キャンプ飯
コロナ渦にキャンプ人気に火が付きました。キャンプ系のアニメやYouTubeがヒットしたり、キャンプ用品が売れに売れたようです。ところが、人ごみを避けたつもりなのにキャンプ場は予約で一杯だったり、思った以上に不便だったのか、昨今はそうしたブームが落ち着いてきた……とのニュースをチラチラと見かけます。
僕は、一人でキャンプをすることが多い。周りからは、「奥さんと一緒にキャンプをしないんですか?」と聞かれることがあります。誘ったことはありますが、嫁さんはキャンプ的なアクティビティに全く興味がありません。どうせ出かけるのなら、温泉があって、美味しい料理が食べれれて、後片付けの煩わしさがない。そんな快適な旅が良いようです。確かに、確かに。僕も、そんな旅が大好きです。
僕の場合、実はキャンプが目的で出かけることはほとんどありません。旅に出る別の目的が必ずあります。ここ数年は、歴史的な史跡を探索するついでにキャンプ……というか野宿をしていました。今年はその目的が登山になっていて、山を登頂するついでにキャンプをします。この年末年始は、スーパーカブでの四国一周を計画しており、四国にある岬の先っぽでテント泊をするつもりでした。つまり、僕のキャンプは、目的のための手段なのです。
手段としての僕のキャンプは、食事がパターン化していました。相棒のスーパーカブに七輪を載せて、現地で焼き鳥をします。もも肉は、ニンニクと塩コショウを利かせて、日本酒を振りかけておきます。下準備は自宅で済ませておいて、現地で炭を熾せば、後は焼くだけ。焼き鳥をアテにして缶ビールをガンガンに飲みます。日本海側で野宿をしたときは、現地の干物をあぶりました。その干物をアテにして、現地の地酒を味わったりもします。
前回、奈良県天川村にある双門コースに挑戦したときは、一般登山道関西最難関と呼ばれるだけあって体力勝負になりました。日の出から日の入りまで一日中歩いたのに、目的地に到達できません。登り切れずに人生初のビバーグを体験しました。このような登山の場合は、荷物を減らしたいので七輪は使いません。キャンプ用のガスバーナーを持っていきます。キャンプ飯も、ガスバーナーを使った料理になりました。
真っ暗な渓谷の中でのビバーグ飯は、もも肉と一緒にご飯を炊きました。エネルギーとしてご飯を食べることを優先したからです。ただ、いつものキャンプでは米は炊きません。お酒が飲みたいからです。というか、自宅でも夜は米を食べません。お酒を飲むから……。
この連休は、奈良県の標高959mの葛城山に登る予定です。今回の目的は葛城の歴史探索なので、珍しく登山はオマケでした。今回のコースは、周回で6kmほどしかありません。これまでは普通で10km、長いと20km近くは歩いていました。それらに比べるとかなりラクチン。更に、葛城山の頂上でテント泊をするので、片道は3kmしかありません。ということで、今回は山の上で酒を飲みます。荷物はそれだけ重くなりますが、無問題。
酒を飲むのなら、アテにこだわりたい。定番は焼き鳥なのですが、酒は運べても七輪までは運べません。図体がデカすぎてナップザックに収まらないからです。なので、ガスバーナーで調理できるメニューを考えないといけません。このメニューについて深く思いを巡らしました。
葛城山頂の日中の気温は10度くらいですが、夜中はマイナス2度まで下がります。かなり寒い。これまでの雪中キャンプでは、味噌鍋と粕鍋を用意しました。鍋の良いところは、汁を飲むことで身体の中から暖まります。ある意味、マイナスになるような寒中キャンプでは鍋一択なのですが、今回は、なんだか鍋の気分じゃありません。違うものが食べてみたい。そこで今回のキャンプ飯は、
――アヒージョ。
オリーブ油で食材を煮込む、いや油と水は混ざらないので、科学的な反応は「蒸す」なのですが、スパイシーに味を決めて、酒を飲みたい。ネタは、海老、モモ肉、エリンギ、ニンニクは冷蔵庫にあります。ミニトマトなんかも欲しいし、出来れば牡蛎なんかも欲しい。食材はおいおい考えるとして、問題はアヒージョを食べた後のオリーブ油になります。鍋のように汁を飲むわけにはいきません。そこで、残り物のオリーブ油でアーリオオーリオ、つまりパスタを調理したい。パスタは、自宅で半茹でにしたものをジップロックで運びます。アヒージョとパスタ。まるでイタリアン。ここまでするのなら、お酒にもこだわりたい。ビールも良いけれど、今回はワインにしようかな? そんなこんなを妄想しながら、葛城高原キャンプ場に前日に予約の電話をしました。
「申し訳ありませんが、明日は予約が埋まっており、宿泊は出来ません」
――えっ!?
想像していませんでした、予約ができないなんて。気温がマイナスになるというのに物好きな人がいたもんだと思いましたが、僕もその一人。しかし、紅葉シーズンの連休を甘く見ていました。僕の場合は野宿が出来るので、場所があればどこでも寝れるのですが、その場所を見つけるのは難しい。どんなに良い場所でも、目的である葛城の歴史探索に弊害が出るような遠方では意味がありません。今からその対策を考えます。どこで寝ようか……。




