トワの過去
私とトワさんの間にわずかな沈黙が落ちる。
先に口を開いたのは私だった。
「……トワさん。トワさんって孤児何ですね…。」
言った後に私はすぐに後悔した。
ああ、なに失礼なこと言ってるの!?
お世話になっているのに!!
気を悪くしてしまったでしょうか?
「……それ、リーナから聞いたの?」
「そ、うです。」
やっぱり怒ってますよね?家から出ていけ、とか言われたり……
「……そうだよ。僕は孤児だった。まだ赤ちゃんの頃に森に捨てられて、この家に住んでいたお婆さんに拾われたんだ。」
きっと、そのお婆さんに大事に育てられたんだろうなぁ……。
そう思うと、なんだか自然に微笑んでいた。
「何?ニヤニヤして。」
「あ、いえ、……きっとそのお婆さんに大事に育てられたんだろうなって思ったら、なんか微笑ましくて。」
「……。うん。そのお婆さんには大事に育てられたよ。」
には?
……あ。トワさんは本当の親じゃなくて、血の繋がってない見知らぬお婆さんに育てられたから。
私は自分のことのように寂しい気持ちになった。
何も言えなくなって、俯いてしまう。
「君がそんな顔をする必要はないよ。」
トワさんが私の頬に触れ、顔を上げさせる。
「だって……。」
「俺は今、不幸な人生だとは思ってないよ。」
それでも、トワさんは幸せだとは言わなかった。
それから、奥の部屋のことも。
私はますます分からなかった。
近くなったように見えるけど、何故だか少しずつ遠のいているようにも見えた。