第一話
理樹side
「あれ誰だろう?」
僕は今教室の窓から校門の方を見ている。そこには一人の見知らぬ人・・・ここからだとよくわからないが恐らく男・・・がいた。うちの学校の制服を着ているようだ
「自宅通いの子かな?」
うちの学校には寮があるが自宅から通っている人もいる。でもそういう人は大体早めに来るのでこんな時間にまだ校門にいるのは少し妙だった。しばらく見ていたら先生がやってきてその人を連れて校舎へと入って行った
「理樹。何見てるんだ?」
不意に後ろから声をかけられた。僕はそっちの方向を向く。そこにはいつものメンツがいた
「おはよう。鈴」
棗鈴。僕の幼馴染で大切な恋人だ
「どうしたんだ?ボーっとして」
宮沢謙吾。彼も僕の幼馴染だ
「ちょっと校門の方を見てたんだ」
「なんだ?なんか面白いもんでもあったのか?」
同じく僕の幼馴染の井ノ原真人。ここにはいないけどもう一人幼馴染がいる。僕らは昔その五人でリトルバスターズというチームを作ったんだけど、最近メンバーが増えて今では十人になっている
「うん。なんか校門に制服を着た見慣れない人がいたんだ。自宅通いの子にしては来るのが遅いし」
「そういえば今日転校生が来るんだってー」
「あっ、小毬さん」
神北小毬さん。リトルバスターズのメンバーの一人だ
「ほう。なら理樹が見たのがその転校生かもしれないな」
「うん。そうだね」
「お前ら席につけ―」
どうやら先生が来たようだ。皆席に戻っていく
「えー、今日は転校生を紹介する」
小毬さんの言ってた通りだ。教室の中で「どんな子だろう」「男の子かな」などといった声が上がる
「それじゃあ入ってこい」
ガラガラっとドアを開けて転校生が入ってくる。これから同じ教室で過ごしていく新しいクラスメートの顔を確認する
「え・・・?」
その顔を見て僕は思わずそうつぶやいた。なぜなら入ってきた転校生は僕がとてもよく知っている人物だったからだなのだ
『これで俺とおまえは親友だ』
遠い日の記憶が頭を駆け巡りそして僕は無意識のうちにその人物の名を口に出していた
「勝人?」
勝人side
担任が転校生について言った直後、教室から様々な声が聞こえてきた。転校生と聞いて好奇心がわいてきたのだろう。入ってこいという声が聞こえたので俺はドアを開けて教室に入った。教室に入ると生徒の声がより一層大きくなった
(憂鬱だ・・・)
こういう好奇の目で見られるのは好きじゃなかった。品定めされているようで正直あまり気分がよくない。そんな騒がしい喧噪のなかでそれらとは全く違った声が聞こえてくる
「勝人?」
まだ名乗っていないはずの名を呼ばれて俺は思わず声のした方に顔を向けた。そこには気弱そうな、でもどこか見覚えのある顔があった。でも誰なのか思い出せない
「何だ?知ってるのか理樹?」
大柄な男がそいつに声をかける。ん?理樹?その名を聞いて俺はようやく思い出した
「お前、直枝・・・理樹か?」
「そうだよ!やっぱり勝人だったんだ!」
そう言って理樹は嬉しそうな顔をする。俺はというとその状況についていけず頭が混乱していた。当然だ。まさかこんな所で幼馴染に再会するなんて思っても見なかったのだ
「なんだ直枝と知り合いか?」
教師の言葉で俺はようやく現実に引き戻された
「はい、その・・・幼馴染です」
幼馴染と聞いて教室中から驚きの声が上がる
「お前ら静かにしろ。高宮、自己紹介をしろ」
まだこの状況についていけていなかった俺だが教師に促されとりあえず先に自己紹介を済ませることにした
「高宮勝人です。よろしくお願いします」
「席は直枝の後ろの席がちょうど空いてるからそこに座りなさい」
「はい」
言われて俺は自分の席へと歩いていく。席に着くと理樹が声をかけてきた
「びっくりしたよ。まさか転校生が勝人だったなんて」
「俺もお前がここにいることにびっくりしてるよ」
「ほら、お前らHRを始めるから静かにしろ」
「あっ、すみません。それじゃ、HRが終わったら残っといて、紹介したい人がいっぱいいるんだ」
「ああ・・・わかったよ」
そう答えると理樹は前を向き、教師はHRを始めた