第五話
二本目
城の中は大理石を基準とした造りで綺麗に床やら壁が磨かれていた。
廊下には壺や花束などが飾られていて、壁にはさっきの国王や王女、多分だけど王子のような人の肖像画が飾られていた。
ちなみに、今は国王、(もうグラノでいいか)とは別れてメイドに客室に案内されている最中で、一番豪華な部屋に泊めてくれるって言ってたな。別に寝れるならどんな部屋でもいいって言ったんだけどそんなこと恐れ多くてできないとかなんとか。
「ねえ、この城って図書館とか無いの?」
「ありますがなぜですか?」
「いや、ただ人間の歴史とか文字とかを教えてもらいたくてね」
「人間の?あなた様も人間ではありませんか」
「グラノから聞いてないのか?」
グラノの名前を出した途端、メイドの瞳が鋭く光り、一瞬しか見えないほどの素早さでスカートの中からナイフを逆手に取り出して僕の首に突きつけてきた。この人ホントにメイドなのか?それともこの世界ではこれが普通のメイドなのか?
普通の人間なら怯えて体が縮こまってしまうだろうが僕の体はもともと固い鱗で覆われているため傷はつかない。人間の姿になっても力や防御力、魔力量、体力等は変わっていないから怯える必要もないと言うわけだ。
「国王様を愚弄するのか?」
「別に、僕は人間じゃあないから人間の国王に敬語を使う必要が無いから名前で呼んだんだけど?」
「先ほどもそのようなことを言っていたな、では貴様は一体なんなのだ?国王をだまし、国を乗っ取るつもりか?」
「そんなことをして僕に何の利益があるんだい?僕はただ強い存在と闘ったり世界のことを知りたいだけだからね、乗っ取る暇があったらより多くの情報を得たほうが僕の目的が達成されるのが速くなる。つまりは時間の無駄」
「そんな言葉が信じられるとでも?」
「信じなくてもいいさ、ただ僕がこの国を乗っ取るとしたら徹底的に恐怖で染めて支配するよ」
「方法は?」
「圧倒的なまでの力」
「そんな力がお前にあるとは思えないが」
「だから言ってるでしょ、僕は人間じゃない」
「ならば姿を見せろ」
って言われてもなぁ……狭い廊下――狭いと言っても幅は3メートルほどもあるが、高さだけならば7メートルではあるが全長だと頭から尻尾までは20メートルほどもあるので横幅も其れなりの大きさがあるので僕からしたら狭いのだ――だと破壊してしまいそうなので大きさと形は変えず、体の表面を鱗で顔以外の部分を鱗で覆わせた状態になった。
「な、なんなんだ、お前は!?」
「僕はただの龍種だよ」
そのまま数秒見つめ合っているとメイドはスカートの中にナイフをしまって、
「す、少しでも変な気を起こしたら即刻その首を落としますからね」
少し怯えながらも威嚇してくるメイド。そんな怯えた表情が少し可愛いと思ってしまった僕はサディストなのだろうか。そうでないとは思いたいけど……
「できるものならやってみてよ。さ、はやく図書館か部屋に案内してくれない?」
「くっ、好き勝手行動させるわけにはいかないので部屋に案内します」
「あらそう、仕方ないね。ならグラノにでも許可をもらおうか」
悔しそうな顔を一瞬浮かべた後、すぐに振り返ってスタスタと歩き出すメイドの背中にそんな言葉を投げかけてみたら怒りのオーラみたいなのを発していたような気がしたけど別に怖くもなんともないから放っておくか、それにいじると面白いし。あとでグラノにこのメイドの名前でも聞いておこう。
部屋に着いたのはあんなふざけた会話をしてから十分ほど経った後だった。
部屋の扉は赤を基準としてところどころに銀色で書かれた薔薇のような花、そして金で縁取りがされていた。日本だったら金と資源の無駄使いで批判されまくるだろうな。
中に入るとさらに豪華で、ダブルベッドの二倍ほどの大きさのある天蓋付きのベッドやふわふわなソファに大理石でできた横長のテーブル、その上にはクリスタルでできたグラスがおいてあった。
前世だったらこんな部屋見る機会なんて一生無かっただろうなぁ……。
「それでは食事の時間になりましたらお呼びしますので外にでないでください。出たら殺します」
最後に物騒なことを言って部屋から出ていくメイド。
出るなと言われたら出たくなるのが人間だよね、って言っても僕は龍種だけど。
人間のままで外に出るのは多分無理だと思うから形を変えないとな、窓は開くみたいだから体を小さくすれば外に出られるしそれほど大きくもないから目立たないだろうし、何かあったらもとに戻ればいいかな。その場合はこの国にいられなくなるだろうけど。
そういうことで僕は体を孵化した時の大きさに縮めて窓の外に出た。
城の外壁になぞって飛んでいるとこの城の大まかな形が理解できた、どうやらこの城は正四角形の形をしていて高さは僕の全長よりも少し大きいくらいだった。城の中央には中庭のようなものがあって、そこも正四角形の形で、そこには天井が無く、直接太陽の光が射し込む造りになっていた。
中庭か、何かあったりしないかな。
そう思って中庭に降り立ってみると地面は芝生で覆われていてふかふかだった。花壇には赤や青、黄の色の花が咲いていて、その反対側には一本の木が生えていて、木陰には花壇に向かって座れるようにベンチが置いてあった。
へー、居心地いい場所だな~。あの部屋よりもここにいさせてもらった方が嬉しいんだけど許してくれないだろうな。
そんなことを考えていると背後に気配を感じて振り替えると同時に浮遊感に襲われた。
えっ!?いきなりなに!?て言うか降ろしてよ!
僕はカレンに匹敵するほどの可愛さを持った少女だった。歳はカレンよりもしたかな?背も小さいし。
その少女は僕を抱き直し、目と目を合わせるように持ち上げた。なんかじーっと見てくるから僕もじーっと見つめ返したらいきなり無表情から笑顔になり、ぎゅーっと抱き締めてきた。痛くは無いんだけど少し苦しいかも……。て言うかこの子は痛くないんだろうか、僕の体って所々に棘があるんだけど?
少女はそのまま僕を抱き締めながらベンチに座って結構な時間頬をスリスリしていた、だから痛くないの?
日が傾いてきた頃に中庭に一人のメイドが現れて食事の御時間です、と知らせに来たので城のなかに戻っていった。僕を抱き締めながら……。
いい加減離してください(涙)。
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