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対角線に薫る風  作者: KENZIE
138/206

第138話 月9では教師役です

杏子さんがあまり酔っ払わないうちに解散して、マンションに戻る。


「ただいまっと」


「お帰り。お疲れ様」


パジャマ姿のミキちゃんに声をかけると、いそいそとリビングへ向かう。

ノートPCを借りて、さっそく日本スーパーグランプリのサイトを見てみた。

まだ開催されていないので、見れないところも多い。

だけど、いろいろ面白そうなコンテンツはあった。


日本スーパーグランプリ本大会に出場するための予選会は、全国数十箇所で行われる。

基本、各県1カ所な感じ。

北海道とか岩手とか、面積が広いところは数箇所。

タイムアタックなので、参加者のうち記録のいい上位8名が本大会に進出できる。


各会場ごとに、それぞれ有名人が2、3名招待されている。

もちろん、オープン参加で来る有名人もいるだろう。

それは当日のお楽しみとして、招待選手はホームページに羅列してあった。


「おお。本当だ、犬塚仁」


「何?」


ちょっと不思議そうなミキちゃんに、自分が発見したかのように教えてあげた。


「グランプリの予選会に、犬塚仁が来る。絹山に」


「ふうん…」


「嫌い?犬塚仁」


「別に。興味ない」


「そう」


「私は、星島君ひとすじだもの」


そんなふうに言って、ミキちゃんは杏子さんみたいに僕の頭をくりくりと撫でた。

珍しく、かなり酔っている。


ゼミで飲み会があったのだが、最初は面倒だから行かないとか言っていたのだ。

それを、半ば無理やり行かせた。

ぶつぶつ言ってたけど、楽しんできたのかな。


「酔ってる…?」


「別にぃ、酔ってないわ」


語尾を伸ばすミキちゃん。

100%酔ってます。


再度、画面に目を落とすと、有名人の名前の横にリンクが張ってある。

ブログや公式サイト、SNSへのリンクだ。

有名人にしてみれば、自分の宣伝にもなるわけ。


試しに犬塚仁のブログを見てみると、限定のランニングシューズの写真が張られていた。

もらったやつだろう。

これを履いて、7月末の日本スーパーグランプリ予選会に参加すると書いてある。

正確なアクセス数は分からないけど、何万人、何十万人もの人がこれを目にしただろう。


「それより、今日の報告が聞きたいんだけど」


「う」


思わず唸ってしまった。


「5着でした。追い風0.2mで、10秒33」


「10秒33で5着?」


「そうなの」


「追い風2.0mじゃなくて?」


「いやいや、0.2m」


ソファーに座り、隣にトスンと座ったミキちゃんに今日のできごとを逐一報告する。

まあ、10秒33で走って5着ならどうしようもない。

いくらなんでも10秒08とか速すぎる。


玉城豊、ちょっと変な人でイメージが壊れてしまったけど。


「まあまあ、いいんじゃない。10秒33なら」


「そうだよね。風もなかったし」


「コンディション戻ってきたら、いけるでしょ」


「うん。頑張る」


「星島君も、私ひとすじ?」


「え、うん。ミキちゃんひとすじ」


唐突な質問に答えると、ミキちゃんはまんざらでもなさそうな表情で僕の手を握った。

それから、こてんと僕の肩に頭を乗せる。

長い髪から、ふんわりといいにおいがした。


頬を寄せて、それからこめかみのあたりに軽くキスしたけど嫌がらなかった。


「み、ミキちゃん…」


もっと激しくいちゃいちゃしたくなって、すりすりと脚を撫でたけど反応がない。

それもそのはずで、ミキちゃんはもう目を閉じてすうすうと眠っていた。

よくあるパターンのやつで、おあずけだった。

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