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第1幕 新学期

これは、物語であり、フィクションである。

実在する人物・団体等との係わりは、一切無い。

 2020年4月6日 朝7:00


「ほのかー!おきてるー?」

 甘ったるいママの声だ。


 いつも優しいママ。大好きだ。

 でも、起きてるか?だと?その言葉は聞き捨てならない。

 なぜなら今日は始業式。中学2年生の始まりの日だ。

 私のティーンエイジャーとしての初日だぞ?

 そんな日に、この私が寝坊なんて、する訳がないでしょ!


 春休み中に、緻密に練り上げた今年の(野望)計画書から目を上げ、パジャマにガウンをかけてリビングへ下りていく。

 制服を着てから朝食を食べるなんて、そんなリスクを冒す気はさらさらない。


「おはようママ。あたしが寝坊なんかしたことある?お兄ちゃんじゃあるまいし」


「おはよう、ほのか。いつもの時間になっても下りてこなかったから…」


「うん、ちょっと瞑想に耽ってた」


「あはっ、瞑想ねぇ。丁度レーズンパンが焼けたよ」


「ありがと」


 専業主婦のママは、いつも少しウザいくらい優しくて、これが通常運転だ。


「マジでヤベえかもな…」


 テレビを見ながらパパが呟いた。

 テレビでは連日、隣国で拡散した人工ウィルスの話題で持ちきりだ。


「ロックダウンなんかしたら、この国は終わりだ。流行ってんの知ってたくせに観光客バンバン入れやがって、今更手遅れなんだから放っておきゃいいんだよ!」


 言い返してこないテレビに、いつも悪態をついてるパパの小市民っぷりは残念だが、言っている内容には賛同できる事も結構多い。

 でも、反応すると面倒くさいから、いつも聞こえないふりをしている。

 因みに我が家の朝食はみんなパンなのに、パパだけは毎朝ご飯を食べている。ママにしたら迷惑な話だ。


「日本人の朝はコメと納豆と決まっている」


 というのがパパの持論だ。昭和かよっ!でもそんな所が、ちょっと可愛い。言わんけど。

 朝食を食べ終えたら、歯を磨き、髪を梳かして、制服に着替えたら、さあ、登校だ。


 ◇◆◇◆◇


「行ってきまーす」


 通学路にはランドセルを背負った小学生の姿がチラホラ。自分以外に中学生の姿はまだ見えない。

 登校は小学生の時から早いほうだ。

 1番乗りを狙っているわけではないが、まあたいていはクラスで1番乗りだ。


「通学路の桜はもう、だいぶ散っちゃったな」


『藤ヶ崎市立浜砂中学校』海まで歩いて10分程の場所に位置する。これが、私の通っている中学校だ。

 校門を入ってすぐ脇の掲示板に、ちょうど若い男の先生が新しいクラスの発表用紙を貼り出し終えたところだった。


「おはようございます。先生」


「あっ!おはよう、橘さん」


 見たことはあるけど、名前は知らない先生が、嬉しそうに挨拶を返してきた。

 あいさつは先手必勝だ。初対面の人の心を掌握するのに、これほど簡単な方法はないだろう。

 先に挨拶をされてしまったら負けと心得ておくがよかろう。


「橘さんは2年1組だね」


 掲示板を指しながら教えてくれた。


「あら、もしかして、先生が2年1組の担任なんですか?」


 全校生徒約600人全員の名前と新しいクラスなんて覚えているわけはないから、推測して言ってみた。


「いや、僕は1年3組の受け持ちなんだ…」


 少し残念そうな表情を隠しもせずに、クラスまで言ってくるのはアピールも含めてだろうか。


 しかし、受け持ちが別の学年の先生にさえ、私の在籍クラスの確認をさせてしまうとは、自分が思っている以上に、私の去年1年間の、この学校における影響力は大きかったようだ。

 おそらく、この学校の全生徒、全教師は、私のことを既に認知してくれていることだろう。


「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます。探す手間が省けたから、もう教室に行きますね」


 そう言って、微笑みかけながら教室へ向かった。


「去年の1年生を担当していた先生達が、口を揃えてベタ褒めしていた、橘ほのかさんと初めて会話しちゃったけど、うわさ通りのとってもいい子だったなぁ…」


 後姿を眺めながら独り呟く、このモブキャラ感満載の若い男性教師も、数年後に、橘ほのかが組むバンドの、熱狂的ファンの一人となるのであった。


 ◇◆◇


『2年1組』「まあ、予想どおりかな」


 浜砂中は1学年に6クラスある。

 基本的に1組ってのは学年主任が受け持つもので、クラス替えの方法はその学年の担任達が、好きな生徒を順番に一人ずつ選択して決めて行く、野球のドラフト会議のようなものらしい。

