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海の蒼  作者: 森野優
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第33話 王宮4

「いいえ、嘘ではありません。タオ家当主から打診は受けております。」コウヤはにっこり微笑んだ。



なぜ、あんな貧相な子供に拘るのかしら?お兄様まで興味を持つタオ・リョウとは何者ですか。」

「小さな少女ですよ。宰相様の玩具にされた犠牲者、この私も同じ禁術をしかけられた身の上です。深入りしない方がお姫様の為だと思いますが…聞いては頂けないのでしょうね。でもこれだけはご理解下さい。私もリョウも興味本意で手を出していい存在ではありません。私たちは危険物です。化け物級の魔力はこの国にとって災厄でしかありません。」


「私は、王位を望んでおります。」

凛とした態度のセルティアは確かに王妃とは段違いの賢さを持っていた。しかし。

「それは第一皇子様とお話になればいい。魔術師は必要ないと思います。」


「それには貴方方を引き込むのが良いと進言されました。お兄様もそう思っていらっしゃるわ。強い魔術師なら国外にも太刀打ちできますし、あの頭の固い旧宰相達をを黙らせるのにはうってつけですもの。そしてコリルにも牽制になります。」


国王の座という一つの椅子を廻ってのゲームに巻き込まれるのは願い下げだな。

それに腹立つことにオレ達の意志ってのは全く無視で反吐がでる。国外まで来てこの扱いは勘弁だ。

オレとリョウは物じゃない。


「王女様、何をどうお聞きになっているのか事実と隔たりがあるようですね。私とリョウはハオラ宰相の監視下にある。私が王女様と婚姻を結ぼうが皇子様がリョウを愛妾に迎えようが宰相の意には逆らえない。我々はそういう禁術を身体に埋め込まれております。」イシュタールの尽力で呪術の半分は解かれているがそれをこの我儘な王女様に言ってやる必要もない。


「禁術…?呪術とは人の意志をも操ることができるのですか。」 あれ、喰い付くのはそっちですか。

「だからこそ禁術、なのです。邪な心の者がその力を手に入れたらどうなるとお考えですか?国王陛下でもそれには抗えないでしょうね。もし、「核」を埋め込まれているとしたら。」

そこでコウヤは言葉を切った。


「………!!何を根拠のない…そんなことは絶対にありませんわ。毎日私は陛下とお会いしております!」

しかしセルティアの顔は明らかに青ざめている。「では私は?何か変わったことがありますか?四六時中言いなりになっているのではありません。しかし、ハオラに下された命令には絶対服従です。」


王女はぶるぶると震えだした。なにか思い当たる節でもあるのだろうか。彼女の危機感の薄さにコウヤはうんざりとしてしまう。

自分の足元も覚束ないくせに王位が欲しいだと?しかし、あの核は大人には使用できないらしい。

でもこれも言ってやるつもりもない。精々疑心暗鬼に囚われてゲームから抜けてくれればいい。


「バ、バースを呼んでちょうだい。お父上の、陛下の周りがどうなっているのか報告させなければ…」

コウヤは腹の中で思い切り噴出した。

「王女様、バースはハオラ宰相の狗ですよ。王妃様を懐柔するためのだけの狗。」


コウヤは怒りの余り両拳をきつく握り締める王女を冷ややかに見詰めた。そろそろ頃合かと口を開きかけた時それはやってきた。



背中を冷たい手で撫でられるような感触。コウヤは身体を強張らせ、ぐっと背筋に力をいれた。


自分に分かるのはリョウに何かが起こっているという感覚だった。


コウヤは此方の動揺を悟られないように慎重に退出する。幸いな事に王女様は事の大きさにショックを受けておりコウヤの様子など見てはいなかった。ドアを閉めたコウヤは同時に宛がわれた部屋から顔を出したリオンの元へ走った。

部屋の外に待機していた衛兵は何事かと緊張していた。

バースは真っ先に王女のいる広間に飛び込んでいった。


「コウヤ様」リオンが後手に鍵をかちりと閉める。そこにはジルが魔法転移陣を構えて待っていた。「ジルさん!リョウが…!!」

「ああ、多分ハオラと接触している。リョウのいる場所を頭に思い浮かべろ。お前なら行ける。」

コウヤは魔方陣の真ん中に立ち、眼を瞑った。ジルが低い声で詠唱を始める。

「無傷で連れて帰って来い。」


コウヤは不敵ににやりと笑う。  一瞬の後、コウヤの姿は消えていた。

どんどんとドアが叩かれる。リオンはすぐに開錠した。飛び込んできたのはバースだった。

「貴殿らは何をされていたのか説明して頂きたい。コウヤ殿はどちらに行かれたのかな。素直に白状頂かないとお帰しできませんぞ。」

王妃の情人でハオラ宰相の狗。どこまでも不遜になれる男なのだろうか。それは彼自身の力ではない。


「僭越ながらコウヤ様は火急の用事にてイシュタールにお戻りになりました。」

「何だと?誰も後宮からは出ていないはずだが。」

「ですから転移魔法を使いました。」リオンの言葉にバースは眼を剥いた。

「貴殿は魔術師か。では、姫様の為に尽力するが良い。姫様はコウヤ殿にもご執心のようだしな。」「お断わりします。」リオンの即答に周りの衛兵達は飛び上がった。

今日の客人たちは何者だ。商人と聞いているがこの破格の扱いと言い、バース団長を少しも恐れない態度は一体。


「私はモントール国ミカミ将軍に仕える身。勝手な行動は禁じられております。コウヤ様も同様です。ご要望はモントールを通して頂きたく存じます。」

立て板に水を流すような口上にバースはぐっと詰った。


今まで王妃の権威を笠に着て彼はやりたい放題だった。そしてハオラ宰相にも通じ、その権力はとても強いものとなり後宮では彼に意見できる者などいなかったのだ。

「魔術師はハオラ宰相の管轄でしょう。バース様からお願いしてみたらいかがですか。それにモントールの魔術師は国外の活動でも厳しい罰則が定められており、勝手に活動はできかねます。」


バースはその言葉に深い意味を覚ったのかすぐに口を噤んだ。「くそっ・・」


更新遅くなりました。ぺこり。

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