第一章 2話「青い瞳の少女」
異世界に来てからずっと混乱しっぱなしの主人公。しかし行く宛などもなく、困り果てているところに何やら事件が―。
ヒュゥゥウウ…
「風が虚しい…。」
夏樹はまだ現状が理解できないでいた。
「ここは一体…、どこなんだ…。」
少なくとも、今までで見たこともない生き物に遭遇したことは事実である。
「あ!そうだ!俺の能力は!」
夏樹は消えた能力、いや、何らかの圧力で消された能力は無事なのか。それが不安だった。
「はぁあああ!!」
夏樹は今まで使えてきた能力を発動させてみた。
「ふぅ、何とかこれだけは無事だったか。」
どうやら、身体能力向上の力だけは無事だったようだ。
それが分かり、もうひとつ、所持品を確かめてみることにした。ポケットの中には腕時計、小銭が少し、そして何故か服はパジャマではなくヒーロー活動のときに来ていたフード付の茶色い皮のローブと黒いチノパンだけだった。
「とりあえず、冷静になろう。」
夏樹は考えた。
「よし!町を探そう。」
町を探すという結論に至ったのはいいが、この辺一帯は見たこともない美しい広大な草原が広がっているだけだった。
「まぁ、考えるよりもまず行動しないと始まんねぇな。とりあえず歩くか。」
歩き始めて20キロは来ただろうか?
夏樹は意識の朦朧としているなか、必死に目を凝らした。
すると、ようやく町らしきものを発見することができた。
「おぉ!町だ!あそこでここがどういうところか聞いてみるか。」
再び歩み始めたその時だった。
「だ、誰か!助けて!!」
町外れにある、大木の方から聞こえてくる。
夏樹はその大木に近づいていった。
「にしても、バカでっけぇ木だなぁー!」
関心していたのも束の間―。
「いいから早くこっちに来い!魔女は高値で取引されんだよ!フヒヒッ!」
「やめて!離しなさい!!離さないなら…!」
今まさに、フードを深く被った少女?が襲われている。
「おい!お前ら!か弱い女の子相手になにやって…。」
ドカァァアアン!!
「うぐぁああ!!」
謎の男達が吹き飛ばされていく。
夏樹はとっさに身体能力向上の力を使い、爆風から免れた。
「ふぅ、全くこれだから悪魔風情が。」
少女は深く被っていたフードをとった。
少女は綺麗な水色の髪で、とても透き通ったブルーの目をしていた。顔立ちは日本人に近い。
「超美人だなー!」
夏樹は岩影から顔を覗かせて、少女を見ていた。
「!!そこにいるのは何者ですか!名乗りなさい!」
少女はこちらを向いて叫んでいる。
「出てこないならさっきのをもう一発食らわせるわよ!」
「わ、わ!わかったから!ほら出てくるから!」
夏樹は岩影からそっと少女の前に姿を現した。
「あなた、『堕竜の牙』の仲間なの?どうして私の魔法を食らって無傷でいられるの!」
「いや!俺はそいつらの仲間じゃなくて、助けを呼ぶ声がしたから駆けつけたんだ!」
夏樹が弁解をする。
「でも、あなた…だったらどうしてあれを食らって生きていられるの?」
「あぁー、それなら俺の能力おかげさ。」
「能力?」
夏樹は少女に自分の能力について説明した。
「嘘つかないで。そんな魔法見たことも聞いたこともないわ!」
「魔法じゃなくて、俺の生まれもっての才能なんだ。もともと備わってる手足とおんなじなんだよ。」
少女は驚いていた。
「あれほどの魔力を封じたのが才能?ですって?信じられない…。」
「とりあえず、俺、今ここがどういうところか分かってなくて困ってるんだ。ここについて教えてくれないか?」
「確かに嘘をついているようにはみえないわね。分かった。信じるわ。」
少女は少し首をかしげたが、一応信じてくれたようだ。
「まぁ、とりあえず自己紹介だ俺の名前は火色夏樹!職業はヒーローをやっている。金はない!」
「私の名前はヴィッセル ハインツ リリー。名を呼ぶときはリリーでいいわ。」
「おう!よろしくな!!」
「とりあえず、町の飲み屋までいきましょ。話はそれからよ。」
二人は町の飲み屋へと向かった。
飲み屋の前についた二人だが、夏樹の頭の中には色々な疑問がまだまだ残っている。果たしてこの世界は一体何なのか―。
今回で謎の魔女、リリーと出会った夏樹ですが、飲み屋でのお話はまた今度となります。どのような展開が今後待っているのか、是非3話目にご期待ください!