 だから、誰が学年主任になろうとも、1組の担任はまず始めに学年で1番の人気者である、この私を指名するに決まっているのだ。

 因みに小学の5年と6年の時も1組だったし、きっと中学の3年も1組になるのだろう。


「朝日が燦々、サンサン3組なんて、まさしく3位以下の三下クラスだしっ!」


 周りに誰もいないので、独り言が口から出た。


 余談だが、このドラフト方式の為に、体育教師が担任のクラスはたいてい体育祭で優勝するし、音楽教師が担任のクラスは合唱コンクールで優勝するのであるらしい。知らんけど。


『2年1組』の教室に入ると、黒板に席順が貼り出されていた。


「あたしの席は…」ベランダから3列目の一番後ろの席だ。


「よしっ!ベスポジだ」


 指定された席に着き、辺りを見渡す。


「新学期の教室はやっぱり殺風景だな」


 何も掲示物が貼られていない教室を見渡しながら呟いて、それから、昨晩考えた、今年一年間の計画を頭の中で反芻してみる。


 先ずは今日の帰りのホームルームで行われるクラス委員決めである。

 全員一致で、私がクラス委員長に推薦されたい。

 そしてクラスのみんなから、とりあえず1学期の間は、甘んじて『委員長』と呼ばれてあげよう。

 中間テストと6月の体育祭は軽く流して、1学期の期末テスト後に毎年行われる生徒会役員選出選挙。

 ここが今年最大の山場である。

 絶対に生徒会長に当選したい。

 そして夏休み中は、清掃活動や地域のボランティア活動など、一般生徒は知る由もない、生徒会の仕事に勤しむだろう。

(この人知れず感が何とも言えない優越感なのだ)

 2学期になったら私の二つ名は『委員長』から『会長』へと昇格するのだ!

 ぐわっはっはっ!

 そして、文化祭と林間学校、修学旅行など、卒業までの全てのイベントを、この私が全て取り仕切って、私の可愛い一般生徒みんなに、最高の思い出を送ってあげたい!

 その為には、学校のルールに黙って従ってばかりじゃなくて、生徒会が主体となり、生徒たちの希望を先生たちに認めてもらう働きをしなければならない!

 これら全ての計画の第一歩として、今日はとても重要な一日だ。

 まずは、委員決めまでの短期間に、出来るだけ多くの新しいクラスメイト達に、好印象を与えなくっちゃ。


 そんな事を考えていたら、ガラッと引戸が開く音と一緒に、見知った女子が入ってきた。


「やった~!ほのかとまた同じクラスだ〜」


「ラッキー!南美ちゃん、コトヨロー!」


 幼稚園から幼馴染の清水南美。カースト上位の子だ。ホントにラッキーだ。

彼女はこの学校最大の部員数を誇る吹奏楽部所属で顔も広いし、私の友達だから、これでクラスの女子の1/3の票を確保したも同然だろう。

 そういえば、今朝はこれまでに二度もクラス名簿を目にする機会があったわけだが、他のクラスメイトが誰になるのか、他の生徒の名前を全く把握していない事に、今さらになって気が付いた。


