第十三話
サブタイトルを無くして話数を書くことにしました。
奴隷館をあとにした僕らはまずは宿に戻ることにした。
理由はこれからのことを考えるのと自己紹介をするため。
「ご主人様、私を買うときにお金がないと言ってましたが大丈夫なのですか?」
「うん、まあ、はっきり言うと大丈夫ではないけどね。まあ、なんとかなるよ」
今の所持金はミラを買ったことで更になくなり、十一万二千五百ゲンになってしまった。この中からミラの装備などを買うから実際はさらに少なくなる。
「それとさ、ご主人様って呼ぶの止めてくれない? リンネでいいよ」
「では、リンネ様で」
「……まあいいや、着いたよ。ここが僕の泊まっている宿だよ」
なんだかんだで宿に着いた。
「いらっしゃいって、なんだあんたか。後ろの嬢ちゃんは……奴隷か」
「うん、奴隷って一緒に泊まるのに追加料金いる?」
「部屋代は要らねえが飯代は別だな」
「ならお願いします」
「あいよ、四日分で六十ゲンだ」
代金を支払って部屋に移動する。途中で一人の冒険者とすれ違ったら凄くうらやましそうな顔をしてた。
部屋に入り、座ってと言うとミラは椅子やベッドではなく床に座り始めた。
「いやいや、床じゃなくてさ、椅子かベッドに座ってほしいんだけど」
「奴隷にそのような扱いは無用ですよ」
「無用じゃなくて、僕が嫌なんだけど」
「ですが……」
「じゃあ、僕からの命令。
そんな遜った態度じゃなくもっと自然に、奴隷とか関係なしに友達みたいな感じで接してね」
「それでいいのでしょうか……」
「いいの、わかった? わかったらベッドに座ってね」
「では……私の名前はミラ・アルデローナ、よろしくね、リンネ様?」
笑顔で尋ねるように話しかけてくるミラに思わず見とれてしまった。
仕方ないよね? こんなに可愛いんだから。
「う、うん、よろしく……じゃあ早速だけどこれからのミラの立ち位置を決めるんだけど、ミラはどうしたい?」
「えーっと、リンネ様とずっと一緒にいたいかな。もっと言えばお嫁さんにしてもらいたいな」
「……へ?」
もしかして今、告白された?
「それってどういう意味?」
「えーっとね、私は銀の一族っていう狐の獣人で、一族の掟に自分を打ち負かしたものを伴侶とするっていうのがあるの。つまりは負けたら嫁になるってこと。で、今日私はリンネ様に負けたからあなたのお嫁さんになりたいってわけ」
「ミラはそれでいいの? 一族の掟とかで自分の人生が決まるなんて」
「うん、私自身もその掟は気に入ってるし、それを抜きにしても私はリンネ様に惚れてる。だから私はどこまででもあなたについて行きます!」
鎖骨辺りで両手を握って気合い? を入れていた。
「そ、そう……なら、これからよろしくね、ミラ」
受け入れてくれたと感じたのか、パッと花開くような笑顔になって、
「うん! よろしくね、リンネ様!」
「なら、今から僕らは夫婦なわけだし、様付はやめない?」
「うん、まあ、リンネがそういうなら」
「決まりだね、でも、僕は冒険者だから危険な場所に行くと思うけどそれでもいいの?」
「大丈夫、だって奴隷になる前は私も冒険者だったから」
なるほど。通りで強いわけだ。でもあれだけの強さだったら結構な高ランク冒険者だったんだろうけどどうして奴隷になんか……。
「あれだけ強いならランクも高かったんでしょ? なのになんで奴隷になったの?」
「いやー、護衛のクエストに失敗しちゃって莫大な借金を抱えちゃって、それで奴隷になっちゃった」
「ふーん、で、ランクは?」
「Bランクでしたよ。リンネのランクはどのくらいなの? A? それともS?」
「Gランクだよ」
Gと聞いてミラが口を大きく開けて固まってしまった。美人が台無しだな。
「なんで!? あの強さでなんでGなの!?」
「まあまあ、落ち着いて。
それについてはまた今度話すからさ」
「むー、気になるなー」
頬を膨らませるミラ。
ああ、可愛いなぁ、もう。
「ははは、じゃあ、ミラは冒険者に復帰するってことでいいの?」
「うん、でも復帰するにも再発行と同じ額の金額が必要だから今のリンネには出せないんじゃない?」
