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対角線に薫る風  作者: KENZIE
135/206

第135話 今は月9に出ています

とりあえず、本間君とサブトラックに戻ってダウンをする。


詩織ちゃんがどこからともなく現れて、スポーツドリンクをくれた。

出番が近いのか、亜由美さんがアップをしている。

そのほかの関係者は見当たらなかったけど、スタンドかな。


「浅海さんのとこは、どうやれば入れるんですかね」


ストレッチをしながら、本間君が呟いた。

まさかスパイクにつられたわけではないだろうが、気になっているらしい。


「どうだろ。杏子さんの気分かな…」


「そんないいかげんな?」


「そんないいかげんな。本間君ならどこかお誘いあるんじゃない?」


「まあ、ないことはないですけどね。とりあえずライテックスは嫌だ」


「ふーん」


一人っ子の僕にはよく分からないけど、どうなのかな。

やっぱり、お兄さんと比較されるのは嫌なのかな。

日本記録保持者だし。


今や、本間君も短距離界のホープなのだから、胸を張っていればいいと思う。

兄弟間の問題でもあるのだろうか。

特に問題がなくても、感情的になかなかそうもいかないのかもしれない。


「お兄さんと仲悪いとか?」


聞いてみると、本間君は軽く首を振った。


「いや、尊敬はしてますけどね」


「あ、そうなんだ」


「でも、100m1本走るたびに比較されてみてくださいよ。絶対嫌になりますから」


本間君は素直に真情を吐露した

たまになら仕方ないけど、毎レース毎レース言われてたら、嫌になるのかな…。


「兄貴の付属物みたいな扱いされるんですから、たまったもんじゃないです」


「んー、まあ、そうだろうねえ」


「それに、浅海軍団楽しそうだし」


「それは間違いない。今度一緒にご飯でも行くかい」


「それはもう、是非」


何か、仲良くなれそうでちょっとうれしいぞ。


ダウンを終えて、本間君とおしゃべりしながら休憩していると新見が戻ってきた。

詩織ちゃんと一緒で、2人とも笑顔がこぼれている。

何かいいことでもあったのかもしれない。

詩織ちゃんと2人、笑顔が似合うコンビで、何となくこっちも笑顔になってしまった。


「はい、頑張った人にごほうび」


「わーい」


3人とも、詩織ちゃんから飴をもらう。

今日のは、ソフトタイプのいちごキャンディでした。


「何かいろいろ問診された」


キャンディをもごもごさせながら新見が言った。

もう一個ちょうだいと言って詩織ちゃんに手を伸ばして、ぱしんと叩かれて笑う。

何かどんどん食いしん坊キャラになってきているような…。


「戸川先生に?」


「うん。問診っていうか、何かあれこれ聞かれた」


「そっか。やっぱ気になってるんだな」


「まだ全力出すとピキっとくるしねえ」


「ピキっと」


「あ、やばいって感じ。もうちょっといろいろ運転して慣らさないと駄目だなあ」


「そっか…」


「グランプリは諦めて、星島君にごちそうしてもらうことにするよ」


「いや、おれも出れるか分かんないから」


「グランプリといえば」と、本間君。


「昨日の夜、CMやってましたよ」


「え、マジで?」


「スポーツニュースの時間に」


「うーん。そんなお金あるのだろうか」


何だか、ちょっぴり不安になってきた。

僕が入社する前に倒産したらどうしよう。


「ホームページ面白いっすよね」


「う。見てない」


「絹山は、犬塚仁が来るって」


「え。何しに?」


本間君の言葉に、新見がぴかっと目を輝かせる。

犬塚仁は、二枚目の若手俳優で、若い子には人気があるようだ。


「だから、走りに」


「おおーっ」


「あと誰だっけな、サッカーの日本代表の人だったかな。ホームページに全部載ってますから見たらいいですよ」


「大丈夫かな?赤字にならないかな?」


新見もそんなことを言った。


「いや、それは知らないですけど」


「犬塚仁、本当に来るの?」


うれしそうに聞く新見。

何となく悔しいぞ…。


「たぶん。ホームページに載ってましたから」


「わーっ。大丈夫かな。パニックにならないかな?」


「もうなってるじゃないですか」


「あはは。あたしじゃなくて」


満面、笑顔の新見。

何だかとても悔しいけど、そんなことより、そんな大がかりにやって大丈夫なのだろうか。

本気で、心配だった。

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