「ほのかの髪はいつもサラサラだなぁ」


 南美は、いつも私の髪を撫でながら褒めてくる。


「毛が細くって羨ましいなぁ」


 私の髪は、バレエの時に髪を結うことができるギリギリくらいのセミロングで、南美が言うように、癖もなく、黒くてサラサラのストレートな髪質を自慢に思っている。

 南美はフラダンスをやっていて、髪を長く伸ばしているが、毛は太いほうなので、少し気にしているようだ。

 南美と春休みの出来事などを少し話すと、すぐに南美の恋バナが始まった。

 ---この子は本当に恋愛脳だなぁ。---

 私はあまり恋愛に興味がない。

 友達の恋バナを聞いていても正直つまらないので、いつも聞きながら適当に相槌を打って受け流している。

 それがいいのかわからないが、私が聞いてもいないのに、みんな、自身の秘密をべらべらと喋ってくる。


「でもみんな安心してっ!聞いたことはほとんど覚えてないからっ!」


 そんなことを考えながら南美の話を聞いていると、他のクラスメイトも一人二人と入ってきたので、南美の恋バナはそこで終了した。


 私は、見知った顔には、大げさなアクションで手を振り、手短に挨拶を済ませ、初めての人には飛び切りの笑顔で「おはよう!」と声をかけてまわって行った。


 ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇


 私は鈴木莉奈。女子バスケ部員だ。


 去年の新人戦では1年生で唯一、ベンチ入りを果たしたから、一応、同学年の中ではエースだ。

 今年の秋季大会予選までには、絶対に3年生に交じってスタメンに入りたい。

 そんな野望を胸に秘め、校門横に貼り出されているクラス表を見ようとした矢先、


「あっ、莉奈ちゃんおはよー」

 と、同じ女バスの山田真奈美が声をかけてきた。

「莉奈ちゃんとミカちゃんとウチの3人、同じ1組みたいだよー」


「3人だけ?他には?」

 と、私。勿論、女子バスケ部員のことだ。


「1組は、3人だけだったみたいー」


「チッ!少ないな…でも、ミカがいるなら、まぁ良しとするか」


「莉奈ちゃん、ウチは戦力外ってことー?ひどーい!」


 お道化た調子で真奈美が言う。この子はいつもこんな調子だ。

 明るくて、嫌みがない。素直で、ちょっとイジラレキャラで、男子受けする可愛い系女子だ。


「あっ、ミカちゃんだー!」


 真奈美の視線の先から、スラっと背の高い、中村ミカが近づいてくる。


「おはよっ!ミカちゃん」真奈美が言う。


「ぅす」ミカはいつも、口数が少ない。


「ミカ、1組だってよ。あとウチと真奈美の3人だけ」

 私が言うと、


「ふ~ん、莉奈が一緒なら、まあいっか…」

 嬉しさを隠した表情をしてミカが答えた。


「ひどっ!ミカも莉奈ちゃんと同じこと言うのかー!ウチはモブキャラだったのかー!」


 イジられている真奈美が嬉しそうに言うから、ついついからかいたくなってしまう。


「真奈美はモブなんかじゃないよ。バスケ部以外ではね」


 私が言うと、ミカも追い打ちをかけて


「そうそう、真奈美は男子だけにはモブキャラじゃないよ」


「それをモブキャラと言うんだー!」wwwwww


 実際のところ、真奈美の容姿と言動は、男子からはモテるが、女子からの受けはあまりよろしくない。

 但し、男子の前でだけ可愛い子ぶって、裏では本性出すようなタイプでは無く、単純に素で甘えたがりな性格なだけなのだ。

 だから、色恋のやっかみで、小学校の頃は女子からハブられていたらしい。

 それもあってか、意外と打たれ強い性格をしている。


 そして長身のミカもクールビューティーで、街中では男子高校生などの年上から声を掛けられたりもしているのだが、口数が少ないことが原因なのか、自分より背の低い同学年の男子達は寄り付かず、バスケ部以外の女子の友達は少ないようだった。

 私は同じバスケ部員として、そして次期キャプテン候補を目指す者として、そんな彼女等を放っておくわけにはいかなかった。

 だから、部の内外で彼女達に積極的に声を掛けて廻り、部内では孤立やイジメが生まれないように努めた。

 そうした地道な努力の結果、この学校の、運動部の中で最多の部員数を誇る女子バスケ部にも拘らず、派閥が生じる事もなく、この私を中心とした、まとまったチームが出来上がっていたのだ。


「橘ほのかも1組だったよ」

 3人で校舎に向かって歩いている最中、真奈美が言った。


「ふーん」2人が応えた。


「莉奈、どうするの?」ミカが聞いてくる。


「どうするって?」


 橘ほのかか…3人とも違う小学校出身だし、同じクラスになったことはない。、、、でも知ってる。

 そう、、、みんな知ってる。、、有名人だ。

 でも、なぜ有名人なのだ?


「橘ほのかって、部活入ってたっけ?」


「生徒会の書記なのは知ってるけど、部活に入ってるのかは知らないね」


「なんかマイナーな文化部に一応入っているらしいよ」


「なんかバレエスタジオに通っているらしいよ」


「ふーん」


 結局3人とも、よく知ってるんじゃないかっ!

 そう、橘ほのかはとにかく目立つのだ。

 というか、目を惹くのだ。

 顔がめちゃくちゃ可愛いとか、そういう事ではない。

 俗世間的な顔の可愛さで言ったら、たぶん真奈美やミカのほうが勝っているのだろう。

 でも、どちらが印象に残るかと言ったら、圧倒的に橘だ。

 真奈美たちは、そこら辺のアイドルグループの中に一人は居そうな、平均的な可愛さなのだ。

 対して、橘ほのかは、一見、純日本的な印象なのだが、暫く見ていると、東欧的な顔にも見えてくる。

 鼻筋がスッと通っており、一重だけど、とても大きな目をしている。

 その瞳に見つめられると、何故か意識が惹き込まれそうになる。

 そして、なにより顔がめちゃくちゃ小さい!

