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海の蒼  作者: 森野優
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第14話 旅立ち5

ようやくイジリアス特製の結界が中から開けられた。長い事近くに子飼いのカラスを放っていたオリビエは即座に行動に移る。

そこで6歳のコウヤとリョウ、例の青年が連れ出したアオイを保護したのだった。

この3人の身元は絶対に公表されるわけにはいかなかったのだ。モントール国軍最高権力者の息子に存在しない伯爵の末裔。そして魔法の核を埋め込まれた少女。そこでオリビエは別の場所で二人が発見されたことにした。

身元不明な孤児として処理されたアオイとリョウをタオ家に秘密裏に迎えたのだった。

ジギリアスは王家と密接な関わりを持っている。この事件が公になればまた軍人派と王宮派の対立が蒸し返されてしまう。

内乱がようやく沈静化したところへこの事件は非常にまずい事態だったのだ。

ハオラ教団は得体のしれない教義を振りかざし人の心を惑わす。その教主がモントール屈指の医師と同一人物と知れてはならない。


その上教団の幹部はすでに逃げた後であり、物的証拠も殆ど廃棄されていた。オリビエはジギリアスの行っていた実験は完成していたと考えていた。完成したことであの狂人はもう子供に興味を失ったのかもしれないとも思ったのだが。

ジギリアスは研究成果を捨てていったのではなく、いつでも回収できるのを見込んで「置いて」いったのだ。

そして時限式の呪術を施された子供達は8年後、不気味な様装で発動した。もう一刻の猶予もならない。


大きなノック音と共にオリビエが部屋に入って来た。


「このままモントールで送られてくる刺客と戦うか、それともイバネマまであの狂人を始末に行くか。」



ちらりとリオンを見てコウヤは即答した。「受けて立ちますよ。」


「じゃ、とりあえずリオンは私と特訓だな。」嬉しそうに黒い笑みを浮かべたアオイは長い髪を揺らした。

「ではコウヤ殿はリョウと私でお相手致しましょう。」

こちらも不穏な気が満ちている。指名を受けた二人は、ぞくりと肩を震わせた。


コウヤとリオンが学んだのはいわゆる正規の剣術であった。それは型に嵌ったものであり、実戦ではあまり役に立たなかった。

「あの時の襲撃を思い出して下さい。貴方の剣捌きではかわすだけが精一杯。賊は傭兵あがりの戦闘のプロです。一撃で狙ってくる殺人者を倒さなければ生き残れないでしょう。」コウヤは唇を噛んだ。オリビエの言うとおりだった。自分が学んできた生温い剣術ではイバネマに行くどころか辿り着く事さえ難しいだろう。


「タオの武術は大陸から来た独自の物です。」

それは体術を中心に女子供や身体の小さい者でも体得できる混合の拳法だった。大きな刀を振り回さずに使いやすい武器を使うのが特徴で飛び道具を駆使し、遠距離で不意を突く。体勢を崩した後、機敏な体術で急所を一撃する。実に利に適った武術だった。


次の日からリオンとコウヤは別々に修行に勤しんでいた。

コウヤは徹底した組み手をリョウと続けていた。側にはオリビエがつきいちいちその欠点を指摘する。

「そこ!すぐに引いて!右手はそうです!戻る!そこで躊躇ったら突かれますよ!!もう一度です。」

何度も弱いところをやり直しさせる教え方はかなりきつかった。

息が上がり、最後には左手を取られ後に捻り上げて地面に勢い良く倒された。「…くっそ…勝てねぇっ!」

相変わらずにこにこと相手をするリョウの体力は底なしの様だった。


「無駄な動きが多すぎる。相手の動きを読んで対処出来ないと刃物を持った敵には勝てない。」

胸を弾ませ、どろどろの姿で大の字のコウヤにリョウは手を差し伸べる。「でも・コウヤ・と戦うのは・気持ちが・いい。」


はぁっと大きな溜息をつくとリョウの手を取って立ち上がる。「しかし、リョウは強いな。」

彼女は不思議そうに首を傾げた。だから何?と言った風である。「そりゃそうだよ。リョウは戦うお人形だからね。」


リオンを連れたアオイが合流してきた。リオンは用途がよく分からない武器と称するものの中から鞭を選んでいた。

リオンは背も高く体格には恵まれているが、やはり敵の人数が多ければ多いほど接近戦は避けたいと思っていたからだった。

その選択にアオイは同意し、使い方を彼に伝授していた。手に馴染むそれは重すぎず、しっくりと馴染んでいる。

畳めば服の中にも隠せるし、腰に下げた剣よりも軽い。さすがにコウヤよりも実戦の経験値は高く、アオイもその成果には感心していた。アオイはその合間をぬって魔法の使い方もリオンに教え込んでいた。「リオンがコウヤ殿をきっちり護れればリョウの負担が減るからな。」その物言いに顔を顰めたリオンは言った。「…アオイ。なぜリョウさんはコウヤ様の盾になるのだろうか。」

確かに十代の少女がそう年の変わらない少年を守るなどど考えるのか。リョウとコウヤはまだ会って間もないはずだ。

主がリョウさんの名付け親だとしても、忠義を感じるにはあまりに簡単すぎやしないだろうか。リオンはそう思った。

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