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8.しばらくしてから、次は使者の彼女を呼び出しました

 部屋の入り口に設置してもらった運動器具は、2~3回使ってみたが、すぐに使わなくなった。


 今更、何のために面倒くさい運動をする必要があるのか。


 そして、好きなだけゲームをしたり、ネットで動画を見ながら性欲解消の道具を使っているうちに、半年以上が過ぎていった。


 最初のうちは、両方の世界のニュースのような情報を追っていたが、自分には何も関係ないのだと思うと、やがて、ほとんど見る気がしなくなった。


 一度、城の玄関の扉をコッソリと開けてみたが、ネットで見たように、周りには荒れ地しかない様子で、壁のような物体に跳ね返されて外に出られなかった。


 壁に跳ね返されたらすぐに使用人が来て注意された上、わざわざ荒れ地しかないような外に出て、危険な目に遭うのも嫌だったので、諦めてしまった。



 その後、ゲームをしたり、映画やアニメを観ても、最初の頃のような楽しさを感じなくなってしまった。


 無人島でそういうものを見続けているような感覚とでもいうのか。

 こんなことをしたり、観ていて、何になるのだろうという感覚。


 こういう娯楽は、つまらない人生だろうと、たとえ間接的にであれ、自分自身の人生に何らかの形で結びつくかもしれないという期待や想像ができるからこそ、楽しいのかもしれない。


 しかし、ネットでやっているニュースも、ゲームも、映画やアニメの舞台も、何一つとして自分の人生とは関係が無いと思え、遠く離れた星で生きている宇宙人たちのままごととしか思えなくなってしまったのである。


 それは、単にオナニーのし過ぎだからかもしれないが、とにかく、部屋のパソコンで遊んでいるのに飽きてしまった。



 使用人のパットを呼び出しても、使用人としての仕事と無関係な行為――特にエッチなことは絶対にお断りと言われ、繰り返し呼んでいると、丁寧ではあるが冷淡な応対になってきたので、必要以上に呼ぶ気がしなくなった。



 ★



 ある日、起き上がるのも面倒なので、ベッドに寝転がりながら、この世界の実況中継のような番組を視界に入れていると、魔王の手下が倒されたという報告がされていた。

 魔王の四天王の一人の部下である第八魔人の手下を、勇者のパーティが討伐したのだという。


 よくわからないし、正直どうでもいいと思いながら画面を眺めていると、この世界に俺を招いた使者の彼女――エメラルドが画面に映ったので、身体を起こして見てしまった。


 すると、さわやかなイケメンと並んでインタビューに応じており、番組の盛り上がりの場面で、あろうことか、エメラルドは爽やかメンの肩に抱きつき、キスをしたのである。


 そして、パーティのリーダーである男と結婚することになったと述べ、手の薬指につけた指輪を見せ、番組で祝福されていた。


 笑顔を浮かべる彼女は、最初に会った時より更に綺麗きれいになっていた。



 その瞬間、全てが無関係で遠く離れた現実の世界が、急に目の前に引き戻されたように感じられたのである。


 俺はベッドから起き上がり、風呂に入って着替えると、パソコンを使って彼女を呼び出していた。



 ★



 玉座に座って待っていると、やがて目の前の空間が白く光り、エメラルドが立っていた。


『……お久しぶりですね。調子はいかがですか』


 彼女は、そんなことを言ってきたのである。


「実況中継の番組で見ました。ご結婚されることになったのですね。おめでとうございます」


 長く誰とも話していなかった俺は、他人と話す感覚がつかめず、そんな返答をしていた。


『……。ありがとうございます。大変でしたが、ようやく成果が出たので、区切りをつけようと思い、結婚することにしました』


「……」


『……』


「ところで、あの爽やかなイケメンが結婚相手ですか?」


 そして、ぶしつけなことを聞いてしまった。


『……中継の番組で隣にいた彼が、相手になります」


「エメラルドさんは、この世界に来る前、俺に何でもしてくれると言いましたが、それは今でも有効なのですか」


『……』


「……」



 しばらく、沈黙が続いた後、彼女は答えた。


『あれは、あなたがこの世界に来てくださる前の話になります。

 今はもう、何でもという訳にはいきませんが、何かお望みですか』


 俺の心を読めるという彼女には分かっているだろうに、改めてそんなことを聞いて来たのである。


「……俺は、さびしかったのです。この世界に来れば、あなたのような理想的な女性がつきあってくれて、もしかしたら幸せになれるかもしれないと思ったのに、気がついたら、俺はひとりで、あなたは爽やかメンと結婚して幸せで」


『……』


「いいじゃないですか! それなら俺にも、少しくらいヤラせてくれてもいいじゃないですか!」



 そして、自分でも訳がわからないことを言いながら、玉座から立ち上がり、目の前にいるエメラルドにつかみかかってしまったのである。

 だが、俺は指一本触れることはできず、彼女の身体をすり抜けて、床に突っ伏してしまった。


 その後、俺はよくわからない力で起き上がらされ、玉座に座らされた。

 何かロープのようなもので身体を縛られているのか、身体が動かない。


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