冒険者になりまして
今回と前回は一週間空いてしまいましたが今度からはそうならないよう、頑張ります。
今回で終わると言っておきながら終わりませんでした。
僕たち二人は今、武具屋へと向かっていた。
場所は宿からそう離れてはいないらしく、すぐに着くとのことだった 。
「宿って結構すると思ったけど安かったね。この調子なら金に困ることは無いんじゃない?」
「そうでもないです。武具と言うものは自分の命を預ける物ですからなるべく質の良いものを買う事が多いです。普通の武器だけでも十万ゲンくらいの値が着きます。防具も合わせると三十万ゲンくらいにはなります」
「は?何でそんなに高いのさ、そんなにするんだったら誰も買えないじゃないか」
「これは普通の物ですから。多少悪ければ一万ゲンほどのロングソードやらがありますから、低ランクの討伐クエストなどであればこれくらいで事足ります。なので、最初はそう言うものを買うのです」
「それだったら尚更、こんな大金受けとるのはおかしいと思うんだけど……」
そう言いながら僕は、腰に着けている銀貨やら銅貨、鉄貨が入っている小さい袋を手でポンポンと上に投げていた。
因みにこの袋には銀貨が九十九と銅貨が7、鉄貨が五枚入っている。見た感じではそれほど多くは入っているようには見えないほどに小さい袋なのだが、これは魔法具で硬貨なら幾らでも入ると言う類いのもので、金貨を、もらう時に一緒にルーナから貰ったものだ。
中身を出せるのは持ち主だけで、他の人達は許可がなければ中身を取り出せない仕組みになっている。ただ例外もある、持ち主が死んだ場合に限って拾ったものが中身の所有権を得ると言うものだ。
「落としたりすると面倒なのでやめてください」
突き刺すような視線で睨んで来たので素直に従うことにしよう。
そのあとは特に会話をすることもなく武具屋についた。
店の外見はそこら辺の家屋とかわりなく、剣と盾の模様が書かれた看板があるだけだった。
扉を潜ると正面と左側の壁にさまざまな武器がならんでいて、入り口のすぐ近くには樽が置いてあってボロボロな剣やら槍やらが無造作に突っ込んであった。
防具はマネキンの様なものに着せてあってこちらは右側の壁側に寄せてあった。
「いらっしゃい、見ない顔だけど今日は何のご用で?」
正面の壁の少し手前にカウンターがあり、そこには肘をついて面倒そうに対応する禿頭のガチムチなおっさんがいた。
「今日から冒険者になるので武器と防具を買おうかと」
「へぇ~、まあ頑張んなよ。武器と防具、それぞれの希望と予算は?」
希望か、色々と使っては見たいんだけど、やっぱり日本刀かな、元日本人だし昔から侍とかに憧れていたからな。防具は動きを邪魔しない感じ、と言うか布とかでも問題はないんだけれど戦う職業だから装備してないと怪しまれるよね。
予算は今後の生活を考えると銀貨八十枚くらいかな。
そう伝えると少し待ってろと、店の奥に引っ込んでしまった。あれ?日本刀で通じるの?もしかしてこの世界には僕以外の転生者もいたのかも知れないな。
「ほら、これでいいか?」
お、戻ってきた。店主らしき人が持ってきたのは紛れもない日本刀で、防具の方はゆったりとした羽織の様な上着に鎖帷子、それと布でできたズボンだった。
「日本刀なんてつ使うやつ殆どいないから今では何処の鍛冶職人も作らねえ、だから在庫もこれしかなかった。だが質はいいから心配はするな。羽織とズボンは魔法耐性付加のついたやつとある程度の衝撃なら耐えられる鎖帷子だ。素材はマジックスパイダーって言う魔法を使う魔物の糸から作ってある。鎖帷子の方は普通の鋼製だから低ランクでしか役に立たないだろう、高ランクでもあるだけましと言った程度か」
店主の説明を聞きながら僕は日本刀の鞘から刀身を出したり入れたりしていた。
「この刀の名前は?」
「あー、確かアズキなんたらって名前だったと思うが……なんたっけな」
「もしかして、小豆長光?」
「おお、そうだ。確かそんな名前だ」
はははっ、まさかそんな名刀だなんてね、さっきも言った通り僕は侍に憧れていたから色々と調べた結果知ってるけど、確か上杉謙信が川中島の戦いで武田信玄の軍配を切りつけたとされる名刀だったはず、一度見てみたいと思っていたけどこんなところで見るなんてね。
鞘の色は白で、所々に金の刺繍が、あるけど本物とおなじなのかな?異世界だから所々違う場所があるかもしれないけど元々現存していなかった刀だからあってるかどうかもわからないしな。
「買うのか?全部あわせて七十八万と五千ゲンだぞ?」
「買います」
即答だった。当たり前じゃないか、こんな名刀があるんだから買わない方がどうかしてる。
袋から代金を出して早速今買った物を装備していく。羽織はゆったりとしていて激しい運動でも動きに障害は出ないと思う。腰には刀をさして気分は侍だ。これに武士の甲冑何かがあれば完全にコスプレだよね。
現在の所持金は二十一万二千五百ゲンだ。これなら当分の生活には困らないだろう。浮わついた気分で店を出るとルーナがいきなりため息をついた。
しゃべっていなかっただけで彼女も一緒になかにいたのだが金の使い方に呆れてしまったのだろうか。
「どうしたの?」
「お前はこれからどこに行くか覚えてるのか?」
あ、口調が戻った。
「覚えてるよ、雑貨屋とギルドでしょ?」
