ものさし
以前撮影しました映像作品の台本です。短いものなのでこちらに掲載してみました。
読み物としてどうかという実験的に
竹本正樹(24)
上田胡桃(22)
店長(28)
相田陽子(23)
佐々木健太(28)
正樹の部屋の中
勉強をしている正樹。カレンダーには印が付いており試験が迫っていることが
分かる。時間を確認し
正樹「やべッ・・・」
カフェの事務所
事務仕事をしている店長。そこに正樹が入ってくる。
正樹「・・・・・」(タイムカードを切ろうとして)
店長「何回目?」
正樹「すいません。」
店長「だから何回目?」
正樹「・・・・・」
店長「ハァ・・・今月三回目。」
正樹「すいません。」
店長「謝って欲しいんじゃなくて、それとも10分ぐらいは遅刻じゃないとか思ってる?」
正樹「・・・すいません。」
店長「だからさ・・・君のせいで皆が迷惑してるの・・・わかる?」
正樹「・・・すいません。」
店長「ハァ・・・自分で出したシフトくらい守ってね。」
正樹「はい・・・」
胡桃、陽子入ってくる。
胡桃「お疲れ様です。」
店長「上田さんお疲れ。悪いね、残って貰っちゃって。」
胡桃「いえいえ、陽子ちゃんとお茶するから待つ予定だったし。」
店長「そう?じゃあ、うちでして行きなよ!奢るからさ。勿論、陽子ちゃんも。」
陽子「私もいいんですか?」
店長「いいよ、売り上げにもなるし。」
陽子「じゃ遠慮なく、ありがとうございます。」
正樹「すみません」
胡桃「気にしないで。」
カフェ店内席にて
胡桃「正樹君、大丈夫かな?」
陽子「色々と追い詰められてるんじゃない?試験も近いって言ってたし」
胡桃「試験?」
陽子「胡桃も知らなかったか。」
胡桃「知らなかった。」
陽子「正樹君、あんま自分の事言わないもんね。私もこの前、知ったもん。」
胡桃「そっか、その試験って難しいの?」
陽子「そうみたい、ただ受かれば安泰らしいよ。」
胡桃「そうなんだ。」
佐々木 健太出勤の為入って来る。二人に気が付き
健太「あれ?お二人そろってどうしたの?僕の噂かな?」
陽子「な訳!」
健太「強く否定するところがまた怪しい」
陽子「ほらいった、いった。」
健太「あいよー。」
同日夜、事務所にて
健太「店長と僕だけなんて色気がないなぁ」
店長「・・・・」
健太「どうしたんですか?なんか辛気臭いですよ。」
店長「あいつ辞めてくんねぇかな。」
健太「・・・正樹?」
店長「ミスが多い上に最近は遅刻もする。注意してもすいませんって言うばかりで本当に反省してのかね。」
健太「あれてますなぁ、久しぶりに行きますか?」
店長「今日はちょっと、すまん。」
健太「おやおや、彼女さんでも?」
店長「さぁどうだろうな。」
健太「くそぉ誰か私にも春を下さいませんかね。」
後日、カフェ店内席にて
席で勉強している正樹、そこに胡桃が声をかける。
胡桃「頑張ってるね。」
正樹「あ、上田さん、お疲れ様です。」
胡桃「敬語、辞めって言ったじゃん。」
正樹「ごめん、先輩だし。」
胡桃「それなら、正樹君の方が年上でしょ?」
正樹「そうだね、ごめん。」
胡桃「本当に直ぐ謝るんだね。」
正樹「え?」
胡桃「うんう、試験もうすぐなんでしょう。」
正樹「あ、そう。」
胡桃「応援してるから。」
正樹「ありがとう。」
二人の様子を見ていた店長
店長「何でこんなところで勉強してんの?」
正樹「すいません、遅刻しないようにと思って・・あの・・・すいません」
店長「頑張ってますってアピールじゃなくて?」
胡桃「ちょっと言い過ぎじゃない。」
店長「・・・・お客さん増えてきてるから事務所でやって。」(店長去る)
正樹「はい。」
陽子「胡桃お待たせ!帰ろう!」
胡桃「うん!気にしちゃ駄目だよ。」
正樹「うん、ありがとう。」
数時間後の夜お店出て少しの道
肩を落とす正樹に不意に声をかける胡桃
胡桃「わ!」
正樹「わ!?びっくりしたぁ・・・」
胡桃「下向いて歩いてたら危ないよ?」
正樹「身に沁みました。」
胡桃「フフッ」
正樹「あれ?相田さんと帰ってなかった?」
胡桃「正樹君を待ってたんだよ?」
正樹「え?」
胡桃「嘘です、ちょっと野暮用。」
正樹「なんだ・・・」
胡桃「がっかり?」
