~1日目
最後まで読んだら
この次の話が、「気になるか、気にならないか、それ以前の問題か」、感想で教えてください。
ここは、とある県のとある中学校。
何のことはない、どこにでもある中学校だ。
11月4日。特に何もないはずのこの日に、今日は変化が訪れた。
ここは、2─2の教室。
教室内は、登校してきた生徒らの話し声で満たされている。
「席についてください!みんな、ちゃんと時計を見て!」
誰もが自由な行動をしているさなか、教室に女子生徒のはっきりとした声が響き渡る。
生徒らもその声に反応して、あっというまに全員席に着く。
すると、姿勢のいい男教師が教室に入ってきた。
「おはよう。」
教師が挨拶する。
それに反応して生徒も挨拶をし返した。と同時に、少数の生徒が教師のうしろの少年に気づく。
生徒の様子に教師は気が付き、「静かに」の意味を込めて教卓を二回たたく。
ドンドンと、響く大きな音に教室はざわつく前に静かになった。
「皆さんお察しの通り、転校生です。」
教師はそう言って、少年を前に出す。
少年は、緊張するそぶりを見せるわけでもなく、そのまま前に出た。
姿勢が悪く、腰が曲がっている。その表情は固くなく、怖くもない。ぼーっとしていて、無表情である。その様からは、何も感じ取れそうではなかった。
「三原翔です。」
ここで、翔の言葉は途切れる。
それだけ?と誰もが思い、生徒らは聞く姿勢を崩さずじっとしている。
その思いとは対照に、翔はぼーっとしたままである。
教師も、不自然に途切れたため、「終わりか?」と、確認を取った。
すると、翔は口を少し開いて、何か生徒には聞き取れない声で言葉を発した。
ただ、あまりにも小さな声で、教師も聞き取れなかったようだ。
再度、確認して翔の頷きにより自己紹介が終わったということがわかった。
あまりにも短い自己紹介にクラスが動揺している。
気を取り直し、教師は付け足しで紹介した。
「三原君は両親の仕事の関係でこっちに転校することになった。いいやつだから、仲良くするように。」
教師は翔に後ろの席に座るようにいった。
翔が席に着くと早速、翔に話しかける生徒がでてきた。
その様子をみて、教師は勢いよく言った。
「迷惑はかけないように。」
見るからに、心配なのだろう。
少し強めの言葉に、生徒は渋々といった様子で席に座りなおした。
~準備時間~
教師の話が終わり、休み時間に入った。
翔の周りには、5分の休み時間だというのに多くの人が集まった。
何処から来たのか、好きなことや仲よくしようなど、様々な話題が翔を中心に飛び交う。
ただ、自己紹介の時と変わらず翔は、淡泊な返事しかしなかった。
そのせいか、初めは活気づいていた彼の周りも、直ぐにその勢いを失った。
1分前。全員が着席したころに、翔は席を立ち教室の扉へとカバンを持って歩いていく。
「ちょっと、どこ行くの?」
少しおどろいた調子で一人の生徒が少年に尋ねると、翔は「帰る」と一言言い、有無を言わさず、教室を出て行った。
翔が教室を出た後、翔に対する評価や感想が教室から聞こえてくる。
その声は、曖昧であるものの、翔が期待外れであることをどことなく感じさせる、決して聞いていて良いものではなかった。
僅か3分と数十秒。このクラスの翔に対する評価は一気に下がった。