たべものラジオ
暑さ寒さも彼岸までと言いますが、あんなにも暑かった気温が連休を経てから幾分和らぎました。中央市場で取引する商品もブドウや柿、それから栗を扱うようになり、季節が秋であることを感じさせてくれます。不思議なもので、季節が変わると口も変わります。夏場はソーメンや冷麺を好んで食べていたのに、今はあまり欲しくありません。昨晩は、久しぶりに鍋を堪能しました。ビールと日本酒を用意して、豆腐や豚ををつつきます。とても美味しかった。よい出汁が出来たので、今晩はその残り物でシチューでも作ろうかと考えています。
季節が変わって始めたことがあります。糠漬けです。先週からぬか床を作り始めました。毎年のことですが、初夏に差し掛かった頃にぬか床を腐らせてしまいました。気温が高くなると発酵するスピードが上がるので、気を抜くと途端に酸っぱくなるのです。冷蔵庫に入れると良いと言いますが、我が家の冷蔵庫にはぬか床を入れるスペースがありません。ですから、毎年、秋になってから作り直すようにしています。
昨晩の鍋の用意の合間に、胡瓜と茄子を漬けました。今晩から食べることが出来ます。非常に楽しみにしております。美味しく仕上がった糠漬けは、旨味がギュッと閉じ込められていて、且つ素材の美味さを楽しむことが出来ます。また、醬油も美味しいものを用意することが大切です。刺身に対して刺身醤油を用意するように、糠漬けもそこは手を抜いてはいけません。やっぱり醤油が美味しいと、美味さが格段にアップします。
美味しい糠漬けは、日本酒との相性がすこぶる良い。日本酒は西洋のお酒と違って、少し控えめです。その控えめさは、料理の美味しさを引き立てることに役立っています。例えば、ウィスキーは暴力的な力で美味しさを主張します。どんな料理を用意しても、ウィスキーの前では霞んでしまいます。対して、日本酒は調和を重んじます。日本酒だけでも美味しく楽しむことが出来ますが、和食と合わせる時にその真価を発揮します。聖徳太子は、「和をもって尊し」と宣言しましたが、料理の世界でもその精神が生きているように思います。なんちゃって……。
ポッドキャストで配信されている「コテンラジオ」を聞いている話は、何度か紹介したことがあります。コテンラジオのお陰で、僕の中に歴史観が身に付いたことが大変うれしい。聖徳太子の物語を書くうえで、歴史観はとても必要なスキルになります。そんなコテンラジオを紹介してくれたのが嫁さんなのですが、その嫁さんが次に進めたのが「たべものラジオ」になります。興味はあったのですが、ポッドキャストを聞くためには時間が必要で、2つの番組を同時には聞けません。そんな後回しにしていた「たべものラジオ」を、昨日から聞き始めています。ポン酢の話を聞いた後、今は味噌の歴史を聞いています。非常に面白い。
料理を作ることが好きなので、この番組の僕との親和性はとても高い。それだけでなく、食にまつわる歴史を知ることが出来るということが、僕にはとても重要なのです。古代の日本において、人々がどのような食事をしていたのかを、僕は知りたい。イメージしたいのです。以前に、古墳から発掘された大釡は、お酒を作るために使用された話を紹介したことがあります。当時のお酒は、国家事業として醸造されていました。祭祀とお酒は、とても密接な関係だったのです。そこから、人々が生活する様子が垣間見えませんか。まだまだ聞き始めたばかりですが、とても期待しています。
そう言えば、糠漬けは平安時代には食べられていたようです。もしかすると、稲作が始まった弥生時代から、既に人々は食べていたかもしれません。歴史ある古い古い日本料理になります。そうした古代に思いを馳せながら、今晩は糠漬けをツマミにして日本酒を楽しみたいと思います。