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iドール  作者: OPQ
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エピローグ

 こうしてアイドル大量失踪事件は解決した。森田さん、実は攫った二、三日後には解放コードの作成を始めていたこともその後の捜査でわかった。里奈を探していた目的は、コレクトするためだけではなく、その身の安全を確保するためでもあったのだ。また、アイドルを同時多発的に攫うに当たって、なんとヤクザだけでなく、アイドル達が所属する事務所の人間も使っていたことが判明した。「アイドル達を不老不死にできる」「言うことをなんでも聞かせられるようになる」などの甘言にそそのかされ、彼の計画に協力していたのだ。だが、誘拐後に森田さんに切り捨てられ、アイドルを全員持って行かれてしまった……。というのが事件の真相だったようだ。俺はカタメホビーとiドールは致命的な打撃を受けることになるのでは……と危惧していたが、犯行動機が余りにもロマンチック、ドラマチック過ぎたためか、思ったよりバッシングは少なかった。他に理由としてはアイドルが全員無事生還したこと、損をしたのはテレビ局や芸能事務所などの金持ち連中だけだったこともある。それに当の大手芸能事務所が共犯だったということで、メディアも正面切って叩きづらかったのだろう。事件を契機にiドールの知名度は爆発的に上がり、売り上げは以前の三倍以上に上昇。ライバルPも続々誕生し、まさに時代はiドール戦国時代。俺も「リンタP」としてクルミをデビューさせたものの、「リリーナ」に比べると再生数は月とすっぽんだった。

「青葉さーん、やっぱ無理ですか?」

 俺はiステージの上に寝転がる青葉さんに尋ねた。

「するわけないでしょ! 絶対しないからね!」

「ですよねー」

 青葉さんにiドールとしてデビューしないか、とダメ元で打診したが、全力で断られた。そりゃそうか。でも今、iドール界隈では古家良子の曲が大流行中だから、絶対ウケると思うけど。

 事件解決後も、元に戻れなかった青葉さんは引き続き、俺の家で暮らしている。解放コードができるまではこのままの予定だ。

 ネットでデビューするのは断固拒否する青葉さんだけど、家の中で俺個人に対しては、ライブをたまにやってくれる。最近はクルミとデュオライブもするようになった。内心では絶対ノリノリだと思う。cosワールドにも行くようになったし。

「じゃあ、代わりにライブやってくださいよー」

「何、代わりって」

 その時、呼び鈴が鳴った。一階に降りて相手を確認すると、里奈だった。ドアを開けると、等身大の彼女が立っていた。俺と同じ目線の、人間の彼女だ。

「こんにちは」

「あ、ああ……。何か用?」

「遊びに来たんだけど……ダメ?」

「いや、いいよ。上がって」

 里奈は靴を脱ぎ丁寧に揃えて、俺の家に上がった。そういえば、人間の里奈がウチに来るのは、事件解決時のお礼以来か……。あの時は制服だったな。私服の里奈は初めてかもしれない。少なくとも、これほど間近で見ることは。

 彼女はまるで自分の家のように、迷わず二階へ向かった。その際、俺の横を通り過ぎた時。甘くいい匂いがした。俺はドキッとして、顔が赤くなった。すぐに行ってしまったので、見られなかったのが幸いだ。……iドールだった時は、あんな匂いしなかったな。当たり前だけど。それに、俺の目の前を顔が通った。大きいな……。いやいや、俺と同じサイズだろ。これが普通なんだって……。でもなぜだか、妙にドキドキする。

「こんにちはー!」

 俺がお菓子とお茶を用意していると、部屋から楽しそうな声が響いた。里奈が青葉さんとクルミに挨拶している。二人の声は小さくて一階までは届かないが、まあよろしくやっているだろう。俺が部屋に戻ると、里奈が膝を曲げて二人と話していた。クルミは心底嬉しそうだ。青葉さんも笑ってはいるが、少し複雑そうだった。里奈の巨人っぷりに圧倒されている。俺と逆か……。ふふっ。

「いいとこ来たよ。これから二人のデュオショーをやるとこだったんだ」

 俺はニヤニヤしながら青葉さんに視線を向けた。驚いてる驚いてる。

「そうなんだ! 見たーい!」

「あ、いや、私は……」

「わーい! やりましょやりましょー!」

 青葉さんは二人のキラキラした期待の眼差しを交互に見比べ、次第に声が小さくなっていった。

「んもう、しょうがないわねー」

 青葉さんが折れた。うし。俺はステージを起動し、青葉さんをアイドルフォームにチェンジした。クルミもこれに加わる。

「私も私もー」

 二人がステージ中央でピッタリ背中を合わせて、構えた。ミュージックスタート!

「メグミ&クルミ、『ジェムストーン』、いきまーす!」

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