正樹「別に」
胡桃「で、何で下向いてたの?」
正樹「・・・またやっちゃって。」
胡桃「ミス?」
正樹「うん・・・人が普通に出来ることが僕には出来ないみたいで。」
胡桃「そう言われたの?」
正樹「うん・・・」
胡桃「・・・・」
正樹「どうやったら普通になれるのかな。普通になりたい。」
胡桃「本当に?」
正樹「え?・・・うん。」
胡桃「嘘だよ。」
正樹「え?」
胡桃「私は普通が嫌い。普通って何?いつから普通になりたいなんて思うようになっただろう。誰にそんなものさし持たされたのかな。」
正樹「・・・」
胡桃「ズルいと思わない?一方的に価値観押し付けて人を普通の中に閉じ込めて自分だけは抜け駆けしようしてる。」
正樹「・・・ズルい・・・」
胡桃「でしょ!皆そう、性格悪いんだ。気持ち悪い。」
正樹「上田さんって・・・」
胡桃「くるみ。」
正樹「・・・胡桃さんってそんなこと言うんだね。」
胡桃「もっと普通だと思ってた?」
正樹「あッ・・ごめ・・」
胡桃「謝らないで、私の価値観を押し付けただけだから。」
正樹「じゃあ・・・ありがとう。」
胡桃「ありがとう?」
正樹「僕の価値観。」
胡桃「そっか。」
二人の様子を遠くから見ている店長。
翌日、バイトの休憩時間。事務所内
勉強している正樹、店長事務所に入ってくる。
店長「勉強?」
正樹「はい。」
店長「休憩時間に?」
正樹「はい、試験近いので。」
店長「意味あんの?」
正樹「え?」
店長「バイトの休憩時間ちょっとやったぐらいで結果変わるの?」
正樹「・・・・えっと。」
店長「やっぱアピールだろ。」
正樹「はい?」
店長「アピールだろって。」
正樹「違います。」
店長「じゃ何だよ?」
正樹「ただ勉強してるだけです。自分の為に。」
店長「勉強してるから僕は悪くないと?ミスしても遅刻しても仕方ないって?」
正樹「違います。」(立ち上がる)
店長「何だよ?」
正樹「・・・・」(目を合わせきれない)
店長「はぁお前みたいな奴がいくら勉強したって無駄だよ。無駄・・・
店長の台詞中に胡桃が事務所に顔を見せる。
正樹と胡桃目が合う。決然とし
店長・・・もういいからちょっと早めに休憩上がってくれない?今、忙しいから。」
正樹「嫌です。」
店長「はい?」
正樹「嫌です。」
店長「はぁ・・・別に給料出さないって言ってる訳じゃないでしょ?お願いしてるだけ。人が困ってたら普通助けようと思わない?」
正樹「店長のやってることはパワハラです。」
店長「パワハラだ?」
正樹「パワハラです。」
店長「いい?どこを切り取ってパワハラとか言ってるか知らないけど、おれは普通の事しか言ってないよ?」
正樹「僕の勉強が無駄だとかアピールだとか言うこともですか?」
店長「・・・・社会人として当たり前の事が出来ないと資格を取っても結局駄目になるの?
わかる?お前はミスも多い、遅刻もする。それを棚上げしてパワハラだ?俺も言いたくて言ってるんじゃない。お店のこと、他の従業員の事、引いてはお前の為に言ってんの。」
正樹「嘘です。」
店長「は?」
正樹「店長は僕の事が気に入らなっただけです。」
店長「気に入らねーはそりゃ!」
正樹「よくわかりました。今までありがとうございました。」(荷物を片付けつつ)
店長「・・・シフト中だけど。」
正樹「はい。」
片付け終わり出ていく正樹、止めはしない店長。やっと胡桃の存在に気が付く
店長「辞めるんだと、清々するよ。助かったぐらい。」
胡桃最後まで言葉を聞くも去ろうとする。
店長「胡桃!」
胡桃振り返り、ずっとつけていた髪留めを外し店長に渡し出ていく。
同時刻店内。
忙しそうな健太
健太「なんか正樹、荷物持って出ってたんだけど・・・」
胡桃「ごめん、また埋め合わせするから。」(付けていたエプロンを健太に渡し出て行く)
健太「え?俺一人?店長は?」
客「すみません。」VO
健太「はーい。」
席にてコーヒーを飲んでいた陽子と目が合う。手を合わせる健太。
溜息つく陽子。
夜、お店を出て少しの道
胡桃「正樹くん!」
正樹「胡桃さん!」
胡桃「仕事辞めちゃったね。」
正樹「辞めちゃった。」(正樹久しぶりの笑顔)
終わり
皆様の中で映像が膨らんでくれたら嬉しいです。