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海の蒼  作者: 森野優
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第27話 イバネマ国7

「ハオラとイバネマ王妃は確執があるのでしょうか。」

「さぁね。詳しい事はわかんないけど国王が王妃を疎んじるのはあの性悪宰相が原因かもね。」

にこにこと黒い見解を披露するスバルはまだ自分より年下の17歳と聞いている。

モントールは平和な社会を築いている、リオンはそう感じていた。

気候も土地も人間もイバネマとは比べ物にならない位、落ち着いている。そして、この国は殺伐として不安定だ。

「とにかく三竦みはいいけど均衡が崩れると人民が迷惑する。気がかりはそこなんだ。」


少しずつだがリオンは状況を理解していた。

モントールからイバネマに渡ったジギリアスことハオラはリョウとコウヤを使って何か企んでいる。

我が主と少女を土産にイバネマ王国ををかき回し、3勢力を相打ちにさせるつもりなのか。その目的は一体。

国を乗っ取るだけならもっと早く為されていただろう。そうせずに何を企んでいるのか。ぞくりとリオンはその身を震わせた。


「お、起きたかコウヤ。」のっそりとコウヤが起き上がっている。「コウヤ様、どこか具合の悪い所は…」

コウヤの眼の色がおかしい。

「…コウヤ、様!?」


コウヤの纏う気が明らかに変化している。ゆるゆると立ち上る碧い煙は彼とリョウを包んでいる。

リョウはぼんやりとしたままコウヤを凝視している。「っ!リョウさん?意識がないのか?」

「リオン静かに。」ジルの声だった。


「地の者よ。災いが動き始めた。月に任せる時を待て。」コウヤの眼に掛かっていた紗が薄れていく。

「…うぁ!今のなんだ?」


「月詠みまで背負っているのか。」リジアの苦しそうな言葉にジルは頷いた。

「アリシアは星詠みと呼ばれる。コウヤは月詠みの力を持っている。」「はぁ?何ですかそれ。」

コウヤは不満そうにジルを見た。


ミカミもタオも同じ系統の術師の家系だった。タオに生まれる女性の巫女は星詠み、ミカミの男性未来視は月詠みと呼ばれた。

「昔、爺さんに聞いたことがある。その所為でミカミの一族は時の権力者に狩られ、幽閉された。東の島国からミカミの逃亡を助けたのは「ホシ」と名乗った者だったと。それがタオなんですね。」


此方も昔話だが、とジルは言った。つかず離れずでタオはいつも近くにいたらしい。そしてミカミの未来を視たのはタオの巫女だった。その御神託に従い、タオはミカミを連れ出し逃亡を助けたそうだった。


「その時、ミカミの一族はこの未来視の力を災厄と決め、封印したそうだ。」

「賢明だな。でないと一族全部連れてうろうろしてた辺境の民みたいにいつか根絶やしにされるところだったんだろう。」


コウヤは背筋が寒くなった。その一族だと言うだけで狩られ、迫害され、搾取される。

「タオもミカミも色々な国に散った。そして息を潜め、その力を隠して生き延びてきた。」

「じゃあなぜ、モントールのミカミは名乗っている。それも上級貴族の扱いで建国から普通に生活しているじゃないか。」


「それはミカミの一族がモントール建国に大きく関わっているからです。」リジアの声だった。

辺境の民はミカミと種を同じくする一族だった。ある者はもう文明に背を向け荒野に自由に生きる事を選んだ。

そしてある者はモントールという国を作る基礎に大きく関わった。そしてその場所に根を張ったのだった。


「封印したはずの力がどうして今コウヤ様に。」「時期が来たのだろう。」リジアははっきりとそう言った。時期?

ぐったりとしているリョウをコウヤは床から引っ張り上げ、向かい合わせに膝に座らせて小さな頭を自分の肩にそっと乗せた。

「あの変な鳥と会ってからおかしくなったんです。記憶も戻り始めているし、体に異変が起きている。」


「それにリョウが反応して中てられたのか。」「この状態を見るとそうでしょう。」

リジアは溜息をついた。

「コウヤさ、リョウに流し込めば元気になるかもよ。」スバルの言葉に彼は首を傾げた。

「どうやって。」

「そのまま。循環させて中和すればいいんだよ。リョウとコウヤは対だから大丈夫。」


ふん、とコウヤは考えて目を瞑った。力の循環をイメージして心臓の辺りからリョウへ気を流し込む。

ゆっくりと薄めて吃驚させないように。暫くして馴染んでからもう少し濃くしてみる。

リョウの体が温かくなるのが判った。ぴくりとリョウが身じろぎする。

ふたりの身体がぼんやりと蒼く発光している。「これは…」皆目を瞠っている。

「すごく綺麗だ。コウヤがいればリョウは長生きできるよ。」嬉しそうにスバルは言う。

そうだったのか。リョウがコウヤの側にいるのは意味があったのだ。本能でリョウはコウヤを求める。

そしてコウヤは無意識の内にリョウの手を取っている。


「うちの双子がそうだったよ。片方が身体が弱くてさ。いっつも引っ付いて循環させてた。」

スバルは淋しそうに出て行った。

入れ替わりに留守にしていたアオイが戻ってきた。

「お!何この体勢。コウヤは治癒魔法まで発動するのか?」


「いや、リョウ限定らしい…どれだけ可能性を秘めているんだこの子ども達は…」

ごそごそとリョウが動き始めた。どうやら充電は終わったらしい。「リョウ、良かったな。これで好きなだけ暴れていいぞ?」

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