南へ
毎日、毎日、怒鳴られ貶され
関わりたくもない奴に笑顔を見せて
それでも人生そんなもんだと
怒り諦め嘆きながら
また、いつもと同じ道を歩いてる。
横を見れば、立ち止まってずっと眺めていたいぐらい美しい景色が
上を見れば、吸い込まれそうなぐらい青い空が
広がっているって知っている。
けど
これから起こる出来事で頭がいっぱいになって
嫌な気持ちになるばかりだ。
サボる口実ばっか考えて
いつも辛さから逃げたいってばかり泣き喚いて
何がしたいんだろう、俺。
いっつも最後は諦める。
何だか映画でよく見る、狭い狭い病室の中に閉じ込められて窓の中から外の世界を眺めている悲劇のヒロインみたいな感覚に陥る。
色んな人がいて、色んな考え方があって
色んな景色がある。
いつか読んだ、星を旅する話みたいに
世界は、この空が続く限りこんなに広く
どこまでもどこまでも広がっているのだろう。
見たい、知りたい
触れてみたい、やってみたい
子どものような俺の魂が窓の外に
腕を必死に伸ばす。
しかし、もう一つの俺である何かが
お金は?家族は?生活は?と
伸ばした腕をいつもいつも振り落とす。
人間、独りじゃ生きられない。
それは人間、生まれたときから生きるためには
誰かと繋がることから逃げられないってことになる。
独りじゃないってことは、寂しくないし楽しいことも面白いことも沢山ある。
けどこういう、
病室の中にしまっちまった大切なものたちは
外に出たくなった時、デカい鎖になって俺に絡みついて離さない。
鎖は、大切な誰かと繋がっている。
でも嫌な誰かとも繋がっている。
鎖を一太刀断ち切ってしまえば、嫌な奴とはおさらばできるけど、大切な誰かの気持ちを蔑ろにしてしまうことになりそうなのだ。
俺の人生、一二を争うぐらい好きなアニメに
こんな台詞がある。
「一度、愛してしまえば、愛されてしまえば、もう二度と忘れることなど出来ないんだよ。」
この言葉に、このアニメに今までもこれからも
助けられたし助けられていく。
でも、同時に呪いにもなってしまった。
皮肉なものだ。
大切なものを大切にしたいと思えば思うほど
愛してしまうほど、愛されてしまうほど
鎖は強く頑丈になっていく。
だからせめて頭の中で考える物語ぐらいは自由であろうと、「小さな子どもが大きな鳥の背中に乗って世界や宇宙中を旅して色んな人に出会って色んな景色を見て悲しかったり嬉しかったり色んな自分を知って、輝き愛される立派な星になる物語」を描きたいと思った。
この物語はいわば
今の自分の人生の理想の物語なのだろう。
理想を描くには、知らないことが
今の自分には多すぎて描ききれなかった。
もっと色んな本に
もっと色んな価値観に出会わなければ
この物語の納得できる結末は描き切れない。
そのためにまず、大切なものを大切な人を
蔑ろにしないといけなくなったのは
自分を蔑ろにしてきた自分のせい。
自分と向き合って来れなかった自分のせい。
大人は、過去を見る生き物とは
よく言ったものだ。
いつの間にか俺もその一人になっちまったよ。
読んで下さってありがとうございます。
旅人に憧れた。