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だるっぱの呟き  作者: だるっぱ
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テーマを考える

 創作活動において、「テーマ」は重要です。ここで、テーマの意味について参照したいと思います。


 テーマ――

「精選版 日本国語大辞典」

① 催し、創作などの基調として、その全体を通して表わそうとした考え、思想、観念。主題。

(イ) 文学、美術、映画などの作品の主題。

(ロ) 演説、討論、研究、論文などで扱う、中心的問題。題目。

(ハ) 展示会、博覧会などの催しの基調。多くは標語のような形で表わされる。

② 音楽で、楽章・楽曲の中心となる旋律。主題。

③ 社会的な課題。問題。

――――4


 テーマを浮かび上がらせるというのは、その作品の個性を際立たせるということです。テーマがない作品のイメージは、音楽に例えるとロックと演歌とジャズとクラシックがごちゃ混ぜに演奏されるようなものでしょうか。意図的に混ぜるというテーマなら、それもありかもしれません。しかし、普通はグロテスクだと思います。統一感がなくなり、個性が無くなり、輪郭がぼやけてしまいます。テーマとは伝えたいものです。出来れば明確にした方が、分かりやすくて美しいと思います。


 小説の場合のテーマは主題です。物語を通して伝えたい何かがあります。その主題を浮き上がらせるために、物語を組み立てていきます。トリックをテーマにした推理なら、そのトリックを匂わせつつ最後まで明かさない。そうした読者との知恵比べが面白い。恋愛小説にしても、古典的なものに始まって、現代では、百合、BL、こじらせ等、様々なジャンルが派生を見せています。どのような物語にせよ、起承転を経て、最後の結でテーマが語られる。この時に、読者の感情を大きく揺さぶることが出来たら最高です。


 今回、僕が創造した物語「逃げるしかないだろう」をkindleのペーパーバックを使って、紙の本として出版できました。まだ、現物は手元に届いていませんが、感慨深い。


 今回の作業にあたって、自前で表紙を用意しなければいけませんでした。インターネットで検索すると、表紙は外注することを勧める方が少なからずおられます。同じ創作活動でも、文章を編み出すスキルと、表紙のイラストをデザインするスキルは別物です。外注した方が素敵な表紙になるでしょう。


 しかし、僕は趣味で製本をしています。売り上げを伸ばす為に、キャッチーな表紙を欲しがっている訳ではありません。というよりも、表紙を作ることそのものに、興味がありました。ただ、表紙のイメージを考えるのは難しいことです。先程から述べている、僕の作品のテーマから考えることにしました。


 「逃げるしかないだろう」は、僕が子供だった1980年を舞台にしています。80年代という時代感を大切に表現しました。現代はスマホの時代ですが、当時は黒電話です。黒電話の受話器を持ち上げダイアルを操作する描写を、わざわざ書き込みました。今の若い方に伝えるためには、それくらい丁寧にしないと伝わらないと思ったからです。僕ぐらいの年齢の方が読むと、逆に懐かしく思ってくれるかもしれません。同じ電話でも、公衆電話の場合は、硬貨が必要です。無い場合は、わざわざ自動販売機でコーヒーを買って小銭を用意させます。電話機の上に硬貨を積み上げて会話をするシーンを描写しました。


 そうした1980年は、もう40年以上昔の話です。その時代感と物語の題名である「逃げる」を関連させた表紙が欲しい。逃げることをテーマにした画像は、もう用意が出来ています。以前にも紹介したことがありますが、これは高校生の次男に活躍してもらいました。


 今だから言えるのですが、半年前にこの物語の前半部分である「上巻」を電子版のkindleで出版した時、僕はコロナに罹っていました。僕のコロナが家族の長男と次男にも伝染します。長男はホテルで隔離されることを希望したのですが、僕と次男は自宅療養を選びました。


 当時、地元の病院では、コロナの疑いがある患者は、通常業務が終了した夜20時から診察を受けることが出来ます。出かける時に、僕は次男にお願いしまいた。


「パパからのお願い。カッターシャツとスラックスで病院に行って欲しい」


「なんで?」


「帰りに、写真を撮るから」


 強引な父親です。表紙を作るために次男をモデルにすることは、まあ良い。ただ、そのタイミングがコロナ診察の後、しかも夜。可愛い次男は、僕の要求に付き合ってくれることになりました。ありがとう!!!


