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だるっぱの呟き  作者: だるっぱ
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監督の采配

 子供の教育で、僕が一番気に掛けていることは、「決断」を子供に任せるということです。子供たちに対する僕の口癖も、


「自分で決めなさい」


です。少し冷たく感じるかもしれませんが、それが僕のスタンスです。ただ、そうは言いつつも、つい出しゃばって口出しをすることもあるので、一概にそうとは言い切れないところもあります。


 今朝の8時過ぎ、次男のシンゴが琵琶湖に向かって出発しました。お互いにGPSで確認ができるようにアプリを入れているので、スマホを開くとシンゴの現在地が分かるようになっています。ストーカー行為で使用すると大変危険なアプリですが、お互いに同意のもとならとても強力なツールになります。


 人間というのは、どうしても自分を物差しにして相手を測るところがあります。僕が若い頃は、自転車で一日300キロを走り切ることが出来ました。大阪出発のビワイチの走行距離は300キロです。その半なら、150キロです。それくらいならシンゴも走れるだろうと、簡単に考えていました。ところが、シンゴは午前中の4時間で50キロしか走れていません。


 ――ん? あまりにも遅い。


 初めは、その様に感じました。ところが、全盛期の僕と、今のシンゴでは状況が違います。僕は、体育会系の水泳部です。対して、シンゴは演劇部。本格的なトレーニングは経験していません。身体も見るからにヒョロヒョロです。しかも、暑さという意味ではかなり過酷な環境です。また僕は、口を酸っぱくしてシンゴに言い聞かせていました。


「無理はするな。休憩は取る事。水分はこまめに取れ」


 素直なシンゴです。多分、現在のペースが一番最適だということです。でも、このままだと当初の計画は達成できません。初めての経験のシンゴに何もかも決めさせるというのは、親としては無責任だと感じました。ただ、状況が分かりません。シンゴの気持ちも分かりません。心配になったので電話をしました。


「どうやシンゴ。調子は?」


「足が、バグってる」


「ご飯は食べたんか?」


「食べてない」


「食事をして、休みなさい」


「分かった」


「それとな、言い難いねんけど、そこから湖北までは100キロもあるねん。今日中は無理やろ?」


「そうだと思う」


「パパが言うのも何やけど、今日はどこかで一泊して、琵琶湖大橋を渡って、帰ってきてもええんやで」


「……」


「考えてみて」


 提案だけはしました。後は、シンゴが決めることです。ただ、提案と言いつつも、僕の言葉は命令に近いものになります。追いかけ、ラインを打ちました。


「シンゴがそのつもりなら、2泊しても良いよ」


 シンゴが、どの様な答えを選ぶのかは、まだ分かりません。ただ、どちらの選択も間違ってはいません。シンゴに、何かしらの成長を促すと思います。


 監督は、絶対的な決定権を行使するのが仕事ではないと思っています。プレイヤーが、満足のいくゲームが出来るように、道を指し示す事が仕事だと思います。決定権はプレイヤーに持たせた方が良い。その様に僕は考えています。


 途中、事故が発生してプレイが出来なくなったら救出には行きますが、それまではプレイヤーに任せたい。温かく見守っていきたいと思います。

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