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だるっぱの呟き  作者: だるっぱ
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久々に走りました

 どうにも居たたまれなくなり、走りました。家を飛び出して千里丘丘陵に向かいます。その丘陵では1970年に万国博覧会が開催されました。岡本太郎が制作した太陽の塔が丘の上に立ち、現在も僕たちを睥睨しています。万博の跡地は公園として整備されており、その周りを時計回りにしか走れない自動車道が堀のように丸く囲んでいます。歩道は整備されており、ランニングコースとして人気です。一周5kmという丁度良い距離感。一周二周と周回することで距離の調整もしやすい。


 走りたくて走ったのですが、僕には一つの問題がありました。左ひざの故障です。昨年、久しぶりにマラソン大会に出ようとしたのですが、練習を重ねていくと膝に水が溜まるようになりました。僕は二十歳のころに交通事故を起こしたことがあります。その時、左膝の皿を割りました。歪に変形した膝の皿が、激しく動くことで膝の内部を傷つけるのです。結局、昨年はマラソン大会を棄権しました。


 そんな僕ですが、40代の頃はそれでも走ることが出来ました。100kmマラソンも完走しています。しかし、50歳を超えた僕の膝は、コロナの3年間、全く走らなかった所為ですっかり弱っていました。そのまま走ったのでは、また水が溜まります。ですから、サポーターを巻きました。


 具合が良かったです。膝に負担がかかりません。久々に飛び出して気持ちが良かった。走る……なんて表現をしていますが、全く速くありません。歩いている人をやっと追い抜けるくらいのスピードです。ランニングは早く走ると故障のリスクが高まります。ですから、ゆっくりで良い。コツコツと走ります。


 暑かった。汗が噴き出ます。タオルで汗を拭いますが、どんどんと流れてきます。見知った街並みを抜けて、千里丘丘陵の麓にやってきました。そこから上り坂が始まります。その辺りから、ランニングを楽しむ人がチラホラと現れます。万博の外周道路にたどり着くと、更にランナーが増えました。みんな速い。レベルが高い。とんでもなく速い人もいます。でも、僕はゆっくりと走ります。足の故障が無ければ、無理して追いかけていたと思うのですが、自分を抑えました。ゆっくりと走ることが大切です。


 万博は良い。道は整備されているし、緑があります。鬱積されたストレスが解放されて、とても気持ちが良い。走りながら、最近お気に入りの「コテンラジオ」を聞きます。今回のテーマは、第一次世界大戦でした。


 2000万人という途方もない人々が死んでいった戦争が、なぜ起こったのか。その事実を、様々な角度から語っていました。ほんの100年前の出来事です。人を大量に殺すことが出来る技術の進化という背景もありました。フランス革命で生まれた「人権」という概念が帝国と打ち負かしましたが、同時にナショナリズムという概念を生み出します。


 当時の人々は、誰も世界大戦になるとは想像もしていなかった。ほんの小さな出来事で収束すると、皆が思っていたようです。それこそ、オリンピックで自国を応援するような感覚で、多くの人が戦争という舞台に飛び込んでいったのです。戦争は始めるのは簡単ですが、終わることが難しい。


 戦場では、塹壕が掘られました。ドイツとフランスの間を700kmにも及ぶ塹壕が長く長く掘られたようです。その塹壕に隠れて、兵士はライフルや機関銃を構えます。雨が降る様にミサイルが落ちてきました。戦場は膠着しています。列車に人が載せられて、次々と戦地に送られました。まるで消耗品のように人々が死んでいきます。でも、そうした現地の情報は自国では知らされません。情報は操作され、指導部は国民を煽ります。ナショナリズムに突き動かされた人々は、男の兵士だけでなく女も子供も戦争に加担することが正義だと信じました。


 僕は、コツコツと走ります。走りながら無力感を感じました。戦争という悲惨な状況は、体験した人にしか分からない。戦争が終わった後、多くの方がその悲惨さを語りました。記録にも残っています。しかし、体験した先輩たちは、今はもういません。世代が変わり、戦争を知らない僕も50歳を超えました。現代の日本に、戦争を体験した人はほとんどいません。何も出来ませんが、戦争の悲惨さを理解しようとする行為は、必要だなと思いました。

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