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召喚された先で飼い猫が最強でした 〜社畜の俺、猫耳美少女たちと聖獣を救う旅へ〜  作者: マロン
第一章:召喚された先で飼い猫たちと再会しました
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【2-2】スライムに襲われました

 まぶたの裏に光が差し込む。

 まるで夢の続きのような、淡い光。


 ゆっくり目を開けると――

 そこは、見渡す限りの草原だった。


 どこまでも続く青空。

 風に揺れる草の匂い。

 人の気配は一切なく、ただ小さな池がひとつ、静かに光を反射していた。


「……マジかよ。ほんとに異世界、来ちまったのか?」


 思わず笑いが漏れる。

 信じられないけど、現実だ。

 あのリビングの光から、一瞬でここに――。


 とりあえず、喉が渇いた。

 あの池まで行こう。


 スーツの上着を直しながら歩き出す。

 そう、服装は召喚前とまったく変わっていない。

 ネクタイも締めっぱなしのまま。

 社会人の象徴みたいなこの格好が、こんな場所じゃやけに浮いている。


「スキルとか……加護とか……何かないのかよ」

 独りごちながら、池の縁にしゃがみこむ。

 澄んだ水面に顔を近づけ――ふと手を止めた。


「……これ、飲めるのか?」


 鏡のように映る自分の顔を見つめる。

 寝不足と残業の疲れが滲んだ、いつものサラリーマンの顔。

 髪も服も、特に変化はない。


 ――ため息をひとつ。


「……どうすりゃいいんだ、これから」


 その時。

 池の向こう、草むらがガサガサと揺れた。


「な、なんだ?」


 反射的に身を引く。

 草の影から、ぷるん、と透明な塊が姿を現した。


「……スライム、か?」


 まるでゼリーのようにぷるぷると震えるその姿。

 ゲームで散々見た“序盤の雑魚”そのものだった。


「なんだよ、脅かしやがって……」

 苦笑しながら近づこうとした――その瞬間。


 スライムが、何かを飛ばした。


「うわっぶね!」


 反射的に身をひねる。

 液体の弾が地面に落ち、ジューッと音を立てて煙を上げた。


「おいおいおいおい! これ、酸か!? 溶けてるじゃねーか!!」


 スライムはぷるんと跳ね、再び弾を連射してくる。

 ギリギリで避けながら、必死に逃げ回る。


「なんだよ! スライムって雑魚なんじゃないのかよっ!」


 草原を転げながら、心臓が破裂しそうになる。

 足がもつれ、息が切れ、汗が滝のように流れる。


 スライムがぴたりと動きを止めた。

 体の奥がぐにゃりと歪み、次の瞬間――跳んだ。


「なっ……!?」


 透明な塊が一直線に迫る。

 避ける体力なんて、もう残っていない。


「そ、そうだ……スキル! 神様がなんかくれるって言ってたよな!」

 藁にもすがる思いで叫ぶ。

「……て、使い方わかんねーよ!!」


 もう限界だった。

 その場に膝をつき、目を閉じる。


(ああ、せっかくの異世界召喚なのに……俺の時代、もう終わりかよ)


 耳の奥で、ぬるりとした音が近づいてくる。


 空気が一瞬、熱を帯びた。

 世界が止まったように、何も聞こえない。


 ――パンッ!!


 何かが弾け飛ぶ音がした。

 反射的に目を開けると、スライムの体が宙に弾かれていた。


 その先に――


 柔らかい光の中、長い髪を揺らす影が立っていた。

 

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