 病院帰りの路地裏で、通行人が少ない時を見計らって、次男に走ってもらいます。僕はスマホを構えて、その後ろ姿を撮ります。


「大袈裟なくらいに、手を振って走って!」

「足を大きく、振り上げて!!」

「それ良い。もっと靴の裏を見せて!!!」


 無理難題を、コロナ患者の次男に浴びせかけます。酷い父親です。通行人は、変な顔をしながら横を通り過ぎていきます。そんなこんなで写真が出来上がりました。納得の出来です。当時、「上巻」をkindle出版するときは、目立つ表紙にしたかった。次男の写真を画像処理で手書き風に変更します。その次男の走る後ろ姿に、ビビッドなオレンジ色で目立つ題名をあしらいました。悪くはない。多くの方に読んでもらうことを期待して、kindle出版しました。


 「上巻」が出版された当時は、僕なりの宣伝効果もあり多くの方に読んで頂けました。ありがとうございます。瞬間的にはランキングにも顔を出します。しかし、そうした効果はいつかは切れるものです。そうした営業活動的な行為を続けることに、僕なりにストレスがありました。それよりも「下巻」の推敲に時間を使いたい。「下巻」の推敲は時間が掛かりました。「上巻」の推敲が一ヶ月だったのに、「下巻」は半年もかかります。その詳細は脱線するので割愛しますが、テーマの掘り下げに悩んだのです。


 全ての推敲が終わり、とうとう最後の目標であるペーパーバックの出版です。その表紙は、変更することにしました。以前の表紙も悪くはないのですが、ちょっと派手過ぎる。もう少し落ち着いたイメージが欲しい。次男が走る後ろ姿は、もちろん採用します。その上で、新しい何かが欲しい。


 先程も言いましたが、この物語は1980年です。その頃は、ファミコンはありません。テレビ全盛期。映画はまだフィルムの時代でした。そうした空気感を表紙に表現したい。考えた末に、全体的にセピア風にしました。ちょっと古臭くなります。更に、素材からフィルムを選びました。この物語に、映画的な要素は少ないのですが、フィルムが持つ古さを借りることにしました。この作品が映画になれば……そんな妄想にも浸りながら。


 あと、「上巻」と「下巻」の違いも必要です。ベースは同じです。ただ、題名のイメージカラーを変えました。「上巻」は青色。「下巻」は赤色です。「上巻」は主人公のジョージが逃げるまでの話しです。青臭いということで「青」。「下巻」のジョージは運命に立ち向かっていきます。だから、情熱の「赤」。そんなこんなで、表紙が出来ました。


 AmazonのKDPサイトを開き、データをアップロードしました。普通は校正刷りを繰り返して、問題の個所を確認して出版します。ですが、せっかちな僕は早速出版しました。


 ――早く手にしたい!


 今は、その気持ちだけです。ただ、皆さんにはあまりお勧めしません。なぜなら価格が高いからです。僕の利益は無しです。Amazonが示す最低価格で販売しています。

 「上巻」1100円

 「下巻」1400円

 この価格に、運賃が上乗せされます。上下巻の価格の差は、ページ数の差です。紙代、インク代、製本代、それぞれを計算してAmazonが算出した価格になります。同じ内容は、ネットで公開しています。ただ、若干文章は変更されてアップグレードしています。その内容を、ネットに反映できなくはないのですが、しません。時間が掛かるから。


 この「逃げるしかないだろう」のプロジェクトは、これにて終了です。今は、解放された気持ちで一杯です。今後は、次の物語にむけて沈みます。兎に角、今は情報を僕の中に詰め込まないといけない。勉強します。今まで、この「逃げるしかないだろう」に縁してくれた皆さま、改めてお礼を述べます。


 ありがとうございました。

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