表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だるっぱの呟き  作者: だるっぱ
245/495

久しぶりにフルーツキーマカレーを作ってみた

 バナナを頂きました。果実を扱う仕事をしているのでこんな機会は多いのですが、僕はバナナを食べません。というか果実全般どれも食べません。とはいっても嫌いなわけではありません。お金を出してまでは好んで食べないということです。頂いたので自宅に持って帰ったのですが、実は家族も食べません。バナナの処遇に困りました。このままでは黒ずんでしまいゴミ箱行きです。そういえば、冷蔵庫に林檎があったことを思い出しました。バナナと林檎……。


 ――フルーツキーマカレーが作れる。


 久々に作ってみることにしました。このメニューについてご存じのない方が大半だと思いますが、僕に近しい方はよくご存じです。ていうか、僕のことをいまだに「カレー屋」と呼ばれる方もいます。それくらいに、僕とフルーツキーマカレーは縁があります。


 今から20年ほど前ですが、大阪のオフィス街に「くだもんカフェ」をオープンしました。その時の人気メニューが「フルーツキーマカレー」なのです。テレビや雑誌で紹介されかなり有名になりました。現代では、SNSを通じて情報を発信するというのは定番の行為ですが、当時はスマートフォンがない時代です。そうしたインターネット黎明期に、ブログを通じて情報発信に努めたのが功を奏しました。


 ――キーマカレーなら知っているけれど。

 ――カレーにフルーツを入れるの?


 そうした疑問を持たれた方が、お店に来店されました。いつの間にやら人気店です。しかし、2年を待たずに廃業しました。色々と問題点はありましたが、僕に経営スキルがなかったことが一番の問題です。懐かしい思い出です。


 インド発祥のカレーですが、日本において独自進化を遂げました。現代では、カレーは日本のソウルフードと言っても良いでしょう。家庭でのカレーレシピには様々な工夫がなされていますね。隠し味にインスタントコーヒーを入れたりとか、他にも、味噌、醤油、ソース、はちみつ、ヨーグルト、赤ワイン、チョコレートとか有名です。お店で提供していた頃は、フルーツキーマカレーに様々なフルーツを使っていました。バナナ、林檎、アボカド、パイナップル、キウイ、パパイヤ、オレンジになります。これらのフルーツは、フルーツキーマカレーにおいては隠し味ではありません。スポーツでいうところの主力選手、演劇でいうところの看板役者、大量に使っていました。


 今回は、バナナと林檎だけになります。お店で提供していた頃の派手さはありませんが、基本的なベースは作れます。特に、バナナが重要になります。バナナは熟して甘くなったものよりも、青めの方が良い。青い方が、でんぷんが多いからです。カレーの存在感をグッと太くします。作り方は、一般的なキーマカレーの作り方と一緒です。スパイスを使うので、カレールーを使うよりも難しく感じられるかもしれません。でも、慣れれば簡単です。ただ、少しだけ注意点があります。カレールーを使う場合は最後にルーを入れて味を調整しますが、キーマカレーの場合は最初の玉ネギや肉を炒める段階でスパイスを使います。スパイスは、油で炒めることによって香りが引き立ちます。後から入れたのでは粉っぽいうえに美味しくありません。この手順を間違わないでください。


 僕はキーマカレーに豆を入れるのが好きなので、今回は大豆を使用しました。ほぼ完成したキーマカレーに、茹でた大豆を入れます。普通であれば、これで「大豆のキーマカレー」の完成になります。これだけでも、間違いなく美味しい。ここに、フードプロセッサーでピューレ状にしたバナナと林檎を投入して、グツグツと更に煮込みます。最後に、塩コショウを入れて味の調整を行いました。


 当然のことながら、とてもフルーティーなほんのりと甘いキーマカレーが出来上がります。スパイスのトゲトゲとした味わいがありつつ、とてもまろやか。食べたことがない方にとっては、辛さと甘さが共存するのか不思議に感じると思います。でも、料理をしていれば分かることなのですが、日本料理は味付けの際に甘さを重要視します。肉じゃがを作る時、砂糖やみりんが無いと美味しくありません。スパイシーなだけのカレーも美味しいのですが、フルーツキーマカレーは辛さと甘さを共存させるのです。一度、食べれば納得の味だと思います。ただ、今回のフルーツキーマカレーは何かが足りませんでした。もちろん、初めからフルーツの種類が足らないのですが、何とかしたい。冷蔵庫を開けると、レモン果汁の瓶がありました。


 ――ああ、これだ!


 迷いなく、出来上がったカレーにレモン果汁を入れました。入れすぎたら取り返しのつかないことになるので、味を確かめつつ酸味を投下していきます。酸味って、ナイフのような切れ味があります。丸くなりすぎて輪郭が見えなかったフルーツキーマカレーを、スパッスパッと切っていきます。すると味が立体的になってきました。エッジが立つというか、個性がハッキリと浮き出てきます。これこそフルーツキーマカレー。


 家族が寝静まっている朝、布団から這い出た僕は台所に向かいます。大量に作っていたのに、フルーツキーマカレーが食べつくされていました。こういうのって、普通に嬉しい。経験から、フルーツキーマカレーは日持ちがしません。時間が経つと、何故か味が抜けてしまうのです。多分、フルーツを使っているからでしょう。


 料理を作ることと小説を書くことは、何処か似ています。料理は、材料を揃えるところから始まります。材料が揃ったら、調理の前段階として包丁で加工します。火を加えたりするのはその後になります。僕は聖徳太子の物語を書くと宣言していますが、まだ調理するための材料が揃っていません。とりあえず、使えそうな材料を集めてきて、僕なりに咀嚼している段階になります。まだまだ時間がかかりそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