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海の蒼  作者: 森野優
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第15話 旅立ち6

リオンの問いに無理も無い、という表情をするアオイ。

「まだコウヤ君には言わない方がいいかもしれないけど…。コウヤ君が傷つくとリョウが切れるんだよね。で、力を発動しちゃうとこれが結構大変な騒ぎになるって事。そうなったら止められるのはコウヤ君しかいないし。」

「要するにコウヤ様が無事でいればリョウさんも危ない真似をしないんですね。」

「んーまぁそういうコトなんだけど…側にいると難しいかもしれない。」歯切れの悪いアオイの説明に引っかかるものを感じたリオンだった。それなりに接近戦と例の鞭の使い方はモノにしたが、魔法は全く駄目だった。いきなり魔導師の家系だと言われても今までそういう訓練を受けたことの無いリオンはイメージすらも掴めなかったのだ。

アオイは誰でも最初はそんなものだと嘯いていた。

「私達が知らないことはまだ沢山あるようですね。」漠然としたその問いにアオイはきつい目を向けていた。

彼らを全面的に信用したわけではない。しかし、完全なる敵だとは思えない。いや、思いたくなかった。

どこか得体の知れない雰囲気を漂わせるアオイ。秀麗な顔は女性かと思うくらい中性的だ。長い銀髪のせいかもしれないがドレスを着せたら良く似合うだろうなどどリオンは思う。逆にリョウは反対の意味で中性的だ。制服のようなアオザイを着た姿はまるで少年のように見える。あの低いしゃがれた声のせいか、彼女はあまり会話をしない。学院で見かけた時は小さな少女に見えたがあの時の戦闘はまるで猛禽類だった。この家の中ではふわふわと漂う妖精のように存在感が薄いのだ。どれが本当のタオ・リョウなのだろうか。

主であるコウヤがリョウを憎からず思っているのは判っている。だから尚の事リョウが気になっていた。

誰であれコウヤ様を害する人間は排除する。リオンは遠目に組み手をする二人の姿をぼんやりと眺めていた。


タオ家の人間は捕えどころがなく何を考えているのか全く読めないのだ。

このままイバネマ行きに乗ってしまっていいのかどうかリオンは図りかねていた。罠でないという確証はない。



「リオン…迷うと隙ができる。その隙に付け込まれて、死ぬよ?」縁起でもないご神託を残しアオイはひらひらと手を振る。

どうやらもう屋敷に入れという事らしい。「…ああ。」手を繋いで戻ってくるコウヤとリョウを横目で眺め、嘆息した。


執務室でオリビエは姦計を巡らせていた。

リョウとコウヤを一緒にイバネマに出すのは賭けだった。イジリアスは手ぐすねを引いて待っているだろう。

そしてフェブリエの末裔であるアオイとリオン。役者は揃った。凶とでるか吉とでるか…

しかし、危険な事には変わりは無い。モントール国内ならともかくイバネマでは何が起こるかは判らないのだ。

コウヤはこれから起こる事柄を受け入れることができるだろうか。

リョウは呪いと呪縛に立ち向かえるのか。4人への心配は尽きなかった。 明日の朝、彼らはモントールを出発する。


行き先はイバネマ国首都リズだった。

商人である弟の元へ荷馬車を仕立てた。もちろん4人とも平民の支度をしている。

「…変装は理解している。だがなぜアオイがスカートをはいているのか。」

額に手を当てたコウヤは苦し紛れに質問した。

「だから変装。リョウは男装だから私は女装、基本でしょう?」

しゃあしゃあと言ってのける銀髪の美女は薄化粧まで施してある。

「なんか負けたような気がするのはオレだけなのか?」「…実は私も少し、考えました。」


一般的な常識の上を行くタオ兄妹を先に馬車に押し込め、コウヤとリオンも乗り込んだ。

門の横に立ったオリビエが彼らを見送る。「コウヤ様、ご武運を。」


がらがらと門を出て行く馬車をタオ家当主は漠然と神に祈った。「どうか彼らにご加護を。」


「今日は行ける所まで頑張るぞ。」アオイの言葉に異存はなかった。こうなったら一日も早く目的地に着きたい。


交替で務める御者は全員で持ち回りだ。コウヤはまさかリョウまで荷馬車が扱えるとは思わなかったのだ。

しかし、彼らは逆にコウヤが慣れているのに驚いていた。「不仲とはいえこれでも軍人の息子だけど。」憮然としたコウヤだった。


今回オリビエが彼らに用意したのはイバネマで商売をしている実弟イシュタール・ジルの遠縁という証明証だった。

「君達はシュタールが何を扱ってるか知ってるのかな?」リオンは首を振った。「武器だよ。」


「まさか…タオは死の商人だったのか。」


ショックを受けたように二人は黙りこんでしまった。

「まーそういう反応も解からないでもないけどな。戦争や反乱に何が必要だ?武器を扱う商人が一番顕著にその動きに対応出来るのさ。誰が何を考え何をしようとしているのか。タオの情報網には絶対不可欠な要素。罪悪感?私には無い。」


アオイの表情は淡々としており感情の起伏は感じられなかった。

「分かった。オリビエ殿の仕事に文句をつける権利はオレには無い。」そんな感想を述べるとコウヤは俯いた。


旅立つまで説明、長過ぎですね。すいません。

ここまで読んでくださった皆さん、心から感謝を申し上げます。

これからもどうぞ可愛がってやって下さい。(ぺこり)

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