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だるっぱの呟き  作者: だるっぱ
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縄文と思想②思想なるもの

 書籍には様々なジャンルがあります。小説、随筆、ノンフィクション、詩歌、自伝、絵本、歴史書、学術書、辞書、写真集、ハウツー本、自己啓発本、教科書、週刊誌、エトセトラ。これら様々な書籍の中で最も売れているのは漫画でしょうか。最近、ヤフオクで漫画を買いました。石塚真一著「岳」を全巻。更に吾妻ひでお著「失踪日記」「チョコレート・デリンジャー」等まとめ買い。いま黙々と読んでいます。


 石塚真一著「岳」は、北アルプスを舞台とした山岳漫画になります。主人公の島崎三歩は山登りが大好きで、山で遭難した方の為に救助活動をしています。北アルプスには、雄大で美しい景色に魅了された人々が次々と山に登りに来ます。しかし、森林限界を超えた3,000m級の山岳は美しいだけでなく危険が潜んでいました。足を踏みはずした登山客が滑落します。手足が折れるだけなら幸運な方で、次々と死んでいきます。島崎三歩は、そうした滑落した人を抱きしめて「よく頑張ったね」と慰めました。山岳信仰に興味を持ち、山登りを始めた僕ですが、なにか心に刺さるものがあります。僕の従兄も北アルプスで滑落して亡くなったので、重ね合わせるようにして読んでいます。


 吾妻ひでおは、僕よりも20歳以上も年上の方で、僕が子供の頃に彼の漫画を読んだことがありました。初期の作品は不条理ギャグやパロディが中心だったのですが、彼の有名な活躍はロリコンブームを牽引したことになります。その後、「失踪日記」や「うつうつひでお日記」等で自身の精神疾患を題材にした漫画を発表しました。「面白いのか?」と問われると、爆笑するような作品ではありません。ただ、干物を噛みしめるような味わいがあります。ロリコンにしろ日記シリーズにしろ、とても素直で正直な作家だと思いました。ただ、そうした作品が商業という歯車の中で常に売れていくのかというと、それは難しい。作品を生み出すことと、商売は別次元の問題になります。僕のように、売れることなど全く気にせずに気ままに文章を書いている方が幸せだったりします。


 「岳」の島崎三歩にしろ、吾妻ひでおにしろ、生き方にパターンがありました。島崎三歩であれば、とっても山登りが大好き。彼の行動力の源泉は、「山を崇拝する」これ一点に尽きます。例え滑落して死ぬことになっても、山に抱かれることに至上の喜びを見出そうとしました。これは彼の思想であり、彼の行動を規定しています。おなじパターンが繰り返されていました。


 吾妻ひでおもそうです。作家である彼は、スランプに陥ってしまい作品を生み出すことが出来ません。彼が取った行動は失踪でした。何度も失踪します。その内、アル中になり精神疾患を患いました。「スランプに陥ったら失踪する」これは晩年の彼の行動パターンであり、彼自身の行動を規定しています。思想に近いものがありました。失踪を思想と定義することに違和感を感じるかもしれませんが、今回はこの思想というものにフォーカスしてみたい。


 現代は、誰もがスマートフォンを持っている時代です。赤ちゃんですら、泣き止ますためにお母さんからスマートフォンを渡されたり……。スマホの機能はプログラムで動いています。アプリを管理するOSも、一つ一つのアプリケーションも全てプログラム。僕なりにプログラムを定義するとしたら、「目的を成し遂げるための命令の集合体」になります。僕のスマホにはナンプレや倉庫番、それに将棋といったアプリがインストールされています。どのゲームもルールがあり、ルールに沿ったプログラムが組まれており、ルール以外のことは出来ません。例えば、将棋なのに倉庫番のようには駒は動かせないわけです。これ、人間も同じだと思うのです。


 ――お金を手に入れる為に、貴方ならどのような行動をとりますか?


 マーケティングを勉強した方なら新しい商売を立ち上げるかもしれませんし、大工なら家を建てることでお金を稼ぎます。株式に投資するトレーダーもいますし、漫画家なら作品を仕上げます。飲食店にアルバイトに行ったのなら時間給でアルバイト料が支払われますし、財布を持ってパチンコに向かう方もいます。僕の息子なら、母親にお小遣いをねだるでしょう。


 お金を手に入れるにしても様々な方法がありますが、ここで注目したいのは人それぞれにお金を手に入れる方法がパターン化されていることです。家の建て方しか知らない大工が漫画を描いても、お金を手に入れるのは難しい。特性を生かしたほうが効率が良いに決まっています。その特性を生かすという行動がパターン化を生み出します。この繰り返されるパターンは、物心がついた子供のころから始まっており、自身の行動を規定していきます。自分にそのつもりがなくても、行動の選択に傾向性が現れます。この傾向性の集大成が、プログラムとよく似ています。


 人間ですから、選択を変えることは出来ます。大工であっても実は漫画の才能があって、ジャンプの新人賞を受賞するかもしれません。生き方のプログラムを書き換えるのは、並大抵の努力ではできませんが、でも不可能ではありません。ただ少し俯瞰してみると、大工や漫画といった要素は個々の事象であって、これは小さなプログラム。新しいことに挑戦しようとした根源的なプログラムが存在しています。これはその人の生き方であり思想と考えてよいと思います。


 思想は、自分一人だけで練り上げるものではありません。環境的な要因に影響されて後天的に作られていくものだと思います。影響の始まりは両親。自分を育ててくれる親の思想に影響を受けます。昔、狼に育てられた子供がいました。発見された時、その子供は四つ足で走り回り、人間の言葉を話すことが出来なかったそうです。極端な例ですが、環境の影響力の大きさを物語っています。


 思想は形のないものですが、体系化されたり組織化されることがあります。それが哲学と宗教になります。以前に、出口 治明著「哲学と宗教全史 」を読みました。紀元前から現代にいたるまでの思想の変遷を紹介した本になります。非常に面白かった。哲学や宗教というと眉を顰める方がいると思います。難しそうだし考えたくない。そのように感じる方が多いでしょう。でも、哲学や宗教を遠ざけても、誰しもが何かしらの自分の考え方を持っています。思想から逃れることは出来ない。


 思想とは、考えを巡らすための道具と定義することが出来ます。また洗脳という言葉がありますが、思考を自動化するパッケージに成ることもあります。なので、思想には浅深厚薄があります。仮に「お金を稼ぐ方法は泥棒をすることだ」と信じていたとします。盗むことで一時的にお金を手にすることが出来ても、信じた人は何れ不幸になるでしょう。好むと好まざるに関わらず、人は思想に縛られて生きています。信じている思想によって、その人の幸不幸が決定すると言っても良い。生き方を規定する思想を吟味することは、とても重要だと考えます。


 前置きが長くなりました。縄文時代の思想について僕なりの考察を述べるつもりでしたが、次回にします。

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