「雑貨屋で何を買うかは?」
「夜営道具だっけ?」
「そうだ、お前はその道具がいくらするのかわかってその武器等を買ったのだろうな?」
…………あ、忘れてた。多分この会話からするとかなりギリギリな、金額なんだろうけどいくらなんだろう。
「…………十五万くらい?」
「二十万だ」
…………oh……なんてこった。一万と少ししか残らないじゃないか。
そんな僕の表情を見てため息をついたルーナは仕方ないと言ったように、
「お前は龍種だから襲われても怪我をしないだろうから問題はないだろう。それに、気配でわかるだろうしな」
と、耳に口を近づけて、そっと言ってきた。
息が耳にかかってくすぐったかったけどその通りだからまあ、いいかな。
予定を変更して僕らは雑貨屋にはいかず、ギルドへと向かうことにした。
ギルドは大きく、他の店や民家のおよそ三倍くらいの大きさだった。それに加えて地下もあり、そこは訓練所となっているらしい。
「それでは私は戻ります。あまり言いたくはありませんがお元気で」
「あれ?一緒に行ってくれないの?」
「私が一緒だと女連れだと騒がれますよ?あなたは目立つのが嫌いなのでは?」
「まあ、そうだけど」
「では、そう言うことで」
そう言ってルーナは城に帰っていってしまった。仕方ない、一人で行くか。
なかに入ると多くの人がいて、テーブルを数人で囲んで酒を飲みながら騒いでいる人、掲示板を見て張ってある紙を見ている人、受付で受付嬢を口説こうとしている人等様々だ。
中が騒がしすぎて僕の存在に気がついていない人が殆どだけど中には射殺すような視線をぶつけてすぐに興味を失ったように視線を逸らしてくる人もいた。僕の存在に気付いたのかな?でも、すぐに別の方向を見たってことは気づいてないだろうけど一応用心しておくか。
ま、そんなことよりも登録登録っと。
「すいません、冒険者登録したいのですがいいですか?」
「あ、はい。いいですよ、ではこちらの水晶に手を乗せていただけますか?」
僕を担当したのは青い髪の二十歳を超えていないような感じの人だった。
受付のすぐ脇にある少し青みがかった水晶を目の前に持ってきた。
「いいですけど……これは?」
「これはその人のステータスを映し出してその情報をギルドカードに転写する魔法具です」
ステータス?ゲームとかでよくある個人の能力とかのやつかな?でもそれが知られるとまずいことになるよね。
「ステータスってどんなものが表示されるんですか?」
「名前と年齢、種族と現在の冒険者ランクですね」
うん、やばいな。種族って僕人間じゃないのにどうしよう………脅すか?
いやダメだ。そんなことしたら目立ってしまってしょうがない、ここは普通に説得するか黙っててもらうしかないかな。最悪、魔法で洗脳することも出来るし。
実は僕の使う暗黒魔法は生物の精神に干渉する魔法や自分を認識させずらくさせる魔法なんかが使える。もちろん攻撃用の魔法もある。ここでは説明を省くけど魔法には有効な属性と不利な属性があるとだけ覚えておいてほしい。
「出来れば僕の種族を見ても黙ってていただけますか?お願いします」
小声で受付嬢にだけ聞こえるようにそういうと訝しげに僕を見てきた。まあ、当然だよね。
「はあ、それはいいですがギルドマスターには報告しなければなりませんがよろしいですか?」
「その人は信頼できますか?」
「出来ますよ、ギルドマスターはその国の王様が決めるものですから」
へえ、レヴィさんが決めてるのか、なら安心かな。まあ、表向きはグラノが決めたってことになってるんだろうけど。
「ならいいですよ、それじゃあ、絶対に大声を上げたりしないでくださいね」
そう言って僕は水晶に手を乗せた。
―――――
名前・リンネ
年齢・15
種族・龍種・ダークネスドラゴン(人化状態)
ランク・G
討伐履歴
無し
―――――
「うぇぇっ!?むぐぅぅぅうう!!」
ちょっ!?やめてよ!なんなのこの人、あれだけ静かにって言ったのに!!周りの人も話すの止めてこっち見ちゃってるじゃないか!
「ちょっと、何大声出してくれちゃってんですか!静かにしてくださいよ!」
今の僕は受付嬢の口に手を当てて喋らせないようにしている。うん、どこから見ても襲い掛かってるようにしか見えないな。
「おい、てめえサーシャちゃんに何してやがる」
ほら来たよ、襲ってると勘違いした人が。
そこには禿頭で背中に戦斧を背負ったやたらと筋肉が発達した大男がそこにいた。
「いや、ただ僕は秘密を…」
「ごちゃごちゃうるせえんだよ、いいからその手を離せ」
「あの、だからね?」
「いいから離せっつってんだろうがよ、新人は大人しく先輩のいう事聞いてりゃあいいんだよ!」
「だから誤解が…」
「ごちゃごちゃうるせぇぇえええ!!」
その男はいきなり背中の戦斧を手に取り僕目がけて振り下ろしてきた。
男の後ろの方では驚きながらも男を止めようと声をかけてるけどそんなので止まるような人じゃないと思うけどなあ。後ろの方でもサーシャちゃんが目を見開いているような感じがする。
はあ、仕方ないか。
戦斧が振り下ろされ、誰もが僕が殺されたと思ったその時、男の咆哮の他に金属がぶつかり合った音がその場に響いた。
微妙なところで終わってしまって申し訳ない。
テンプレって書くの難しいですね。