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対角線に薫る風  作者: KENZIE
182/206

第182話 競技開始!

さて。

いよいよ開幕する世界陸上。

我が日本チームにおける注目選手は、第一に男子円盤投げの室井和史33歳だ。


前回の世界陸上では銀メダル。

その前のオリンピックは金メダル。

今シーズンも世界ランキング2位。

ぐりぐりのメダル候補だ。


あとはぐっと下がって、女子マラソンでメダルがとれるかどうか微妙といったところ。

そのほかの種目は、8位入賞できれば上等というのが大方の予想だ。

一応、日本陸連が目標としているのは、メダル2、入賞5である。


「ファイトーッ!」


その目標が達成できるか否か。

大きな鍵を握っている女子マラソンが、午前9時にスタートした。

競技場からのスタートを、大きな声を挙げて見送ると、とりあえずは暇になる。

男子十種競技や男女100mの予備予選が行われるが、日本チームからは誰も出ない。


「ミキちゃんたち、何時ごろ来るの?」


新見に聞かれて時計を覗き込む。


「12時半に着くって言ってた」


「そっか。直接来るのかな?」


「たぶん。迎えに行こうかな」


何の気なしに言うと、前の席に座っていた加納コーチがぐるっと振り返った。

慌てて、新見が僕の口を手でふさいでぶんぶんと首を振る。


「冗談です。どこにも行きません。もう、陸上一筋」


新見が言うと、加納コーチは無言で前を向く。

遊びに行くわけじゃないからいいじゃないかと思っていたけど、そういうのも駄目らしい。

まあ、彼女とイチャイチャしてるように見えるからね。

実際、そうだし…。


「誰来るんだっけ」


亜由美さんが聞いてきたので、僕は何となく小声で答えた。


「えと、ミキちゃんと知香ちゃんと宝生さんと、金子君」


「ふうん。大丈夫?男の子まざってて」


「大丈夫」


「金子君も男の子だから、危ないよ?」


「いや、あのメンバーだし大丈夫でしょ」


「いやいや。男ってのはねえ…」


ふっと、達観したようなため息を亜由美さんは吐いた。


もちろん、僕も男だからまあ分かる。

でも、今回は金子君が若干気の毒のような気もする。

絶対に代わりたくないような感じだ。

あのメンバーだからねえ…。


「星島は、予選突破できそうなの?組み合わせ的に」


女子マラソンをオーロラビジョンで見ていると、杏子さんに聞かれた。

今日は午後のセッションで、女子1万m決勝がある。

それと、男子100mの予選と、女子400mの予選も。


「まだ組み合わせ出てないんですよ。100mは予備予選あるから」


「ああ…」


一瞬、杏子さんは納得しかけたが、


「予備予選って何であるの?」


とさらなる質問をぶつけてきた。

 

予備予選は、分かる。

予選の前にある予選だ。

しかしなぜあるかと聞かれると、ちょっと自信がない。

ミキちゃんがいたらミキちゃんに聞けばいいんだけど、いないので答えようもない。

なので、黙っていると、代わりに本間さんが答えてくれた。


「普通なら選手団0人の国あるだろ。誰も標準記録を突破できなくて、選手を参加させれない」


「うん」


聞いたこともないような、太平洋の小さな島国とか。

フランス領○○とか、そんなところね。


「そういう国は、男女1人ずつ、好きな種目に選手派遣できるんだよ」


「ほー」


「それで、お手軽に100mに代表を送る国が多いわけだ。ここまでは分かった?」


「分かった」


「今、陸上は3ラウンド制だろ。予選、準決勝、決勝」


「うん」


「予選は最大56人って決まってるんだよ。8人ずつレースして、7組」


「うん」


「各国から、標準記録を突破した選手が集まってきて予選を戦うだろ」


「うん」


「標準記録を突破した選手が50人だとすると、あと6人出れる」


「あー。それを予備予選で決める?」


「そうそう。上位の選手が予選に進む」


「何となく分かった。つまり、俊ちゃんはそろそろ出番なんでしょ。予備予選の」


「全然理解してないじゃん!おれは、シード選手!」


後藤さんがでたらめを言ってみんなが笑う。

後藤さんと杏子さんのおかげで、短距離チームはいつも明るい感じだった。



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