第四話
理樹side
「俺は、リトルバスターズには入らない」
「え?」
その言葉を聞いた時僕は自分の耳を疑った。確かにさっきまでの恭介の勧誘方法はどうかと思ったけどリトルバスターズに入ること自体を勝人が断られるは思っていなかった
「ど、どうして?」
「悪い。とにかくそういうことだから」
そう言うと勝人はそのまま教室を出て行こうとする
「ま、待ってよ勝人!」
引き留めようとした僕の腕を恭介が掴んだ
「そうか。気が変わったらいつでも言ってくれ」
「ああ」
それだけ言うと勝人は教室から出て行った
お昼休み。学食で恭介たちと昼食をとっている。でも僕の頭は別のことでいっぱいで箸は一向に進まなかった
「? どうしたんだ理樹。食べないのか?」
鈴が僕の顔を覗き込むようにして聞いてくる
「あ、うん。食べるよ」
「高宮のことか?」
恭介に的確に言い当てられる。やはりお見通しのようだ
「・・・うん」
あれから勝人は休み時間になるとどこかに行ってしまっているためロクに話すことすらできないでいた
「しょうがないんじゃないのか?」
「え?」
突然恭介がいった言葉に僕はうつむけていた顔を恭介の方に向ける。恭介はいつもと違って真剣な眼で僕をみていた
「高宮とは十年も会ってなかったんだろ?」
「・・・うん」
勝人が引っ越したのは七つのとき。場所も遠かったから遊びに行くこともできなかった。それでも手紙のやり取りはしていたんだけどそれも九つの時ぐらいから徐々に少なくなりいつの間にか勝人からの手紙はぷっつりと途絶えていた
「十年もたてば人の関係は変わる。それがたとえ仲の良かった相手でもな。もと通り、という訳にはいかないだろう」
「うん。分かってるよ、でも・・・」
確かに恭介の言うとおりだ。人は変わる。いくら仲が良かったからと言ってもと通りといかないのもわかってる。でも・・・
「でも、それでもさっきの勝人は何か違う気がしたんだ」
「違う?何がだ?」
「なんだか自分を押し殺しているような、そんな感じがしたんだよ」
「どうしてそう思うんだ」
「だって、あのとき勝人、少しつらそうな顔をしてたから」
そう。あのとき、リトルバスターズに入るのを断ったとき、勝人は隠そうとしていたけどそれでも確かに少しつらそうな顔をしていた
「だから、もし勝人が今何か辛いことを抱えているのなら僕は勝人を助けたい。そう思うから」
「仮にそうだとして、お前の申し出を断ったということはそれはあいつがお前にかかわられることを望んでいないということなんじゃないか?」
「それでもだよ。勝人はいつも僕のことを助けてくれた」
小さかった時気が弱くて友達の少なかった僕の手をひっぱてくれたのはいつだって勝人だった
「だから僕は、たとえ勝人がそれを望んでいなくても、勝人が苦しんでいるなら助けたいんだ。だって勝人は・・・僕の大切な友達だから。それに・・・」
「それに?」
「僕はもう逃げないと誓ったから」
そうだ。僕はあの修学旅行での出来事で誓ったんだ。もうにげないって
「そうか・・・」
恭介は僕の言葉を聞くと少し沈黙し、そして軽く微笑み言った
「理樹がそう決めたのなら俺たちもそれに協力しよう」
「え?で、でも」
「確かに俺たちは高宮のことを知らないし、どういう奴なのかもわからない。だが、たった一つだけ分かっていることがある」
「え?」
「高宮は理樹の大切な友達だってことだ。なら理樹の友達である俺たちがその友達である高宮を助けるのは当然のことだろう」
「恭介・・・」
「よし。それじゃあ・・・」
そして恭介が宣言する。いつものように
「ミッションスタート!」