第一章 4話「ペナルティの代償」
リリーの屋敷へやって来た夏樹は入浴中に、あの言葉を口にしてしまう。またあの現象が起こり、夏樹はその時はじめて気づいた。ペナルティには払うべき代償があると―。
ギィィ…バタンッ!
「うぉー!!すっげぇーな!こんなん映画でしか見たことねぇよ!」
ロビーのあまりの豪華さに夏樹は興奮して叫んだ。
「夏樹。部屋へ案内するわね。あなたの部屋はこっちよ。」
夏樹はリリーに連れられながら、屋敷の内装を見ていた。
廊下の壁にはいくつもの絵画が飾られており、赤い絨毯がより豪華さを引き立たせる。
夏樹はふと窓の外を見た。
「いい天気だなー。ん?ありゃー、誰だ?」
庭の木にもたれ掛かって赤い方髪で短髪の女の子が本を読んでいる。
「なぁ、リリー。あれってー…誰?」
「あの子はこの屋敷の使い魔よ。」
「使い魔?」
「そう。この屋敷の主である私が召喚魔法で呼び出した使い魔なの。とても優しい子なのよ。」
リリーはそう言うと、夏樹に手招きした。
「ここがあなたの部屋よ。荷物を置いて、準備が出来たら、もうすぐ夕食だから、階段横の食堂に降りてきてね。」
「あぁ、ありがとうな!」
夏樹は荷物を整理し、食堂へ向かった。
「おぉ!うっまそうだなぁー!!いっただきまーす!!」
「待って!夏樹、まずはちゃんとお祈りをしてからよ。」
リリーが祈りを捧げ始めた。
「大地の女神よ、この飢えた体にお恵みいただき感謝を。」
「感謝を!それじゃあいっただきまーす!!」
夏樹は目の前のごちそうに飛びついた。
「フフフッ。もう、夏樹ったら子供みたいに。」
「さぁ、ルクシラもそこに立ってないで一緒に食べましょう?」
「さっき本を庭で読んでた子か。ルクシラって言うのか。なぁ、君もそんなとこに立ってねぇで一緒に食おうぜ!」
ルクシラと呼ばれる少女は首を横にふり、
「いいえ、私は使い魔である身、主と食卓を共にするなどとんでもございません。」
ルクシラは冷めた表情で、夏樹たちの食事を見ているだけだった。
「そんなこと言わずにさ!」
「いいえ、私は使い魔である身、主と食卓を共にするなどとんでもございません。」
彼女は、先程の言葉を一字一句違えずに繰り返した。
「この子は他の使い魔に比べて、とても真面目な子なの。だから律儀に大昔のきまりを守っているの。別に夏樹のことが嫌いだからとかじゃないから気にしないで。」
リリーの精一杯のフォローで夏樹はとりあえずあきらめ、食事を終えた。
「はぁー、やっぱり風呂はどこの世界でも最高だなー。」
夏樹は食事を終えた後に、入浴をしていた。
「しかし、今日の昼のあの気配。一体何だったんだろう。」
夏樹は昼間の飲み屋での不思議な感覚のことを思い出していた。
「夢、か。」
夏樹がそう口に出した瞬間!昼間とおなじ。周りの空気が変わり、辺りが歪み、音も何もしない世界になっていた。
「ま、またか!?こ、怖い…。や、やめてくれ!!」
夏樹は必死に叫んだ、つもりだった。声がでない。
「ぐっ!ぁ、…あぁ…。」
何かが頭の中から引っ張られていく。気持ちが悪い。
(そうか、昼間の時の喪失感はこういうことだったのか!)
