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第七話 

今回は理樹視点です

理樹side


「ねえ、今日一緒に遊ぼうよ」


「はぁ、だからいくら来ても俺の答えは変わんねえぞ」


 勝人が転校してきてからもう一週間。これはもはや何度となく繰り返してきたやり取りだ


「・・・なんでそんなにひとりでいようとするの?」


「・・・なんのことだよ」


 その言葉には今までと違い、不機嫌そうな感じがあった


「だって僕たちだけじゃないよね。勝人がこうして誰かの誘いを断るの」


 そう、勝人はこの一週間誰からの誘いも断り続けていた。最初は皆転校生の勝人に興味を持って近づいて行っていたが勝人がそのすべてを断っていたためすぐに勝人の周りには誰も近寄らなくなっていた


「勝人昔はもっと人と話したり遊んだりしてたじゃないか」


 昔の勝人はいつも元気で人の中心にいる存在だった。いつも新しい遊びを考えてそれを実行する。そんな勝人の周りにはいつでもたくさんの人が集まってきた。そう、恭介のように・・・


「昔、ね・・・」


 そうつぶやくと勝人はうつむきリトルバスターズに入ることを拒んだ時と同じつらそうな表情をしながら言った


「十年もたてば人は変わるさ、誰だってな。理樹、それはお前もだ」


「え?」


「お前はさ、変わったよ。すげぇ、強くなった。昔とは比べ物にならないほど」


 なぜ勝人がいきなりそんなことを言い出したのかわからず僕は混乱する


「でも、俺は弱くなった。ただ、それだけさ・・・」


「か、勝人」


 勝人は歩きだし、それ以降何も言わなくなった。そんな勝人を僕はただ見送ることしかできなかった。勝人の言葉になんとなく違和感を感じながら




 放課後。あれ以降勝人は一度も口を開かない。けれどその原因である僕はそれとは全く違うことを考えていた


『十年もたてば人は変わるさ、誰だってな』


 今朝勝人が言っていたこの言葉。これがどうしても頭から離れなかった。今朝勝人にこの言葉を言われてから僕の中でずっと何か引っかかっていた。十年もたてば確かに人は変わっていく。でも今の勝人はどうなんだろう。僕の知る昔の勝人と今の勝人は確かに違っていたでもそれを変化という言葉で表すのにはなんだか違和感を感じた。うまく表現できないが昔の勝人と今の勝人はなんだか・・・『違いすぎる』。そう、まるで別の人間を見ているような気すらするほどに今の勝人は昔と違いすぎるのだ。人の根幹をなすような深い部分が本当にそんな簡単に変わってしまうものだろうか?


(違う・・・)


 勝人が転校してきてから抱いていた違和感。最初はなんなのかわからなかったそれが徐々に一つの答えとして浮かんできた。そうだ、勝人は・・・


「よう、まてよ」


 思考の海に沈んでいた僕を聞きなれたその声が現実に引き戻した。声のほうを見ると教室を出て行こうとする勝人に真人が声をかけていた。だが今の勝人ははたから見てもわかるほどに不機嫌そうな表情をしている。そんな状態今僕らが話しかけても火に油を注ぐだけだ


「邪魔だ。どけ」


 予想通り。勝人は不機嫌な顔のまま真人にはっきり邪魔だといった


「あんだとてめぇ!それはあれか!目の前の筋肉が邪魔で通れません。これから帰るところなのでその邪魔な筋肉をどけてもらえますか?とでも言いたいのか!?」


 いつもの真人の言いがかり。勝人が冷静ならうまく収めてくれるだろうけど、今は・・・


「そうだよ、邪魔だ」


 瞬間教室の空気が凍りつく。気が付いた時には勝人と真人は一触即発の様相で睨み合っていた


「てめえ・・・」


「やるか?言っとくが今は機嫌が悪い。手加減はしねぇぞ」


 二人は今にも殴り合いになりそうな空気を放ち始めた。このままではまずいと思った僕は


「ちょ、ちょっと二人ともこんなところで喧嘩しちゃだめだよ!」


「どけ、理樹」


「下がってろ理樹。どうやらこいつは一辺ボコボコにしないとわからないらしい」


 何とか止めようとしたが二人は全く聞かない。二人とも完全に頭に血が上っている。もうだめかと思ったとき静止の声がかかった


「その喧嘩、まった」


 声の主は恭介だった。恭介は目で後は任せろと伝え二人に歩み寄っていった


「売られた喧嘩だ。止めんなよ恭介」


「からんできたのはそっちだ」


「いいから落ちつけ二人とも。いいか、なにも辞めろとはいってない」


「・・・どういうことだ」


「喧嘩は見過ごせないからな。だからルールにのっとった勝負をしよう」


「勝負?」


「そうだ。このままなんの決着もつけずに解散してもお互い納得できないだろう」


「・・・だから、勝負をしようってことか」


「ああ、どうだ?」


 勝人は少し考えてたあと


「・・・いいだろう」


 そう言ってひとまず引いてくれた


「真人もいいな」


「ち、わかったよ」


 二人が引いたのを確認すると恭介はルールの説明を始めた


「まず周りに人間に適当なものを大量に投げ込んでもらう。二人にはそれを武器にたたかってもらう」


「武器?」


「そうだ。二人にはその武器の中から目を瞑って一つ選んでもらう。原則攻撃は手にした武器でしか行ってはならない」


 恭介の説明を二人は黙って聞いている。どうやら二人とももうある程度冷静になってきているようだ


「他には特に細かいルールはないのか?」


「ああ。強いてあげるなら、勝者は敗者に一つ称号を与えることができることぐらいだな。まあ要するにちょっとしたゲームさ」


「・・・ゲームね」


 考え込む勝人。でもその表情はさっきまでとは違っていた


「称号てのは別に何でもいいんだよな」


 その言葉にはわずかだが楽しげな印象を受けた。恐らく恭介も同じように感じたのだろう


「ああ、もちろんだ」


 と、笑いながら言った


「・・・いいだろう。受けて立つ」


 勝人の答えはイエス。僕はその答えを聞いた瞬間に少しだけ安心した。勝人が根本的な部分から変わってしまったんじゃないと確認できたから。そしてそれは同時に僕にある一つの核心を与えた。勝人が転校してきていらずっと感じていた違和感。変わる、という言葉への違和感。そしてその違和感は今朝の勝人との会話、そして今まさに行われているやり取りを経て確信へと変わった。勝人は変わったんじゃない。そう・・・押し殺しているんだ



・・・自分自身を

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