった。


畑に植えられたネギみたいな髪型。

ちょんまげだ。

ちょんまげスプリンター、真帆ちゃんだ。


6、7番手から、一気に上位へ。

さすがにこのレベルでは苦しいかと思っていたのだが、一気に伸びてくる。


「おおっ…」


いい走りだ。僕から見ても分かった。

 

トップは山本、2着は千晶さんでこれはもう変わらない。

だけど、ちょんまげ頭がぐいぐい伸びてきて、3位の選手と並ぶようにしてゴール。

山本幸恵との差は、ぱっと見で2mぐらいだった。


「おーっ」


「頑張ったな」


「頑張った頑張った」


初の日本選手権で、見せ場をつくれたら大したものだ。

僕たちは大きな拍手を送った。

いいレースだった。


ちなみに、男子100mは玉城豊が制した。

10秒12の好タイムで、安定しているのが強みの選手だ。

 

2着は、栄邦工業大学を卒業して鳥羽化学に入社した後藤俊介で、10秒19。

インカレ4連覇という偉業を達成した選手だ。

ゴリラ顔だけど、次世代のスターと目されている。


3着に、東南銀行に入社した元キャプテンの柏木さんで、10秒27。


日本記録保持者の本間隆一は欠場。

関カレで優勝した浅田次郎は5着で10秒41。


ライバルたちの、背中は遠い。

だけど来年は、僕もまたこの舞台に立ちたい。

そしてその前に、今年のインカレで頑張りたい。

僕も大舞台で活躍したい!


「さて。寝る場所でも探すか…」


その前に、車中泊だ。

男4人で。

狭いスペースでの睡眠との戦いだ。


お布団とは言わないから、せめて寝袋とかで寝させてほしいです…。

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