 また、バレエを習っているからなのだろうか、全ての動きが、まるで踊っているかのように見え、一つひとつの仕草がとても優雅で綺麗なのだ。

 そして極めつけなのは、特徴的なその声だ。

 見た目に反して結構な早口で喋り、自信に満ちて断定的な物言いをする。

 笑い声にも特徴があり、遠くにいても橘ほのかがいる場所はすぐに判かる。

 さらに不思議なことに、給食時間の校内放送とか、全校集会の時、橘がマイクを通して喋り始めると、生徒全員が一瞬でお喋りを止め、彼女の声に耳を傾けてしまうのだ。

 その為、全校集会の時などは、先生達に、いつもいいようにコキ使われているようだった。


「まあ、向こうの出方次第なんじゃね?」


 私だって、運動部のカースト上位者として、なめられるつもりはない。

 ソフトボール部とかバレー部の子たちだって、私に対してあからさまに逆らってくることはないのだ。


「ウチらは、莉奈派だからねっ!」

 真奈美の言葉にミカも頷く。


「なにそれー、でも、ありがとっ!」

 素直にうれしかったので、少し照れた。


 ほどなくして教室の前に着いたので、少し気合を入れてから教室に入ると、いきなり、橘ほのかが笑顔で私たちの方へ歩み寄ってきた。


「あっ、おはようー!ウチは、ほのかだよ。3人は女バスの子達だよね?女バス強いから今年いいトコ迄行けそうだよね。がんばってね。応援してるから。今年1年間よろしく!席順は前の黒板に出ているよ。名前は?」


