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ショートショート4月~3回目

意気地無し

作者: たかさば

 ……最初に、あの子に、告白しようと思ったのは…いつの事だったかな。


 あの子の事が、好きだ。

 あの子の事が、好きでたまらない。


 あの子の事が好きだという気持ちを、伝えたい。


 明日こそは、告白しよう。

 明日こそ、告白するんだ。

 明日、告白する。


 告白したい、けれど、告白…できない。


 気持ちを伝えて、断られてしまったら。

 気持ちを伝えて、関係性が変わってしまったら。

 気持ちを伝えて、嫌われるような事があったら。


 自分に自信の持てない、僕。

 自分の気持ちを伝える勇気が出ない、僕。


 僕は、告白したい気持ちに、理由を付けて……抑え込んだ。


 告白するには、タイミングが悪い。

 告白するような、場所じゃない。

 告白するには、まだ早い。

 告白するような、関係ではない。


 僕は、告白したい気持ちに理由を付けて……口を閉ざした。


 でも、僕の心の中が、……騒ぎ出した。

 告白したい気持ちがちょっと待てと、しゃしゃり出てきた。


 頭の中に、おかしな決意が……生まれるようになった。


 明日、雪がやんだら…あの子に告白しに行こう。

 明日、桜祭りの会場で…あの子に告白しよう。

 明日、雨が降らなかったら…あの子に告白しに行こう。

 明日、雷が鳴ったら…あの子に告白しに行こう。

 明日、何もなかったら…あの子に告白しに行こう。

 明日、無事に過ごせたら…あの子に告白しに行こう。


 告白したい気持ちは、懸命に……僕を動かそうと、試みたのだ。

 自然現象に託けて、告白するための勢いを…得ようと足掻いたに、違いない。

 しかし、願いもむなしく……僕はあの子に告白できないまま、時間だけが過ぎていった。


 告白したいと思う気持ちを、何かにかこつけて有耶無耶にしていたから……罰が当たったのかも、知れない。


 明日、雪がやんだら…あの子に告白しに行こう。

 ……そう決めた日に、大雪警報が出た。


 明日、桜祭りの会場で会ったら…あの子に告白しよう。

 ……そう決めた日に限って、緊急の仕事が入って祭りに行けなかった。


 明日、雨が降らなかったら…あの子に告白しに行こう。

 ……そう決めた途端に、ゲリラ豪雨がやってきて川が決壊した。


 明日、雷が鳴らなかったら…あの子に告白しに行こう。

 …そう決めた日の夕方、台風は急カーブを描いて舞い戻ってきた。


 明日、何もなかったら…あの子に告白しに行こう。

 そう決めた日の夜に、二軒隣の家で大事件が起きててんやわんやになった。


 ……もう、何があっても、告白できる気がしない。


 でも、どうしても……諦めきれない。

 どうにかして……この思いを伝えたい。


 そこで、僕は……考えた。


 絶対に、告白することができるような、ありえないことを引き合いに出そう。

 絶対に、告白することができるように、なんてことない日常に勢いをもらおう。


 明日、世界が滅亡しなかったら、あの子に告白しに行こう。


 ……世界は、滅亡しなかったけれども。


 宇宙人が、襲来してきた。


 捕獲されて、まな板の上にのせられた時、あの子が横に、並んだ。


「好きです、付き合ってください!」

「私もあなたが好き!ずっと告白されるのを待ってたの!」


 ……ああ、なんでもっと早く告白しておかなかったんだろうなあ。


 僕は彼女と一緒に。


 空の彼方から、切り刻まれた肉片を、見下ろした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 世界滅亡を引き合いに出すから、こうなるんや……。 宝くじが外れたら告白しよう、とかにしておけば……って。あ、でも。うん。告白したいんですもんね、宝くじとかどうでもいいですもんね。うん。
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