2.「私たちの世界を助けてください」と、美女に懇願されました
自宅のアパートで、そんな祈りを捧げていたある日の夜、部屋の汚い壁が白く光り、そこから美女が出てきたのである。
俺好みの、清楚っぽい美女。
実際に清楚かどうかは知らないが、清楚っぽく見える外見をした美女。
彼女は、薄手の白いワンピースを着ていた。
そして、俺の汚く臭い部屋に気づいて、少し顔をしかめたかと思うと、すぐに穏やかな表情に戻り、俺に頭を下げ、頼んできたのである。
『このままでは、私たちの世界が、大変なことになってしまいます。
どうか、私たちの世界を救ってください。
そのためには、あなたの力が必要なのです』と。
部屋の壁から女性が現れるということに、本来は驚くべきなのだが、なぜか俺はあまり驚きもせず、目の前の現実を受け容れていた。
そして、俺に何の力があるのか、「私たちの世界」とは何か、その世界を救ったら俺にどんなメリットがあるのかと、尋ねていた。
『あなたには、生きているだけで、私たちの世界にエネルギーを与える力があります。
エネルギー不足で滅びかけている「私たちの世界」には、そのエネルギーが必要なのです。
どうか、この世界とは別の次元にある「私たちの世界」へ転移し、そこで暮らしてください。
あなたにとって必要であれば、私は何でもしますから』
――あんたは何者なのか?
『「私たちの世界」から派遣された使者です。
転移の力を持つ者として選ばれ、あなたの元に派遣されました』