 橘ほのかが早口で話しかけてきた。

 まるで歌っているかのような心地よいトーンの話し方と、心の奥底を覗かれているような眼差しに、少しぼーっとしてしまった。


「リ、莉奈。鈴木莉奈」

 それだけ返すので精一杯だった。


「莉奈ちゃんね。あった!えーと、あそこ。南美ちゃんの後ろだよ」


 と、橘ほのかが座席表を確認してから、清水南美の方を指さした。

 チッ、あいつも同じクラスか、ちょっと面倒くさくなりそうだな。


「そちらの2人は?」


「山田真奈美だよ」


「な、中村ミカ。…だけど…」


「オッケー、真奈美ちゃんにミカちゃんね。ん?スゴっ、ウチら3人席が横並びだよ。やったー!よろしくー!」

 橘ほのかは、本当に嬉しそうに言った。


 二人の様子を見ると、真奈美の顔にも嬉しそうな表情が浮かんでいるし、ミカに至っては、頬が少し赤くなっているように見えた。

 あたし達3人は、有名人に声を掛けられたような錯覚に陥り、一瞬で橘ほのかのファンになってしまったようだった。


 そうこうするうちに、担任の先生が入ってきて、みんなが席に着いた。

 2年1組の担任は、佐々木というサッカー部顧問の男性教師だった。

 1年から繰り上がった教師なので、1年生の社会科の授業では、全員が習っていた先生だ。

 先生がとりまとめのない自己紹介と2年生の心構えなどを一通り喋り終えると、始業式のために、全員が体育館へ向かうよう指示された。


 ◇◆◇◆◇


 クラスの皆がダラダラと体育館へ向かって歩いている。

 少し前のほうで、橘ほのかが、サッカー部の男子数人に囲まれて、歩いているのが見えた。

 時折、橘ほのかは男子の足を軽く蹴り、蹴られた男子は嬉しそうにしていた。


「意外と気さくなコだったな」

 珍しく、ミカが話題を振ってきた。


「ウチも思った。もっと近寄りがたい子かと思ってた」

 少しビビったことを悟られないよう、強がって言った。


「でもあれ見てよ、ビッチかもよ」

 珍しく真奈美が対抗心を露わに言う。


 おそらく男子に囲まれている光景が気に入らないのだろう。


「でも、なんかあれ、男子達、橘を女として見てない感じじゃね?男子同士でふざけあっているようにしか見えないんだけど?」


 時折、「っざけんなよっ!」とか、「おいっ!」と言う、橘ほのかの声が聞こえてくる。

 暫くすると今度は、男子の頭を叩き始めた。


 3人は、その光景を唖然と見ていた。

 サッカー部は、男子バスケ部と、男子のヒエラルキーを二分する存在だ。

 そんな彼らの頭を気軽に叩くなんて、私にだって出来っこない。


「なんか…確かに、橘さんって不思議な雰囲気あるけど、女っぽさはあんま感じないね」

 安心した表情に変わった真奈美が言った。


 真奈美は、サッカー部に気になる男子がいるのかもしれない。


「それな。なんか、女子って感じがしないっていうか、ウチや莉奈より背だって低いのに、なんか頼りがいがある感じがするっていうか…」


 おいおい、ミカのほうがメスの顔つきになって橘ほのかを見てるじゃないか。

 でも、かくいう私も、さっきの会話の一瞬で橘ほのかに対しての対抗心みたいなものは完全に消えていた。


「そういえば、始業式が終わったら、クラスの活動委員決めするでしょ?やっぱ、クラス委員長は莉奈がいいんじゃない?」

 真奈美が話題を変えてきた。


「えー、クラス委員長って、忙しいんでしょ?ウチらバスケに集中したいから、楽な係のほうが良いっしょ」


 内申点にもつながるらしいから、朝の段階では、やっても良いかなと思っていたが、橘ほのかと会話して、そんな気持ちは無くなっていた。


「それに、1組にはウチよりも適任な子がいるみたいだしね」


「莉奈がそういうなら、推薦するのやめておくよ。やっぱ、橘さんかぁ」


 真奈美が言うと、ミカが嬉しそうに応えた。


「うん。あたしもそう思う」


 やはり、ミカは既に橘ほのかのファンになってしまったようだ。

 くそっ、なんか複雑。


 ◆◆◇◆◇◆◆


 僕は太田俊。


 やった!1年生に続き、2年生でも橘さんと同じクラスになれた。嬉しい!神様に感謝したい。


 僕が通う浜砂中は、全国の住みたい街ランキング上位である藤ヶ崎市のなかでも、さらに人気の高い海側エリアに位置している。

 裕福な家庭環境の子が多く、公立中でも、そこそこにレベルが高いのだ。

 だから、意外と中学受験する人は少なく、僕の周りの級友もそのまま地元の公立中学に進んでいた。

 そんな浜砂中は、4つの小学校の生徒が一部づつ寄せ集まる学区になっている。


 橘さんとは中1で初めて同じクラスになったが、僕とは別の小学校の女子だった。

 最初の中間テストでは、僕が1番で、橘さんがクラスで2番の成績だった。

 それをきっかけに、僕は橘さんからよく声を掛けられるようになった。

 身体もそれほど大きくはなく、卓球部に入部し、気の合う友達も数人はいるが、クラス内でのヒエラルキーは、決して高いほうではなかった。


 橘さんは、そんな僕にも、カースト上位の男子達と同等に接してくれた。

 特に試験前になると、テスト範囲の予想や、問題の解き方などで、ほかの男子よりも会話する時間が増え、そんな瞬間は優越感を感じた。

 橘さんは、全然女子っぽくなく、会話もかなり砕けた口調だったので、初めの頃は、彼女と会話することよりも、サッカー部やバスケ部の男子と混じって会話することのほうが緊張した。

