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対角線に薫る風  作者: KENZIE
149/206

第149話 難病

「ごちそうさまでしたっ」


食後、コーヒーを飲んで一息つく。

 

ちなみに今日のメニューは、大根とじゃこのサラダ、筑前煮。

シャケを焼いたやつと、具だくさんのみそ汁、あとはエビ入りかき揚げ。

杏子さんがいないので、ビールは最初だけ。

あとは普通の食事会といった感じだ。


「のぞみん、ゲームしよ」


コーヒーを飲んでいると、デザートまで食べて満足した金髪の宝生さんが僕のひざを叩いてくる。


「おれはいいや。ロシア人とやって」


「うー。おれ食い過ぎてギブ」


「あたしもギブ」


加奈と聡志は、どてっとソファーに倒れていた。

真帆ちゃんと水沢さんが後片づけ。

ミキちゃんと新見は、キッチンでノートパソコンを覗き込みながら何か密談をしている。


「んじゃおれやろっと」


高校の後輩、織田君がコントローラーを握る。


「何やる?何やんの?」


「んー。スーパーボンバー君は?」


「おっ。協力ね、殺し合いなしね」


「OK」


宝生さんと織田君がゲームを始めて、僕はただそれをぼんやりと見ていた。


楽しそうにわいわいやっていたけど、何だかそれがずんずんと頭に響いた。

気のせいか、ちょっと頭が重い気がする。

真帆ちゃんが戻ってきて、ゲームに参戦する。

すぐに水沢さんも戻ってきて、僕の隣に座った。

僕の顔を見て、それからすっと僕の額に手を伸ばした。

水仕事を終えたばかりなので、手がひんやりしていて気持ちよかった。


「熱は、ないみたいですね」


「ん。何で分かったの?」


水沢さんは、細い目をますます細めた。


「星島さんのことは、いつも見てますから」


言っておいて、自分で気付いたのか少し照れ笑いをする。


「ストーカーみたいですね。迷惑だったら言ってください」


「あ、いや、全然、うん」


「薬、もらってきましょうか?」


「あ、いい。ここ騒々しいから避難する」


立ち上がって、背伸びをしてキッチンに向かう。

大方、密談は終わったようだ。

ノートパソコンを閉じて、ミキちゃんと新見がコーヒーを飲んでいた。


ミキちゃんの隣に座ると、新見が僕を見てにこっと笑う。

気付かなかったけど、僕に付いてきていたらしく、水沢さんが僕の隣に座った。

リビングから真帆ちゃんがぱたぱたと走ってくる。


「新見さん、ちょっと手伝って!」


「え?」


「織田君、強すぎて勝てないから!」


結局、殺し合いになってしまったらしい。

スーパーボンバー君で殺し合いにならないわけがないのだ。


新見が真帆ちゃんに引っ張っていかれて、キッチンは3人になる。

ミキちゃんは黙ってコーヒーを飲んでいたけど、水沢さんと違って何も気付かない。

僕がじいっと見ても、不思議そうにまばたきをするだけだった。


「何?」


「頭重い」


ミキちゃんが僕の額に手を当てる。

ミキちゃんの手は温かくて、あまり気持ちよくはなかった。


「疲れたのかしら」


「うん」


「エッチなこと言う元気はあるのにね」


不機嫌そうに眉毛を少し傾ける。

さっきのことを、まだ根に持っているようだった。


「そういう言い方は、よくないです」


だけど、水沢さんが援護射撃をしてくれる。


「皮肉は何も生みませんよ。気持ちは分かりますけど」


「え、うん…」


ミキちゃんは少し驚いたようだった。

それから、僕をちらっと見て、小さく、ごめんと言った。

やっぱり、ミキちゃん、いい子だ。


「心配しなくても、星島さんはミキちゃん病ですから。二言目には、もう…」


水沢さんが言って、ミキちゃんは顔を真っ赤にした。


「そ、そうなの…?」


「そうですよ。見ててこっちが恥ずかしくなるくらい」


そうなの?

全然、自覚はないんだけど…。


「おれ、そんなにミキちゃんミキちゃん言ってるかなあ…」


「言ってますよ」


口を挟むと、水沢さんはそう言って笑った。


「星島さんって、ミキちゃん病ですよね?」


振り返って、リビングのほうに声をかける。

向こうから、どっと笑い声が起きた。

僕もミキちゃんも、真っ赤になってしまったのだった。

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