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召喚された先で飼い猫が最強でした 〜社畜の俺、猫耳美少女たちと聖獣を救う旅へ〜  作者: マロン
第一章:召喚された先で飼い猫たちと再会しました
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【1-5】異世界で旅を始めました

 太陽が高く昇り、草原の風が頬をなでた。

 遠くまで続く青と緑の景色は、見ているだけで不安になるほど広い。


 俺たちは、草を踏みしめながら歩いていた。

 ――俺と、そして三匹の猫たち。

 いや、今は“猫人族”って言うべきか。


「にしても……広っ! どこまで草原なんだよ、これ」

 思わずぼやくと、すぐ横でコハルが呆れたように腕を組む。


「文句ばっか言ってないで歩く! 寝てた分、体力は余ってるでしょ」

「……いや、そうだけどさ。休み明けの月曜みたいなテンションで言うなよ」

「なにそれ?」

「いや、こっちの話……」


 うららがくすくす笑いながら、隣で歩幅を合わせてくる。

「ご主人、帽子があればいいのに。日差し、強いですよ?」

「あー……確かに暑いな」

 そう言いながらネクタイを少し緩める。

 スーツ姿のまま異世界って、地味に地獄だ。


 後ろを歩くチャチャが、のんびりした声でつぶやく。

「でも……風が気持ちいいです。森より好きかも」

「森?」

 そういえば――さっき、コハルが言ってたな。


「そうそう。アンタが寝てる間、みんなでちょっと周りを見てたのよ」

「へぇ、それで? 町とか……あった?」

「ないわよ。どこまで行っても草と風だけ」

「動物さんは少しいましたけど、建物は見当たりませんでした〜」

 うららが両手を胸の前で合わせる。


「北の方に、大きな森がありましたよ」

 チャチャが少し先を指さした。

 風の中で、うっすらと緑の影が揺れている。


「……なんでそんな、何もない場所に召喚してんだよ、神様」

「でしょ!? あのヒゲモジャ、センス皆無よ」

「おっさん……いや、神様が聞いたら泣くぞ」

「どうでもいいわよ。泣くくらいなら最初から場所くらい考えなさいっての」


 コハルの尻尾が、ぷんぷんと怒りに合わせて揺れる。

 その横で、うららがほんわかした笑みを浮かべた。

「でも……空がとっても綺麗です。

 それに、ご主人と一緒なら、どこでもいいですよ」

「なっ……!」

 コハルが思わず言葉を詰まらせる。

「な、なに言ってんのよ、うらら!」

「え? 本当のことを言っただけですけど?」

「そういう問題じゃなくてっ!」


 わちゃわちゃと騒ぐ二人を見ながら、チャチャがふにゃっと笑う。

「うふふ……みんな元気で良かったです」


 俺は苦笑しながら空を見上げた。

 見渡す限りの草原、どこまでも続く青空。

 遠くに森が見える以外、人工物なんて影も形もない。


「……とりあえず、あの森を目指すか。

 日が落ちる前に、休める場所くらい見つけたいしな」


「仕方ないわね。アンタ一人だと、またスライムに追いかけられそうだし」

 コハルが肩をすくめる。


「ふふっ、ご主人、次はちゃんと守りますね〜」

「ご主人、夜は冷えそうですから、気をつけてくださいね」

「はいはい、頼りにしてますよ、お嬢様方」


 三人の尻尾がふわりと揺れる。

 それがまるで、異世界の風に溶けて踊っているみたいだった。


 ――こうして、俺たちの“最初の一歩”が始まった。

ここまで読んでくださった方ありがとうございます!

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