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だるっぱの呟き  作者: だるっぱ
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キリン一番搾りプレミアム

 以前に、ランニングを再開したことをご紹介しました。自宅を出発して万博の外周を走る、距離にして12kmのコースになります。40代の頃のランニングのモチベーションは、「マラソン大会に申し込んだから」でした。マラソンの練習についてネットで調べると、月間で100km走れとか150km走れとか紹介されています。なんとなく「走らなくてはいけない」みたいな強迫観念に背中を押されるようにして走っていました。いくつものフルマラソンに出場して、100kmを走るウルトラマラソンを完走した後、


 ――もう、走らなくていい。


 そんな気持ちになりました。当時、ウルトラマラソンを完走できるだけの練習は出来ておりませんでした。完走できたのは先輩の伴走のお陰なのです。限界を超えたランニングは、体力も気力も枯渇しており、自分がなぜ走っているのかも考えられなかった。隣で先輩が励ましてくれたから足を止めずにゴールが出来ました。ゴールの瞬間は感動に打ち震え大泣きしましたが、その後、ランニングに対するのモチベーションは大きく後退します。


 その後も、決まったようにマラソン大会に申し込みをしました。でも、この申し込みはただの惰性になります。コロナでマラソン大会が開催されないと聞いたとき、正直なところ、ホッとしました。ランニングを止める口実が出来たからです。解放されたと思いました。


 今回、ランニングを始めたきっかけは健康診断になります。ランニングをしている頃は、健康診断で指摘されるような症状はありませんでした。ところが練習不足から、血圧やコレステロールの数値が年々上昇していくのです。努力の必要を感じました。重い腰を上げて、再度走ることにしたのです。


 ――帰ってきた。


 ランニングを再開した時の、正直な気持ちになります。ストレスに感じていたランニングだったのに、故郷に帰ってきたような安堵感。それ以来、週に1回、12kmを走っています。マラソン大会に申し込みはしていません。何れ大会に出場するかもしれませんが、今はそうした縛りが欲しくない。早く走るという縛りもいりません。膝の故障が怖いこともありますが、ゆっくりと走ることが気持ち良い。


 ランニング後の楽しみも重要になります。この間は、鶏のから揚げの準備をしてからランニングを始めました。帰ってくると、まずは風呂場に直行します。体は温めますが、膝周りは冷水シャワーでしっかりと冷やします。風呂から上がると、ガスコンロに火をつけて唐揚げを揚げる用意をします。ここで、やっとビールを飲みました。このビールが美味い。


 実は、長男のダイチが6月に二十歳になりました。誕生日のお祝いに、嫁さんに連れられてキリンビールの工場に行きます。見学後は、併設されるレストランで二人は食事をしました。二十歳の誕生日にビール工場にやってきたということで、レストランのスタッフからダイチはお祝いの言葉を頂いたそうです。嫁さんとツーショットで写るダイチは、恥ずかしそうな笑みを浮かべていました。そこで飲んだビールがとても美味しかったそうです。そのビールとは「キリン一番搾りプレミアム」でした。ダイチと断絶状態にある僕は、嫁さんからその聞きます。嫁さんもとても嬉しそうでした。


 ――僕もまぜてほしい。


 僕の素直な気持ちになります。なんとも情けない話に聞こえるでしょうが、僕とダイチはハリネズミ状態。お互いに距離感がはかれずにいます。追いかけても、ダイチは逃げるだけ。少しでもダイチを感じるために、僕もキリン一番搾りプレミアムを飲むことにしました。


 ――ところで、キリン一番搾りプレミアムってご存じですか?


 店頭では販売されていません。中元の贈答用商品として企画されたビールになります。ネットで買おうかなと思ったのですが、今すぐにでも飲みたい。酒の量販店に嫁さんと向かいました。1缶づつは売っていないとのことだったので、真っ先に贈答コーナーに向かいます。ありました、キリン一番搾りプレミアム。化粧箱に入れられた商品をレジに持っていくと、包装をしないお持ち帰りだと500円安くなると案内されました。


「持ち帰ります」


 即答です。安くなるのなら、なお結構。このキリン一番搾りプレミアムを、ランニングの後に唐揚げをアテにして飲みました。いつもなら缶のまま飲むところを、きちんとグラスに注ぎます。しかも、キリン特製の専用グラスに……。


 ――う、美味い。


 一息でグラスを飲み干しました。口内だけでなく喉も使って味わいます。ゴクゴクゴク……美味い。特徴的なのは青くて軽やかなホップの香り。暑い夏を忘れさせてくれる、そよ風の様な清涼感。ビール特有の苦みはあまり感じられず、喉の渇きを癒してくれる。このビールの味を、ダイチも味わったんだな~、と想像してみました。


 ――僕も、このビールが好きだわ~。


 贈答用の商品ではありますが、商品の品質を考えれば安いと思います。これまでに1缶1000円もするビールも飲んできましたが、そうしたビールは毎日飲むことは出来ません。でもキリン一番搾りプレミアムなら、普通のビールよりも少し高いだけ。なんだか記憶に残ってしまったので、夏になると定番のように買い続けるビールになるような気がします。

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