「俊!」

 と呼び捨てにされ、小間使いを頼まれることも多かったが、そんなときも、喜びを感じていた。


 そうこうして、1年の2学期が終了し、冬休みに入った頃には、僕は、橘ほのかさんに恋していることを、自覚していた⋯



 橘ほのかを慕う、このハイスペックな少年、太田俊であるが、残念な事に、彼の想いが成就することは、この先、ただの一度も訪れる事は無かった。

 そして彼もまた、数年後に、ほのかのバンドの熱狂的ファンのうちのひとりになるのであった。


 ◇◆◇◆◆◇◆◇◆◆


 田中竜司は所謂、問題児であった。


 小学校時代から、クラスメイト達とは度々トラブルを起こしていた。


 身長は同年代の子より頭ひとつ飛び出ていて、ガッシリと引き締まった体躯をしていた。

 力も強く、体育教師以外の教師では、彼を押さえつける事は出来ない程であった。

 とにかくジッとしている事が苦手で、感情が増幅し始めると、爆発しそうになる。

 爆発しない為には動き回るしか無い。とにかく走る。

 そんな自分の事を、周りの奴等は煙たがっている。

 そんな周囲の感情だけは、ヒリヒリと肌で感じてしまう。


 小学校から始めたサーフィンをやっている時だけは、気持ちが楽になれた。

 波に揺られながら、次のセットが来るのを待っている時だけは、心静かに落ち着いていられるのだ。

 ウネリが激しい波をパドルアウトする時も、無心になれる。

 ひとりでやる、波乗りは、気は楽だけど、でもやっぱり寂しい。

 友達とも関わっていたい。

 今日こそは、クラスメイトと楽しく過ごせるかもしれない。

 そんな期待を胸に、毎日学校へは通っていたが、学校では、いつも独りでいる事が多かった。


 中学に入って、バスケ部に入部した。

 身長が高い自分に有利な競技だし、結構激しく動き回るから、体力も発散出来るし、何より団体競技だから、友達が出来るかもしれない。

 そんな期待が持てたからだった。


 しかし、竜司のそんな淡い期待はほど無く破れた。

 背が高く、ガタイも良く、身体能力も高いから、顧問の教師が期待して、入部早々に上級生の練習に参加させてみたのだ。

 その練習中に体が激しくぶつかり、上級生に怪我をさせてしまったのだ。

 特に反則をした訳でもなく、お互い懸命にプレイした結果の出来事だから、自分に非はないのだが、周り全員が、謝れと言ってきた。

 納得が出来ないから、わざとじゃないし、自分は悪くないと言いたかったが、うまく言葉にできなかった。

 更に詰め寄られたので、感情が抑えられなくなってしまい、気がついたら全員に殴りかかっていた。


 教師もいる、部活中の出来事だったので、問題にはならずに揉み消されたが、当然、上級生からは反感を買い、同級生からは煙たがられ、顧問の教師からは見放されてしまった。


 部活はその事件以降、行かなくなった。


 淡い期待も早々に破れてしまった竜司の中学デビューだった為、中学校でも独りでいる事が多かったのだが、GWが明けて、体育祭の競技出場者を決める、1年4組のホームルーム中に、竜司にとっての大事件が起こったのだった。


 ----〇--〇----


 教壇に立ったその女子生徒は、いきなり


「では、今から全員でオーディションをしよう!」

 と言い放った。


 ホームルーム中なので、担任も渋ったが、生徒は皆、彼女の呼びかけに賛同し、教師も従わざるをえないようだった。


 竜司も彼女の呼びかけにビクッと反応して立ち上がっていた。


 校庭に1年4組の全員が集まって、その女子生徒が、その場全てを仕切っていた。


「じゃあ先ずは、全員横並びで100m走をしよっか!先ずは男子からね。先生!ほらっ、ボヤボヤしてないでスタートの合図出し準備して!」


 男子生徒が横一列に並んでいる最中に、彼女は他の女子生徒数人に記録係りをするよう指示を出していた。


 スタートの直前にその女子が男子生徒全員に向けて言った。


「いい?全力を出し切るんだからね?手を抜いたら許さないからね!特に、そこのデカいの!」


 最後に俺の方を見て、ニヤリとしながら言った。


 その瞬間、身体中に電撃が走った。

 手を抜こうと考えていたから、心を見抜かれたようで怖くなった。

 そして、スタートの合図で、まさしく全力で走った。他の男子生徒も同じく懸命に走っていた。


 同じ事を女子も行い、今度は指示された男子が記録を取っていた。

 俺は記録係りには一度も選ばれ無かった。


 次に腕立て伏せと反復横跳びをさせられた。

 このオーディションをテキパキと指示を出して取り仕切っていた彼女だが、彼女自身は、一度も競技には参加しなかった。

 それを不思議に思って見ていたが、結局、誰もそのことを指摘する生徒はいなかった。


 教室に戻ると、今の結果を元に、彼女は数人の生徒の意見を確認してから、競技メンバーを発表し始めた。

 みんな、オーディションの結果は大体分かっていたし、発表する時に、それぞれの理由も付け加えていたので、彼女の結論に異を唱える生徒は一人もいなかった。


 俺は、騎馬戦の大将と最終リレーの代表に選ばれた。


 ホームルームが終わり、帰ろうと立ち上がった所に、例の彼女が真っ直ぐ俺の方に近寄って来た。

 立ち上がる途中だったので、ちょっと変な体勢で固まってしまった。

 その隙を突くように、彼女は俺の脇腹に素早い突きを一発入れて、それから言った。


「田中竜司!期待してるから頑張れよ!」


 俺は唖然としてしまい、咄嗟にこう返してしまった。


「うっっ、ワン!」


 ソレを見ていたクラス全員が大爆笑した。


「ワンって、ほのかの犬かよー!」

 男子生徒が言って、更に爆笑が起きた。


 不思議と不快感は無く、寧ろ照れてしまった。

 普段の竜司なら、こんな事されたら絶対に怒り狂うはずなのに、橘ほのかの前では大人しくなっている様子を見て、安心したのか、バスケ部の男子も数人近寄って来た。


「今日から竜司は、狂犬じゃなくてほのかの番犬だな」

 バスケ部の誰かに肩を叩かれた。


 不思議なのは、体勢を崩していたとはいえ。女子に一発食らってしまった事だ。勿論、女子の突きだから、パワーは無いのだが、ノーモーションで繰り出された突きのスピードはピカイチだった。反応が全く追いつかなかった。

