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5.異世界に転移しましたが、俺は建物の外に出るなと言われました

 彼女の世界へ行くことを了承した瞬間、目の前の空間が光り、俺は、玉座ぎょくざのようなイスの前にかれた、赤いじゅうたんの上に立っていた。


 そして、彼女が来て、説明をしてくれた。


『私たちの世界へお越しいただき、ありがとうございます。

 この建物は、あなたのために用意された辺境の小さなお城で、この玉座は、あなたが座るために設置したものです。


 玉座の後ろにある扉から、あなたが生活するための部屋へ行くことができます。

 部屋にはベッドや机などの家具があり、1日に3回、お城の使用人が、あなたの食事をお持ちします。

 部屋に入られたくなければ、入り口の扉に札を掛けていただければ、使用人は部屋に入らず、入り口にお食事を置いておきます』


 彼女は俺の心が読めるだけあって、周りを見る限り、俺と彼女以外の余計な人物は居ないのだった。

 

 たとえ使用人だとしても、常に近くに誰かが居ると落ち着かず、ゆっくりできない。


 与えられた室内を見ると、以前住んでいたアパートの汚い部屋とは違い、清潔で、俺にとっては、ちょうど良い広さの部屋だった。


 部屋の中にある扉を開けると、お風呂やシャワー、トイレがあり、机にはパソコンまで設置されている。


『このパソコンには魔法が掛っているので、私たちの世界だけではなく、あなたが住んでいた世界のインターネットにも接続でき、自由にネットを見ることができます。

 ここで、ゆっくりとお過ごしいただければ、それだけで十分です』


「しかし、この世界が滅びそうだというのなら、何か手助けをしようか?」


『いえ、そのような必要はありません。

 あなたが居た世界とは違い、毎日の仕事はありませんので、お城の中で、ゆっくりとお過ごしください』



 それでは、彼女はどうするのかを聞くと、この城を出て、この世界の王へ報告に行き、それから自分の生活に戻るのだという。


 俺は思わず、言ってしまった。


「その……、この世界で、あなたが俺のお世話をしてくれる訳ではないのか?」


『……』


 少しだけ嫌そうな顔をし、黙った後、彼女は続けた。


『いえ、私には、他の仲間の元へ帰り、この世界を立て直す仕事があるのです』


「では、もう二度会うこともできず、俺はこの城に居るだけなのか?

 それでは、刑務所に閉じ込められているようなものだ。

 仕事をしなくてよいのはありがたいが、元の世界と大して変わらない!」


『……』


 彼女は顔をしかめ、俺に言った。


『外の世界は、恐ろしい魔物だらけです。

 私は冒険者で、このお城は強力な魔法で守られているので安全ですが、あなたが外へ出てしまったら、すぐに魔物に殺されてしまいます』


「それでは、訳がわからない使用人と、この建物に引きこもっていろと言うのか。

 そんなことなら、外に出られるだけ、まだ元の世界に帰ったほうがマシだ」


『……あなたの部屋のパソコンで呼んでいただけたら、私も参りますから!

 ですので、どうかこの世界に留まり、城の外へ出るのはおやめください。外がどうなっているかは、パソコンから見ていただけたら分かりますから』


「……」


 城の外に出てはいけないというのは不満だったが、まずはここで生活し、そのパソコンを見てみないと始まらないと思い、俺は、一応了承をすることにした。


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