リセット・メモリー
僕は、家のベットで寝ていた。体が少しぎこちなくなった気がした。しかし、心は軽くなった気もした。何か大切なものを失ったような……。
いつもどおりの支度をすると、勢いよく学校へ向かった。
「おはよう。」
あ、Hさんだ。
「おはよう!」
今日は、元気なんだねとHさん。
そうだね、と言う僕。
クラスに入ると、みんなに’おはよう’と言った。クラス内のみんなが顔を見合わせていた。僕は、昨日とは変わった。と言うより、元の僕に戻ったと言うべきか。昨日の男子も、最初は戸惑っていたがすぐに仲良くなった。うれしさのあまり、トイレに行って鏡を見た。顔を見た。昨日の僕とは、似ても似つかなぬ表情をした僕がいた。
――――ただ、瞳には何も映っていなかった。
授業中には、黒板を見るほうが多くなった。質問もするし、ノートもとる。ただ、その量はおしゃべりと比べるとアリとりんご、つまりごく少ないと言うことだ。みんなと遊んだり、部活を今からでもと思い見学もしていた。今日と昨日、こんなに変わったのに何も気にしなかった。こんなにテンションアゲアゲだと帰りの道もあっという間だ。ポケットからは、イヤホンが垂れていた。
次の日も、次の日もこんな調子でいた。しかし、人生山あり谷あり。悪いことも訪れる。これはちょっとしたことだが、下校途中に男子生徒3人と帰る約束をしていた。もちろん約束の場所に来た。校門で待ったが、いっこうに来ない。30分が過ぎた。これ以上過ぎると、電車が……。仕方なく、帰った。
次の日
来なかったことを聞いてみたら、その中のW君は東門だろっと言った。あ、忘れていた。僕は、彼に謝ったが喋らなくなってしまった。何度目かに彼は不思議なことを言った。
「これで何度目だよ。」
え?僕は、彼ともめたことは記憶にある。ただ、こんな展開は初めてだ。なんで、キレているんだ。雰囲気が悪化した。何も言わず、僕は帰った。
次の日
朝、いつもより1本早い電車に乗った。昨日のことが理解できず、あまり寝れなかったのだ。やっぱり人は少ない。乗客は、4人。おじいさん、おばあさん、孫と思われる子供1人、目の前にフードを被った僕と同じぐらいの身長の人が1人。なぜか僕は、彼に惹かれた。彼のまわり(オーラ?)が寂しそうだったからなのか、どこかであったような、僕に似ているような……。彼の顔を見ようとすると、真っ暗になった。トンネルだ。トンネルを抜けると彼の姿は、消えていた。瞬間移動?きっと、隣の車両に行っただけであろう。自分の駅が来ると、体勢を整え電車を降りた。僕の次に降りた人は、彼であった。が、気づかず改札口までいつもどおりに行った。彼は僕に何かしようとしていたが、次第に放れていった。正確に言うと彼は置いてかれたのだ。
学校につくとすぐ寝た。ここが、僕の2番目に落ち着く所なのだ。
気づくと、みんながしゃべっていた。昨日のことで、W君とはまだピリピリ状態である。他の男子にカラオケを誘われ、すっきりしていないがついて行った。このストレスを吐き出すべく、歌った。最初は、気持ち良かった。ただ、普段交響曲しか聴かない僕にとってJ‐POPなど皆無分からなかった。みんなと歌う曲の違いに何か恥ずかしい感じがした。グラスに映った人は、僕から目をそらしていた。そうなることを予測していたように。みんな僕を気遣ってくれたがそれがさらにみんなとの距離を感じてしまった。もう、泣くそれしかできなかった。
もう、学校には行きたくない。誰とも会いたくない。
帰り道、頭はその言葉でいっぱいだった。