 更に、彼女と目が合った瞬間、身体が動かなくなってしまった。

 本能で一瞬畏怖してしまったのだ。

 だから、怒りの感情は一切生まれず、心の底から服従してしまった。


 黒板に最終リレーのメンバーが書き出されている。

 女子のアンカーは自分がやると言ってたっけ。その事についても何故か誰も異論は挟まなかった。


 黒板の一番左に、他の名前より少し大きめに、彼女の名前が書かれていた。

「『橘ほのか』か、、、番犬上等だぜ…」

 竜司は呟いた。


 ----○--○----


 体育祭の最終リレーは全校合同で行なう。

 各クラスで男女4人づつ選出され、1年から3年の同じ組がひとつのチームになるのだ。

 12人でバドンをつなぐから、アクシデントもしばしば起こる。


 橘ほのかは、1年生にも拘らず、上級生との合同練習で、いきなり提案をした。


「先輩の皆さん、確実に勝つために、走る順番を変えませんか?」


 上級生と一度揉めた竜司は、ヒヤヒヤしたが、以外な事に、上級生達は、ほのかの意見を受け入れた。

 ほのかが言うところのオーディションを行なった結果、4組チームの中では、上級生よりも、竜司が一番足が速かった。

 当然、自分が最終アンカーになるのだと思ったら、ほのかに

「竜司は、ラス前だ。」と、言い放された。

 そして、最終アンカーは自分が務めると言い出したのだ。

 さすがに、みんなこれには異を唱えたが、彼女はこう言って自分の意見を押し通してしまった。


「いいですか?先輩方、確かに最終走者は重要ですから、他の5チームは、一番足の速い3年男子をアンカーにする事でしょう。ラス前で混戦になっていた場合、いくら脚が速くて、一年生としてはガタイが大きい田中君でも、3年男子の中に埋もれてしまえば、彼らを追い抜く事は、容易でありません。だから、ラス前で先頭になってさえいれば、あとはこの中で一番身体の細い私がアンカーになり、逃げ切ってしまえばよいのです!」


 ん?、、、

 なんだか尤もなような気もするけど、綻びが出そうな理屈にも聞こえ、彼女がアンカーになる事を訝る女子も何人かいたが、そのやり取りを聞いていた一人の先生が面白がって、

「なるほど!確かに一理あり!」と言うと、それで決まってしまった。


 結局、その体育祭では、一年生男子の騎馬戦で竜司が1位を取り、最終リレーでは、橘ほのかが予告した通り、華奢な一年生女子が、アンカーとなり、先行逃げ切りを、演じて魅せてしまったことで、学校中が大いに盛り上がり、4組チームの「みどり組」が優勝したかのような大騒ぎになったが、総合得点では結局2位に終わってしまった。

 この体育祭を通して、竜司はクラスの皆とも徐々に馴染んでゆき、多少のトラブルは生じたものの、その後は、概ね楽しい1年間を過ごした。

 そして、バスケ部にも復帰するようになったのだ。


 また、竜司に手を焼いていた教師達には、

「田中が暴れそうになったら、橘ほのかに任せれば大丈夫」

 という認識が浸透し、また、学業成績もそこそこ上位であり、授業態度も優秀だった為、一年生を受け持つ教師陣の、橘ほのかに対する評価はどんどん上がり、職員室でも度々話題となり、校長以下、全教師達が橘ほのかを意識するようになっていった。


