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魔族に育てられた聖女と呪われし召喚勇者【完結済】  作者: 一色孝太郎


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第69話 終わらない戦争

「ああああ! なんたる失態か!」


 半壊したコーデリア峠の砦の瓦礫(がれき)の上に立つブライアンは顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。


「どこから侵入された!」

「はっ! 通用口のようです!」

「なんだと!? 外からは開けられない仕組みになっていたはずだぞ! どうやって通用口を開けたのだ!」

「はっ! 命令違反をした者たちが通用口を開けっ放しにしていたようです」

「何? 見張りは何をしていた!」

「命令違反をした者たちと共に出撃したようです。通用口を閉めなかったのは、自分たちの退路を確保していたものと推測いたします」

「馬鹿者がぁぁぁぁぁぁぁ!」


 再びブライアンは大声で怒鳴り散らす。


「……将軍、いかがなさいましょう?」

「このままおめおめと引き下がれるか!」

「ですがこんな状況で戦えません。奴らは食糧も燃やしていったのですよ! 一度下がって体勢を!」

「何を言うか! このままコーデリア峠を放棄してはシェウミリエの連中の思う(つぼ)だ!」

「ですが今の状況で将官から戦うなど無謀です!」

「……誰が正面から戦うと言った?」

「え?」

「まずは正面に壁を作る」

「ええっ? ですが……」

「はったりだ。だがそうすることでこちらにはまだまだ余力があることをアピールできる」

「……」

「そのうえで、連中の補給を断つ。連中の背後に回って補給部隊を襲撃、略奪するのだ」


 するとブライアンと話している男がポカンとした表情になった。


「なんだ! その表情は!」

「はっ! 申し訳ありません!」

「連中は数が多い分補給も多く必要だ。補給のうちの一割でも失えば急激に継戦能力を失うだろう。その間コーデリア峠を死守し、砦を再建する。まずは生き埋めになっている兵を救助しろ! それからその廃材で壁を作れ!」

「か、かしこまりました!」


 そうしてブライアンたちは生存者の救出と壁の建設作業を始めるのだった。


◆◇◆


「はっはっはっ。やるねぇ」


 ガーニィ将軍は上機嫌な様子で将司を労った。


「いえ、ハロルドさんたちのおかげです」

「謙遜すんなって。砦に潜入して食糧焼くだけのつもりだったのに、まさか半壊させるとはなぁ」

「これもショーズィ殿の魔力が大きいからですな。日頃の鍛練の賜物ですな」

「ありがとうございます」

「はっはっはっ。いいねぇ。その姿勢ならそのうち魔族を倒して本物の勇者になれるかもな」

「かも、ではないのですぞ。なるのですぞ」

「ははっ。ちげぇねぇ」


 ガーニィ将軍は再び上機嫌そうに笑った。そんなガーニィ将軍に将司はおずおずと尋ねる。


「あの」

「ん? なんだ?」

「攻めないんですか? 多分今砦はすごく混乱していると思うんですけど」

「いや、やめたほうがいい」

「え? どうしてですか?」

「目を身体強化してよく見て見ろ」

「え? ……あ!」


 ガーニィ将軍に言われて確認した将司の目に砦を守るように築かれた高い壁が映った。


「な? あれが魔族なんだよ。あんなもんをまだ一時間経ってねぇうちに作れるんだ。そんだけの魔力を持った奴が残ってるってことだ」

「そんな……」

「それにどうやら挑発に釣られたのは若い連中だけみたいだからな。しかもたった五十しか死体がなかった。多分あっちの砦で生き埋めになった奴のほうが多いだろうよ。ああ、もっとぶっ殺せてると思ったんだがなぁ」


 ガーニィ将軍は残念そうにそう言った。


「え? でも!」

「だから、あの壁あんだからそれを突破する方法を考える必要があんだよ。それともなんだ? お前に案でもあるのか?」

「い、いえ……」

「ならこのまま睨み合いだ。もう挑発に乗って出てくる馬鹿はいないだろうし、んー、どうすっかなぁ。やっぱ補給か?」

「私も賛成ですぞ」

「じゃあ、そうすっか」


 ガーニィ将軍は投げやりな様子でそう言うと、そのまま自分の天幕へと歩いていったのだった。


◆◇◆


 供するべき治療の七割ほどを終えた私は今、病院前のレストランでニール兄さんとランチを食べている。


 ここであれば病院で何かあったときはすぐに駆け付けられるし、ニール兄さんもオリアナさんから病院の警護の仕事をお願いされているのでニール兄さんにとっても仕事に戻りやすい。


 そんなわけでランチは毎回このレストランで食べているのだ。


 そんないつものランチプレートを食べていると、病院の前に続々と魔動車がやってきた。そして次々と担架が運び出され、病院の中へと搬入されていく。


「なあ、ホリー」

「うん。急いで治療に行かなきゃ。ごめんね」

「いいよ。仕事、頑張って来いよ」

「うん。ありがとう」


 私はランチをそこそこに切り上げ、大急ぎで病院へと向かった。


「あっ! ホリー先生!」

「チャールズさん、患者さんは?」

「なんとか応急処置をしていますが、かなりまずい状況です。コーデリア峠の砦が半壊し、その瓦礫の下敷きになった人がかなりいるようなんです」

「えっ!?」


 その話が本当ならばかなり大変だ。骨ごと潰れてしまっているのであれば、間違いなく大治癒の奇跡が必要となる。


 だが今日はもうすでにかなりの人数を治療しているので魔力にあまり余裕がない。


 私は大急ぎで患者さんのベッドへと向かうと、すぐさま大治癒の奇跡で治療を始めるのだった。

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