確かにその通りだ。だからミラには少し待ってもらうしかないかな。
「うん、だからお金が溜まるまで少し待っていてね」
「うん、わかった」
「で、次に服なんだけど、今のままじゃいくらなんでも酷すぎるよね」
ミラの格好はボロボロの布で出来た貫頭衣のような服だ。奴隷だからなんだろうけどこれじゃあ恥ずかしくて碌に外にも出れない。
「この後、服を買って、武器と防具を買ってからギルドに行こうと思うんだけどいいかな?」
「いいんじゃない、でもギルドには何をしに?」
「クエストの報酬をもらいに行こうと思って」
「まだ途中だったの?」
「報酬をもらいに行く途中で奴隷のことを知ったからね」
「え? もしかしてその時まで奴隷を知らなかったの?」
「うん」
「え、うそでしょ? だって奴隷なんてどの国にだっているのに……」
「ははは、そのことに関してもあとで教えるから。今はギルドに行くよ」
宿を出て、まずは服屋に向かうことにした。服屋は武具屋の斜め向かいにあった。
「いらっしゃーい」
中にいたのは筋肉が発達していて、女物の服を着ている男性と数人の女性だった。
……この世界にもオカマっているんだなー……。
「この人に似合いそうな服を見繕ってください」
「何着くらい買うの?」
「うーん、とりあえず三着くらいで」
「わかったわ、少し待ってて。さ、あなたはこっちよ」
女口調で話すオカマに連れられていくミラの顔には少しだけ恐怖の色があった。
この世界の服屋と言うのは、総じて古着を扱う店を指す言葉で、新しく服を作るのは仕立て屋と言う名前らしい。待ってる間に他の女性店員に聞いたところ、変な目で見られながらも説明してくれた。
すいませんね、常識無くて。
「出来たわよー」
再度、オカマの声が聞こえてきた。
声のする方を見てみると、そこには肉の塊と女神がいた。
ミラの服装は、白雪のような髪と真逆の黒を基準としたワンピースだった。それはまるで美術品のような美しさを醸しだしているように見えた。って言っても美術品なんてあんまり見たことは無いんだけどさ、まあ、あれだよ。物のたとえとしてだね。
「綺麗になったね、ミラ」
「そんな、恥ずかしい……」
どこかで聞いたことのあるような会話の後、他の服も見せてもらった。なんでもさっきのやつは僕とどこかに出かける用に買ったもので、残り二つは動きやすいように伸縮性のある素材で作られたズボンとシャツだった。色は白でした。
「これ買います」
「はいはい、全部で一万五百四十ゲンよ」
オカマに銀貨一枚と銅貨五枚、鉄貨四十枚を渡して店を出た。最後に来て出たのはズボンとシャツにした。どうせこの後は、ギルドに行くのだから問題は無いだろう。テンプレとしては美少女とかを連れて行ったら絡まれる、なんてことがあるかもしれないから万が一に備えてのことでこの服になった。
ギルドの中は相変わらず騒がしかったけど何人かは僕の姿をみて目を逸らしていた。
「あ、お帰りなさい……ってリンネ様? 後ろにいる人はまさか……」
「やっほー、久しぶりね。サーシャ」
「やっぱり、久しぶりですね! でもどうしてここに? 奴隷になったはずでは?」
「この人に買われたのよ、ついでに言うと今は旦那だけどね」
「そ、そうなんですか……」
少し引き攣ったように笑うサーシャちゃん。
何故?
「それで、報酬をもらえる?」
「ええ、それは良いですけど、ミラさんのカードを再発行しなくてもいいのですか?」
「生憎、今はお金が無くてね」
「そういう事だから、私が冒険者に復帰するのはもう少し後になるわ。その時はよろしくね」
「はい、わかりました。それで、報酬の件ですが、剣の配達作業の報酬が五十ゲン、倉庫の荷物運びの報酬が六十ゲンの合わせて百十ゲンですね」
報酬を受け取る以外に用は無かったのでギルドを出ようとしたところ、ガラの悪い冒険者に絡まれた………………なんてことは無く、僕たちはギルドを後にした。
感想やご指摘お待ちしています。
出来ればご指摘の方は優しくお願いします。
僕の心が折れる可能性が有りますので……。