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だるっぱの呟き  作者: だるっぱ
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「進撃の巨人」に思うところ

 最近、アニメ版の「進撃の巨人」を観ています。漫画は完結していますが、アニメ版の完結は、今年の秋だそうです。日本だけではなく、海外でも多大な影響を与えた傑作で、単行本の販売は一億冊を超えているそうです。それほどまでに有名な作品ですが、僕は最後まで読んでいません。アニメを観ながら、現在進行形で「進撃の巨人」の壮大な世界を楽しんでいます。


 ネタバレにはならないように僕なりの所感を綴ってみたいのですが、「進撃の巨人」の最初の掴みは、巨人によって人間が食べられるという残酷な現実です。巨人が人間を両手で掴み、頭からガブガブと食べるのです。かなりショッキングなシーンで、冒頭から主人公のお母さんは巨人に食べられてしまいます。幸せな生活が、一瞬にして破壊されてしまいました。


 ショッキングといえば、それ以上に残酷な描写をした映画なり漫画は他にもあります。ただ、この漫画はショッキングなだけでは終わらない。その得体のしれない巨人という存在の秘密について、何重にもベールが掛けられています。その秘密が少しづつ表面化するごとに、物語は新しい展開を迎え面白さが加速していくのです。その手法がとても素晴らしい。感心して観ています。


 何かしらの物語を表現するとき、その世界観を読者に伝えるには注意が必要です。解説文で詳細に説明することは出来ますが、読者はそんな説明文は読みたくありません。面白くないからです。時々、小説の冒頭に物語の世界観を説明している方がいます。作者の思いは分かりますが、それは読者に予習的な勉強を強いるようなもので、よっぽど作者に思い入れのある読者でなければ、その時点で読むことをやめてしまうかもしれません。特に、小説という媒体の場合は、文字だけで描写します。説明文は、書けば書くほど重くなります。


 少し脱線するのですが、僕も小説を書いています。この世界観を表現することに悩みました。僕の小説は、一人称視点で描かれています。「僕は、」で始まる文章です。見えているものを説明したり、考えていることを表現したりすることは出来ますが、世界観を説明するのは苦手です。三人称視点なら、ナレーター的に世界観を説明しても違和感は少ないです。ところが一人称視点で、世界観を説明すると没入感が削がれます。主人公が、独りでブツブツと喋っている変な人になってしまいます。それはスマートじゃない。なるべく自然な形で世界観を読者に伝える工夫が必要です。


 拙書「逃げるしかないだろう」で一年近く推敲に時間を使いました。その推敲で、無機質で説明文的な文章を、情感あふれる一つのエピソードとして展開したりしました。説明文だと5行10行で済む世界観の説明が、エピソードとして展開すると数ページになったりします。それで良かったのか悪かったのかは難しいところですが、僕自身がとても勉強になりました。文章における表現の仕方について、僕自身の理解が深まりました。


 小説と違って、漫画やアニメの場合は、絵柄で世界観を伝えることが出来ます。小説に比べて、圧倒的に表現力の幅が大きい。例えば「進撃の巨人」は石造りの中世の世界観で描かれています。描き込まれた石の家、石畳の道、高い高い石の城壁。そうした描写を見るだけで、読者は一瞬で中世の世界だと理解することが出来ます。


 ところが、文章で表現するとなるとこれは大変です。一定の説明は必要ですが、説明しすぎるとスピード感が無くなります。ある程度は、読者のイメージをお借りして端折り、全体的なバランスを考えないといけません。事細かに石造りの街並みの説明は最初だけにして、それ以降は「中世の~」と一言で表現した方が良い場合もあります。ちょっと、技術的な話になりました。「進撃の巨人」の話に戻ります。


 この作品の上手な所は、テーマがはっきりしていることです。ズバリ「巨人」です。冒頭で巨人によって人間が食べられるという描写で、圧倒的な力に蹂躙される理不尽な世界観を読者に見せつけます。物語の前半のテーマは、――巨人とは何なのか?――です。巨人の秘密が少しづつ暴かれる度に、物語は急展開を見せます。その話の運び方が上手い。


 後半のテーマは、巨人の存在が明らかになったうえで――俺たちはどうするのか?――です。前半は、激情的な主人公を中心に物語が進んで行くのですが、後半は主人公の視点が消えてしまいます。秘密のベールが主人公に被せられてしまい、何を考えているのかが分からない。主人公を取り囲む登場人物は主人公に振り回され、右往左往する姿がドラマになっています。上手いなーと思います。まだ、最後を知りませんが楽しみです。これだけ広げた話をどのようにしてまとめるのだろう……。


 僕もいくつか小説を書いてみましたが、最後のクライマックスは難しい。腑に落ちるというか、ストンと収まれば良いのですが、簡単にはいきません。巨匠の宮崎駿は、映画「風の谷のナウシカ」のクライマックスには納得していなかったそうです。言い訳するように漫画「風の谷のナウシカ」で、全く違う解釈を披露しました。宮崎駿ですら、クライマックスには悩みます。


 「進撃の巨人」は、僕にとって良い教材です。とても勉強になります。今後、僕が新たに生み出すであろう物語の為に、色々と研究させて頂きます。いやー、面白い作品です。

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