初めてのクエスト
修学旅行で遅くなりました。
「さて、これからどうしようかな」
あの三人を殺した後、空の業亭に戻って夕食を取り、自室のベッドで装備とかを外して下着で横になり明日からのことを考えていた。まずはクエストを受けて金を貯める、これはもうすでに決定事項となっている。問題はその先にある。金を貯めたら何をするか、家を買うのもいいだろうけど買ってしまったらその次は?当初の目的でもあった強者と闘うために世界中を旅するのもいいかもしれない。それでもそれを成し遂げた後は?なにも無くなってしまう。僕の目的は全て一つで止まってしまう、達成したらそこで僕が進むべき道は途切れてしまう。道は一つではないから他の道に乗り換えるのでもいいかもしれない。でもいずれは全ての道が無くなってしまうかもしれない。
「ま、考えても仕方ないか。とりあえずは金を貯めて生活の安定かな」
城のベッドと同じとは思えないほど固い宿のベッドで寝返りを打ちながらも浅い眠りへと落ちて行った。
「んぐ……ふわぁ……」
もう朝か……意外と早く朝になったな、て言うか僕どんな格好で寝てたんだよ……。
朝起きたら僕は体が横になり、ベッドから頭を放り出していた。前世ではこんなに寝相悪くなかったんだけどなあ。
ってそんなことよりも朝ごはんっと。
黒く染められたズボンをはき、肌着の上から鎖帷子を着て、全体的に白で彩られ、袖の方が黒い炎の模様で書かれた羽織を羽織ってから腰に小豆長光を帯刀してから一階に降りて食堂に入った。食堂にはもうすでに他の宿泊客が何人か食事をとっていた。
「おじさん。ご飯ちょうだい~」
「おー、少し待ってろや」
適当な席について少し待つ。
十分もしないうちに食事が運ばれてきた。
「パンと干し肉、それにココリとサルナを炒めた物だ」
ココリはキャベツのようなものでサルナは人参のようなものだ、味はその通りの野菜だった。
それ等を勢いよく胃に流し込んで宿を出た。
ギルドに向かう途中でどこかの裏路地でDランクの冒険者が惨殺されたと言う話が持ち上がっていた。昨日の今日でもうすでにあれが広まっているのか、次からは隠蔽工作をしないとダメだね。
ま、それは置いといてギルドに行かないと、クエストって何があるんだろう、楽しみだな。
「掃除?」
「はい、掃除です」
Gランクのはじめてのクエストは掃除だった。他のクエストを見ても引越しの手伝いや荷物運びとかそんな雑用系ばっかりだった。しかも報酬は鉄貨二十枚これでは宿屋にすら泊まれない。食事一食分あるかないかと言った程度の報酬しかない。ルーナが言っていたことはこのことだったんだな。
「えっと、もっと報酬が高いのってあります?」
「Gランクですとこれが一番高いですね」
「マジですか」
「マジです」
笑顔で対応してくるサーシャさん、今はその笑顔が残酷に見えます……。
「え、Fランクの仕事はどんなのがあるんですか?」
「Fランクですか…今は無いですね~」
「そ、そうですか。なら仕方ないですね、ハハッ……」
間が悪いにもほどがあるでしょう、なんでFランクのクエストが一つもないんだよおかしいでしょうが。そもそもクエストが途切れるなんてあり得るのかよ、常時クエストとかあってもおかしくないでしょうが!
「ならそれじゃなくて荷物運びとかにしてもらえますか、そのほうが早く仕事が終わるでしょうから」
「でしたらあそこに何件か貼ってあるのでその中から選んでください」
指で指されたほうをみるとクエストの依頼用紙が所狭しと張ってある掲示板だった。一応ランク分けされているようで一ヶ所だけ空白になっていた。
その中からGランクのクエストを探して荷物運びのクエストを二つ選んだ。
「この二つでお願いします」
一つが街の鍛冶屋からこの間行った武具屋に剣を配達するものと、ランデール商会という店の倉庫から物を運ぶクエストだ。
「わかりました、場所はわかりますか?」
「武具屋はわかるんですが鍛冶屋がわからなくって、あとランデール商会とやらも」
「ではこの地図を持っていってください、これなら大抵のお店の場所がわかりますから」
「ありがとうございます、じゃあ行ってきます」
ギルドを後にした僕は鍛冶屋に行って槍を数本受け取って昨日行った武具屋に持っていった。おじさんにはびっくりされたけど気にせず行こう。
次はランデール商会だ。クエストを受けてきましたって言ったらそんな貧相な体で物なんか運べるか、って怒鳴られたからその人の胸ぐら掴んで振り回したら快く倉庫に案内してくれた。股の所から異臭が漂っていたけど、ドウシタンダロウネ(棒)。
そんなこんなでクエストを終わらせた僕はギルドに戻って他のクエストを受けることにした。
次回の更新は11月20日です。
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