「…!り、リリー………。」
「!!はっ!」
夏樹はベッドの中で目を覚ました。
「あれ?朝だ…。」
夏樹は、状況があまり理解できないでいた。
「どうして俺はここに?あれ?てか、ここどこだっけ?」
夏樹は部屋を見渡した。ベッドの横には小さなテーブルがあり、そこに書き置きがあった。
―夏樹へ―
目が覚めたらこれを読んでほしい。あなたは昨晩、お風呂の中で倒れていたのであなたの部屋に寝かせておきました。今は私は学校の方へ行っているので、看病ができません。だから、今日はゆっくり体を休めてください。
リリーより
「俺が、倒れた?い、いつ?思い出せない。あれ?俺ってなんだっけ?」
夏樹は何故か昨晩のこと、自分のことまでも忘れていた。
「えっと…、リ、リー?誰だっけ…?」
その時、頭の中で誰かが呼んだ気がした。
「―つき…。」
すると、夏樹は激しい頭痛に襲われた。
「うぐっ!ああ!くっ…。」
そして、思い出した。
「リリー…、なんで!?どうして!?どうして俺は…、リリーのことを忘れていた!!」
夏樹は何故かリリーのことをきれいさっぱり忘れていたのだ。そう、まるで全く知らない人のような感覚だった。
「はぁ、はぁ、はぁ…。クソッ!なんだってんだ!俺はどうしちまったんだ!」
夏樹は気分を変えるために、外へ出てみることにした。
「何か思い出せるかもしれない。」
ワイワイガヤガヤ
「なんだ、この町は。頭が獣のようなやつがいる!背中に翼が生えてるやつもいる!」
夏樹は、何かを思い出した。
「そ、そうだ!俺は確か、リリーに案内をされて…。」
と、その時中心街の方で叫び声がした。
「誰かー!!たすけてぇ!!!」
夏樹はその声を聞き、フードを被り、現場へ直行した。
「オラオラぁ!!今から!俺様に肩をぶつけた不届き者を晒し首にする!」
広場では、謎の男たちが女性の腕を引っ張り回し、叫んでいた。
「申し訳ございません!!何でもいたしますからぁ!!」
「じゃあ、今ここで死ねぇ!それが俺の願いだ!ヒャアハッハッハ!!」
ヒュンッ!
バキィッ!
「うぎゃあー!!だッ誰だ!今俺を蹴り飛ばしたヤツァ!!」
「俺だ!」
(俺は一体何をしているんだろう。)
「完全にキレたぜ!!俺らに喧嘩売って、ただですむとおもうなよ!!!こい!『第二界門の竜』よ!」
何やら、魔方陣のようなものが出てきた。その中からドラゴンが姿を現した。
「ド、ドラゴンだと!一体なんなんだこの世界は…。」
夏樹は、無意識に能力を発動した。
「例え、怪獣が相手でも俺は皆を守るんだ!!」
(マジで俺、何やってんだ?)
ドラゴンが夏樹へ襲いかかる。
「ギャァゴォ!!!」
民衆の皆が夏樹の状況に絶望した。が、しかし、
ドォオオオオン!!
なんと夏樹のパンチが、竜に押し勝ったのである。
「だ、第二界門の竜が負けた!?こ、こいつ!危険だ!引き上げろ!」
謎の男たちは、その場から逃げ出した。
「うぉー!!あんたすげぇーよ!この町のヒーローだ!!」
(ヒーロー…?あぁ、そうだ、俺はヒーローだった。この俺、火色夏樹は悪から皆を守る、ヒーローだったんだ!!)
夏樹は何も言わずに、その場から飛び去った。
まだ、歓声が聞こえる。
「全部思い出した。俺はヒーローだった。そして、リリーと俺は、さっきの連中に巻き込まれて出会った。」
徐々に思い出してくる。
「俺は昨晩、風呂で倒れた。あの時、あの現象で無くしたもの。それは―。」
「―記憶だ…。」
さぁ、いよいよ謎が明らかになってきましたね!これから夏樹は一体どうなるのでしょうか?新しい登場人物も何か色々と謎を持っていそうです。
っと、これ以上はネタバレになりますね!
それでは次回もお楽しみに!