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だるっぱの呟き  作者: だるっぱ
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野生の減少

 西洋的な思想と東洋的な思想を比較した時、顕著な違いを発見することが出来ます。その最たる違いは、僕たちが生きるこの世界との関係性になります。端的に表現すると、西洋的な思想はこの世界に対して支配的であり、東洋的な思想はこの世界に対して調和的です。具体例を挙げて見ていきましょう。


 古代の建築物で有名なものと言えば、エジプトのピラミッドやギリシャのパルテノン神殿を思い浮かべます。これらの建造物は建築材料に石を使いました。石を使うといっても、そこら辺の石を使うわけではありません。山を削って石を取り出すのです。山そのものが無くなってしまう規模の開発からは、世界を作り変えるという旺盛なパワーを感じます。


 対して、東洋的な建築物は木を使います。有名な建造物に奈良の法隆寺がありますが、なんと1400年前に創建されました。ただ法隆寺は別格で、木という建築材料は石に比べると耐用年数が短い。更に火に弱いと弱点があります。なので、古くに作られた木造建築物が現代まで残っているのは稀です。木造建築物の良いところは、木という再生可能な材料を使うことで、資源を循環させることが出来ます。古くなったり焼失しても、また建て直せば良いのです。ここに東洋的な思想を感じます。


 医療技術も、西洋と東洋では違いがあります。西洋的な医術は、病気の原因を見つけ出しそれを取り除きます。原因追求型で、治療のスピードが速い。対して、東洋的な医術はバランス型です。病気の原因を取り除くのではなくて、時間を掛けて体全体のバランスを整えていきます。病気そのものと付き合っている感覚に近い。のんびりしすぎて亡くなってしまったとしても、古代においてはそれを受け入れる心の準備もあったと思われます。そこには諸行無常的な価値観と、私たち人間はこの世界に受容されて生きているというアニミズム的な価値観が奥底にあったような気がします。


 一年前にハラリ著作「サピエンス全史」を読了しました。その中の記述で、この地球の哺乳類のバランスについて驚かされました。僕たちは、この地球に野生がまだ残されていると考えがちです。ところが、 世界自然保護基金(WWF)のレポートによると、この50年で野生は70%も減少しているそうです。70%減少の代償として、人類の総人口は80億人に達しました。この80億人を養うために、食料としての動物が世界中で飼育されています。牛15億頭、羊12億頭、豚8億頭、鶏に至ってはなんと230億羽。つまり、この地球において哺乳類のバランスは人間を中心にして酷く偏っているのです。――余談ながら、牛が吐き出すメタンガスは、温室効果ガスとして危惧されています――野生と呼ばれたものが、人間世界の隅っこに追いやられているのが現代であり、この様子がとても西洋的だと思うのです。


 昨今、SDGsが叫ばれています。持続可能な開発目標――Sustainable Development Goals――の取り組みは、西洋的な思想から東洋的な思想への転換を叫んでいます。出来るかできないかは別にして、これは、人類的なOSの書き換え作業になります。僕は古代のことを勉強していますが、歴史に残る過去の偉人や哲学者たちが行ってきたことは、この世界を管理するためのOSの書き換え作業であったと見ることが出来ます。


 世界三大宗教の開祖である、釈迦、キリスト、ムハンマドはもちろんのこと、秦の始皇帝やアレキサンダー大王、宗教改革の切っ掛けになったルソー、啓蒙思想をリードしたロック、ヒューム、ボルテール、モンテスキュー、共産主義を唱えたマルクス、エンゲルス、日本においても聖徳太子や徳川家康という偉人は、この世界をどのような思想のもとで導いていけば平和になるのかを模索してきました。その様子がパソコンのOSと良く似ている。


 ちょっと話を大きくしすぎました。今度、三重県の大杉村から大台ヶ原まで登山をします。往復40km弱で1400mの高低差を登るかなりハードなルートになります。ロープを使うような高度な登山ではありませんが、体力が必要です。更には、天気予報は雨。条件は悪いのですが、とても楽しみにしています。日本に残された秘境を堪能したい。


 一つ心配なのが、熊に対する対応です。大台ヶ原では今年も熊の目撃情報が集まっています。熊除けの鈴は用意しているのですが、雨の中だとあまり効果がないかもしれません。万が一遭遇してしまった時の対処を考えないといけない。その一つに、熊撃退スプレーがあります。ネットで直ぐに手に入るのですが、思いのほか高価でした。なので、自作するつもりです。材料は、焼酎と唐辛子になります。カプサイシンを抽出した焼酎をスプレーに詰めて携帯します。熊は犬以上に鼻が利くそうなので、スプレーを目の前で噴霧すると耐えられないみたいです。いや、人間でも大変でしょう。誤射して、自分の顔に掛からないように気を付けないといけませんね。

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