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召喚された先で飼い猫が最強でした 〜社畜の俺、猫耳美少女たちと聖獣を救う旅へ〜  作者: マロン
第三章:召喚された先でネズミの神様を救いました
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【3-7】宿でひと休みしました

 案内された宿は、木の香りが心地よい二階建ての建物だった。

 扉をくぐると、ふんわりとした湯気と香草の匂いが漂ってくる。


「うわぁ……あったかい〜!」

 うららが両手を胸の前で組んで、嬉しそうに息を弾ませた。


「床がちゃんと平ら……最高ね」

 コハルが肩を回しながら呟く。

 森の地面で寝ていたせいで、腰がまだ痛いらしい。


「ご主人、見てください〜、ベッドが三つもあります〜!」

 チャチャが勢いよく飛び乗り、ベッドの上でごろりと転がった。


「おいおい、壊すなよ!? 弁償とかできないんだからな!」


「だって、ふかふかなんですよ〜♪」

 ごろごろと喉を鳴らすチャチャ。

 その姿は完全に“猫”だった。


「……まったく、どいつもこいつも」

 コハルは呆れたように言いながらも、しっかりベッドの柔らかさを確かめている。

 尻尾がご機嫌に揺れてる時点で、ツンデレ発動だ。


「ご主人、先にお風呂いただいてきますね〜」

 うららがタオルを手に取って、嬉しそうに浴場へ向かう。


「あれ、うららって風呂好きだったっけ?

 ていうかお前ら、猫のくせに風呂嫌いじゃなかったのか?」


「この身体になってから、汗をかくようになったのよ」

 コハルがじろりと睨む。

「だから放っておくと、背中が気持ち悪いの」


「なるほど……猫ボディでも中身は人間寄りってことか」


「ええ、汗臭いのはイヤ」

「私もイヤです〜。ふわふわの毛がベタつくのは悲しいです〜」

「おまえら完全に女子トークだな……」


 そう言っていると、階段の方から声がした。


「きゃ〜っ! 猫人族の子たち、かわいい〜っ!」


 振り向くと、宿屋の娘らしい少女が立っていた。

 栗色の髪をまとめた快活そうな子で、目がきらきらしている。


「すっごい! 本物の耳と尻尾だ! 触ってもいいですか!?」


「えっ、ちょ、ちょっと――!」

 コハルが思わず一歩引くが、娘は遠慮なくもふっと両手で耳を包んだ。


「わぁ〜〜っ、ふわふわぁぁ!!」


「なっ……や、やめなさいってば!」

 顔を真っ赤にして固まるコハル。

 ツンデレ炸裂である。


「コハルちゃん、人気者ですね〜♪」

 うららが楽しそうに笑い、チャチャはベッドの上で半分寝たまま

「……すぅ……いい匂い……」と寝言を漏らしていた。


「いや、寝るなよ! おまえの番も来るぞ!」

 だがチャチャは完全に夢の中。

 結局、宿屋の娘にもふられるのはコハルとうららだけだった。


「はぁ……もふられ疲れた……」

 コハルが耳を押さえてふらふらと椅子に座る。


「いいじゃん。人気者だぞ?」

「……うるさい」


 口ではそう言いながら、耳がまだピクピクしている。

 照れ隠しがもう隠せてない。


 そんなやり取りをしていると、厨房からいい匂いが漂ってきた。

 香ばしい肉とハーブ、そして少し甘い香り。


「お待たせしました〜! 本日の夕飯で〜す!」

 宿屋の娘が、山盛りの料理を運んできた。


「うおぉ……! すげぇ……肉だ、肉……!」

 皿の上には、焼いた鳥肉に緑のハーブが散らされていて、香ばしい煙が立ち上っていた。


「これ、いい香り〜!」

 うららがうっとりと目を細める。

「でも……ご主人、これ猫的に大丈夫なんですか?」


「……あ、確かに」

 俺はというかフォークを持つ手を止めた。

 「ハーブ」と「スパイス」――どっちも猫に良くなさそうなワードだ。


「平気ですよ〜、ご主人」

 チャチャが笑う。

「この体、ちゃんと人の体なんですから〜。たぶん」


「“たぶん”て言うな! 命に関わるだろ!」


「平気平気。味覚は完全に人間寄りよ」

 コハルがナイフで肉を切りながら言う。

 その口元には、うっすら笑みが浮かんでいた。


(まぁ……見た目が猫なだけで、中身はちゃんと人ってことか)


 俺もひと口食べてみる。

 じゅわっと肉汁が広がり、ハーブの香りが鼻を抜けた。


「……うまっ」


 思わず声が漏れる。

 会社帰りのコンビニ飯とは、天と地の差だった。


「どうしました? ご主人」

「いや……働いてないのに飯がうまいって、なんか罪悪感あるなって……」


 コハルが呆れたようにため息をつく。

「何それ。誰も気にしてないわよ」

「そうですよ〜。いっぱい頑張ったじゃないですか〜」

「……見てただけだけどな」

「見るのも仕事よ、下僕」

「どういう理屈だよ!」


 笑い声が響く食堂の中、俺はふと窓の外を見た。

 穏やかな夜風が、町の灯りをゆらゆら揺らしている。


(……悪くないな、こういう日も)


 久しぶりに“人らしい疲れ”を感じながら、俺は静かにフォークを置いた。

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