 ---◆---◆---


 掲示板を見て、『橘ほのか』の名前を一番に見つけた。

 だが、2年1組に竜司の名前は無かった。

 何度見返しても無かった。

 暫く呆然と立ち尽くし、漸く2年4組の中に自分の名前を見つけた。

 始業式が終わり、居ても立ってもいられなくなり、休み時間に1組の様子を覗きに行った。

 橘の席の周りを数人のサッカー部と女子たちが取り囲み談笑していた。


「始業式の初日で、もうそんなに仲良くなってんのかよっ!」


 様子を廊下から覗き見ていた竜司は、悲しい気持ちになり、自分のクラスへ戻ろうとした矢先にほのかと目が合った。


「おっ!竜司!どしたン?」

 と言って、ほのかに手招きされた。


 おずおずと他のクラスに入って行くと居心地の悪さを感じたが、


「これ、竜司。みんな知ってる?」


 と、ほのかが周りに言うと、サッカー部の奴らが緊張した面持ちであいさつしてきた。


「どもっ」


「おう」


 と、ぎこちない挨拶を交わした。


 竜司と同じ小学校出身だった莉奈とミカは、スーッとその場から離れていった。


 すると、その様子を見ていた男子バスケ部の数人がチャンスとばかり、割って入ってきた。


「あれ?竜司君じゃん。どうしたの?」


 多少大人しくなったとはいえ、今でも部活中に、時たまトラブルを起こしてる、狂犬竜司。

 その飼い主と噂されて名高い、橘ほのかと、親しくなるきっかけをずっと伺っていたのだ。


 ほのかはほのかで、「これぞ誘い受け」などとほくそ笑みながらバスケ部男子に話しかけた。


「竜司と知り合いってことは、みんなはバスケ部?」


「うん、そうだよ」


「なんだ、バスケ部って、イケメン揃いって聞いてたけど、そんなでもないじゃん。安心したー。ウチ、イケメン苦手なんだよねー」


「それって、褒められてんの?貶されてんの?」


「イヤ、褒めてんに決まってるっしょー」www


 橘ほのかを、サッカー部と男子バスケ部と竜司で取り囲み、暫く会話していた最中にバスケ部の一人が聞いてきた。


「サッカー部ってさ、なんで橘さんと最初からそんなに仲良いの?」


「いやー、橘さんって、生徒会の仕事してるじゃん、で、各クラブの代表と生徒会って、定期的に打合せしてるんだけど、サッカー部の先輩たちって、面倒がって、俺らに押し付けるんだよ。だから、橘さんには色々世話になったり、相談に乗ってもらったりしてんだよねー。あと俺ら、バスケ部の3年とも、たまに喋ってるよ」


「そうそう、こいつらパイセンのパシリだからねー。だからウチが、指導してやってんのー」GWWWW


 この会話を聞いて、竜司は先ほどの疑問に得心した。


 そしてその周囲で彼らの会話に聞き耳を立てていたクラスメイト達は、自然とこう呟いていた。


「橘ほのか、見た目に反して完全な姉御じゃん」


「姉御だ」


「アネゴ…」


 質問した男子バスケ部がそれを聞いて、


「じゃあ、橘さんは、もはや生徒会長だね。会長って呼んでいい?」


 と言い出すと、周りも


「おっ、いいね。俺も会長って呼ぼうっと」


「会長!」


「ウチは、まだ書記だよ!バカっ!」


「まだねー。でも、どうせもうすぐ会長になるんだから同じだよ」


「カイチョー」wwww


 そしてその日の帰りのホームルームでは、あっという間に、満場一致で橘ほのかが2年1組の学級委員に決定した。

 すると、ほのかはそそくさと教壇に立って、他の係や委員の役割を、勝手にどんどん割り振っていった。

 役割を発表するときに、ほのかはその生徒の長所を、必ずひとつ付け加えたうえで、

「だから○○係には○○さんが適任だと思います。」

 と、していったから、誰もがやる気になったし、他の係の理由を聞いてもなるほどと思ったから、異論も出ないで、あっという間に全ての委員が決まってしまった。


 その日の職員室は、またもや、橘ほのかの話題で持ちきりになった。


「いやー、凄いのなんのって、感心させられましたよ。ほんと、橘ほのかの指導力には、我々教師も見習うべきところが多々ありますね。時間がかかってしまう、始業式の帰りのホームルームが、過去最速で終了しましたよ。」


 この日最速で職員室に戻ってきた、2年1組の担任である佐々木健太は、他のクラスの担任が戻ってくるたびにこの話を繰り返していた。


 するとそこへ、校長と教頭の2人が、浮かない顔をして入ってきて切り出した。


「えー、先生方、少々よろしいでしょうか。先ほど、教育委員会から通知が来まして、明日以降の全国の教育機関の対応が文科省から指示されました。これによると…」


 ◆◆◆◆---◆◆◆◆


 私、橘ほのかの、中学2年生の初日は、上々の成果が得られました。

 明日からの学校生活がとても楽しみだなぁ。

 そんな、浮かれた気分で就寝した。


 zzzzzzzz・・・・


 翌朝、いつも通りに目覚めて、階段を降り、リビングに入ると、ママが唐突に言った。


「ほのか、今日から暫く、学校行けないって」


 後ろからパパが嬉しそうに言い足した。


「パパも今日から会社に来るなってさ。今朝になって連絡してきたけど、昨日、全社員に、パソコン持って帰るように通達してたから、きっとトップ連中は、昨夜のうちに、国から通達があって、こうなることを知っていたな」


 いやいや、パパはしょっちゅう冗談を言うから、担いでるだけかもしれない。


「ママ、それホント?エイプリルフールはとっくに過ぎてるから、シャレになんないんだけど」


「さっき、LIMEで連絡が回ってきたの。ほら。」


 テレビでアナウンサーが繰り返していた


「本日、日本政府はロックダウンを発令しました。不要不急な外出は控え、自宅から出ないようにしてください」


 私は、何か、とても大事なものが、ガラガラと音を立て、崩れ落ちているかような錯覚を感じていた・・・・




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