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ダーク・メモリー

 君達は、心の片隅に消し去れない記憶、思いなどの情報(データ)があるだろう。消そうとしてもロックされていて、消すことは愚か更新して新しく(鮮明に)してしまう。だからと言って、気にしないでいるとふとした時、思い出し邪魔になる人もいる。それに悩むN君とそのまわりに起きた出来事の話…。


 僕は、N。皆にも僕にも’バラセナイ’秘密がある。それは、恥ずかしいだけではない。数えると、…指を使って数える量ではない。できればの話だが一掃してほしい。このフォルダ内を全て削除(デリート)したい。人々は、これを黒歴史などと言う人もいるが黒も黒、どんな色も受け付けない黒だ。それを思い出すことさえ嫌なのだ。それをおこした僕も大嫌いだ。

――――「消してあげようか。」

「誰!?」

 誰もいない。きっと空耳だろう。僕は、いつもどおりの仕度をすると学校へ向かった。


「おはよう。」

ん、Hさんか。

「おはよう。」

 そう言って、イヤホンを付け直した。単に付けたのではない。彼女を見ると何か変な電気が体を走る。だから、逆の行動をしてしまうのだ。

 教室に入ると教科書を机に入れ、窓を開ける。授業が始まると、退屈凌ぎに外を見る。誰かが窓を閉めた。寒かったのだろうか。仕方がない、寝る気はないから廊下を眺めた。廊下の窓ガラスには、つまらない顔をした人がこっちを見ていた――――。


 昼食に2、3の男子が来た。

「何の曲を聴いているんだ。」

 答える気はなかった。だが、クラスに敵をつくる気もない。仕方なくイヤホンを取って、聞いてきた男子に渡した。

「へー、交響曲か。」

「……。」

 変わらぬ僕の顔に気まずいと思ったのか、つまらないとおもったのか別の場所へ行った。僕は、イヤホンをつけるとさっきと同じようぼーっとしていた。もちろん、最初からこんなつまらない人間ではなかった、中学生までは。明るく元気が僕の取り柄だったが、…変わってしまった。自分の愚かさに、恥ずかしさに。そして、自分が嫌いになった。友達は、それ以来減っていくばかり。現在、Hさんともう1人S君だったと思う人が僕の知っている範囲の友達。つまり、ネットなどの顔も知らない人を除いてだ。友達と言っても会話は成り立っていないし、顔もあまり見ない。一応、挨拶する程度だ。


 ぼーっとする。そして、帰りのチャイムが鳴る。僕は、帰宅部。帰ってもぼーっとするだけだが。

途中、歩道橋をを通って電車に乗り家に着く。歩道橋をのぼっているとあの声が聞こえた。

――――「ちょっとお話しようよ。」

 背筋に寒気がはしった。

 「君は…。」

 よく見ると、昼間の声と今の声、どっちも同じ声。姿は人だ…。いや、人とは思えぬやつれ顔だ。

――――「君は、自分が嫌いなんだね。」

「……。」

――――「中学校の時から?」

「僕、覚えている?」

 一方的な質問。もう1度、目を凝らしてカレを見た。フードで隠され、黒い布とチェーンできつく巻かれている……。誰だか分かるはずもない。

――――「そうか、残念だな。」

 僕は、何が言いたいのか理解できなかった。

――――「まあいいや。もう1つ聞きたいことがあるんだ。」

「もう1つ?」

――――「そう。君は、皆が’黒歴史’と呼ぶもの消したいんだったよね。」

「何で、それを……。」

――――「何でって、その心が言っているじゃないか。」

「……。」


――――「じゃ、消してあげようか。」

 最初に、カレが沈黙を破った。

「で、出来るのか?」

――――「うん。」

――――「君が、望むなら。」

 僕は、消えてほしいと望んだ。

そして、――――。

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