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魔族に育てられた聖女と呪われし召喚勇者【完結済】  作者: 一色孝太郎


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第79話 叙勲

 ボーダーブルクに戻ってくると、すぐにオリアナさんの使いの人が叙勲式典の案内にとやってきた。その人は挨拶もそこそこに、すぐさま式典の案内を始める。


「叙勲式典は一週間後の午前十時より行います。ホワイトホルンからお越しの皆様には従軍記章を、ホリーさんには追加で今回新設された特別な勲章を授与されるとのことです」

「え?」

「ですので、ホリーさんは別途授与式と記念パレードにご参加いただきます。皆様は現在の制服で構いませんが、ホリーさんは儀礼服の着用をお願いいたします」

「儀礼服ですか?」

「はい。叙勲式典の際には必要となりますが、ホワイトホルン衛兵隊のものはお持ちでしょうか?」

「すみません。私、もともと衛兵じゃなくて薬師だから持っていないんです。あの、白衣じゃダメ、ですよね?」

「申し訳ございません。お持ちでないのですと、ボーダーブルクのもののなかでサイズの合うものをお貸しすることになりますが……」


 使いの人は私のことをじっと見て、それから困ったような表情で何かをぼそりと呟いた。


「ほら、ホリー。この間お散歩していたときに作ってくれるって言ってなかった?」

「あ! そうだったね。なんてお店だっけ? カルヴィンさんの……」

「カルヴィン&キャサリン!」

「そう! それ!」


 すると使いの人がホッとした表情を浮かべた。


「えっと?」

「いえ、失礼いたしました。カルヴィン&キャサリンでしたら、私どものほうより連絡を入れておきましょう」

「ありがとうございます」


 こうして案内の人は用件だけ話すと、そのまま立ち去っていったのだった。


◆◇◆


 それから三日後、仕立てが終わったとの連絡を受けた私は町が用意してくれた魔動車に乗り、カルヴィン&キャサリンのお店にやってきた。


「ホリー様、ようこそお越しくださいました」

「カルヴィンさん、お世話になります」


 お店ではカルヴィンさんが出迎えてくれ、そのまま応接室へと通された。応接室にはキャサリンさんがおり、出来上がった儀礼服を用意してくれている。


「ホリー様、ご試着のお手伝いをさせていただきます」

「ありがとうございます」

「それでは、私はここで一旦失礼します」


 カルヴィンさんが部屋から退出すると、私はキャサリンさんに手伝ってもらいながら儀礼服を着てみた。


 儀礼服は白ベースで、あちこちに金のボタンや飾り紐などがあしらわれている。


 上半身はシャツの上にジャケットを着るというまるで男性用の服のような組み合わせだが、きちんと左前になっており、ふんわりとしたレースもついているので女性用であることが分かる。それに対して下半身はふんわりとしたスカートで、いかにも女性らしいシルエットになっている。


 それに首元を飾る控えめなクラヴァットのボタンにはホワイトホルンの町章があしらわれているのも嬉しいポイントだ。


 鏡で自分の姿を確認してみた。そこにはいつもの自分が映っているのだが、なんだか普段よりちょっと大人っぽい感じがする。


「いかがですか?」

「はい。とても素敵だと思います」

「お気に召していただけて何よりです。少々サイズを確認させていただきますね」

「お願いします」


 それからキャサリンさんは袖の丈などを確認していったが、特に問題はなかったようだ。


「あの、お代は……」

「結構ですよ。それに、奇跡の天使様の儀礼服をウチが手がけたってもう噂になっていますからね。実は予約がものすごいことになってるんですよ」

「え?」

「ですから、お代なんていただかなくても十分なんです」


 キャサリンさんはそう言ってニッコリと微笑んだのだった。


◆◇◆


 叙勲式典の当日、私は儀礼服を着て町庁舎のホールにやってきた。すでに私の胸元には小さな従軍記章が飾られている。


 これは軍の業務に参加した人すべてに贈られるのだそうで、前線で戦った兵士から炊事や洗濯をする人まで分け隔てなく贈られるものだ。


 それはさておき、壇上にはすでにオリアナさんが上がっており、すぐに式典が始まった。


 華々しい音楽が鳴り響き、それからひとりひとり名前が呼ばれてオリアナさんの前に出る。


 そしてどんな活躍を評価したのかをオリアナさんが説明し、胸元に勲章を手ずからつけている。


 私の順番は新設された勲章ということで最後になるのだそうで、前線で戦っていた兵士の皆さんが次々と表彰されていく。


「黒天剣武章一級、ブライアン将軍!」


 チャールズさんが言っていたブライアン将軍が呼ばれた。結構なお年の方のようで、かなり白髪が目立ち始めている。


「貴殿は我が国に攻め寄せたシェウミリエ帝国軍を退け、シェウミリエ帝国に協力していた聖導教会聖騎士団のハロルド副団長、およびシェウミリエ帝国軍の猛将ガーニィ将軍を討ち取るという戦果を挙げ、シェウミリエ帝国に侵略の野望を諦めさせる決定的な戦果を挙げた。その栄誉を讃え、黒天剣武章一級を授与する!」


 するとブライアン将軍は敬礼し、オリアナさんが手ずから大きな勲章を胸につけてあげた。


 ブライアン将軍は他にもたくさんの勲章をつけているので、ものすごい武功を挙げた将軍なのだろう。


 ブライアン将軍が壇上から降りると、オリアナさんが私のほうを見た。


「これが最後の叙勲となる。金花宝冠章、奇跡の天使ホリー!」

「えっ?」


 まさか公式の場でその呼び名が使われるとは思っていなかった私は驚き、思わず変な声が出てしまった。


 だが周囲の視線は私に注がれている。


 し、仕方ない。恥ずかしいが、ここは我慢して早く式典を済まさなければ。


 私は急いで壇上に上がった。


 するとオリアナさんが優しい目で一度私に微笑みかけてくれ、そしてすぐに真剣な表情になった。


「貴殿はシェウミリエ帝国の戦いで傷ついた兵士をその類まれなる力で救い、即座に前線に復帰させるという奇跡を成し遂げた。このことがなければ今もシェウミリエ帝国による侵略の野望は(つい)えることなく、多くの命が失われていたことは間違いない。また、貴殿はシェウミリエ帝国兵であったとしても分け隔てなく命を救った。薬師としての貴殿の姿勢はすべての者にとっての模範である。よってここにその栄誉を称え、金花宝冠章を授与する!」


 私は片足を後ろに下げ、魔王様に謁見したときと同じようにちょこんと膝を折って礼を執る。


 すると私の胸元に大きな金の勲章をつけながら、オリアナさんがそっと囁いた。


「ホリー、ありがとう。本当に感謝しているよ」

「はい」


 こうして勲章をつけてもらった私が壇上から降りると、先ほどのブライアン将軍が私を待っていた。


「ホリー先生、おめでとう」

「ありがとうございます。将軍もおめでとうございます」

「うむ。これからのパレードだが、儂がホリー先生のエスコート役となる。よろしく頼むぞ」

「は、はい」


 なんとかそう答えたが、こんなに偉い人と一緒にパレードするとなるとちょっと緊張してしまう。


「では、行こうか」

「はい」


 私は差し出された手を取り、そのまま町庁舎を出るのだった。

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