タイパ
スマホを開くと、Z世代のトリセツ(古い!)に関しての記事を観ることが多くなりました。現代の若い子たちです。当然、僕の息子たちも含まれます。Z世代の特徴は、デジタルネイティブだということです。生まれた時から、パソコンがある、スマホがある。デジタルな世界が当たり前な中で、育ってきました。
僕は現在、一九八〇年の日本を舞台にした物語「逃げるしかないだろう」を、毎日投稿していますが、この時代は、まだファミコンすら登場していません。娯楽の主役は、カラーテレビです。今年五十三歳になる僕は、そんな時代の人間でした。
そんな僕たちと、Z世代の大きな違いは、晒される情報量の多さです。僕たちテレビの時代は、テレビの時間割に合わせて、テレビを観ていました。夕方の五時になれば、何かしらのアニメが始まります。次の日に、昨日見たアニメの話で、友達と盛り上がりました。
ところが、Z世代はテレビを観ない。テレビを点けたとしても、アマゾンプライムやネットフレックスです。膨大なコンテンツが表示され、どれかを選ぶことすら難しい。また、同時並行でYouTubeも観なければなりません。
そうしたZ世代の視聴方法を知っていますか?
僕では考えられないのですが、倍速だそうです。他にも、スキップという荒業も使うそうです。会話内容だけに集中して、状況描写はカット。この傾向は、大人気のアプリケーションTikTokにも表れていて、面白い所だけ抽出できるというシステムがウケているそうです。
こうした時間短縮をして多くの情報を手に入れる。この行為を、タイムパフォーマンスと言うそうです。略して、「タイパ」。
小説を書くようになってから、勉強の為に古い映画を集中的に沢山観ていました。古い映画に共通するのは、「間」です。シーンとシーンの間の、「間」の取り方が長い。退屈なくらいに長い。僕ですら、スキップをしたくなる映画は沢山ありました。それに比べて現代の映画は、テンポが速い。次々と話が進んで行き、観る人を飽きさせません。
ただ、倍速となると、僕も頭を捻ってしまいます。ただ、今のネット環境では倍速やスキップ機能が標準で装備されています。また、装備していないとZ世代に購入されないというマーケティングな意味合いもあります。今後は、この流れが標準なのでしょう。ただ、タイパの弊害はあると思います。表面だけ掬い上げて、裏を見ていない。そんな気がするのです。
物事には表面的な出来事だけでは評価できない事柄は沢山あると思います。そこを見ずに、物事の白黒を決めていくのは軽率だと思うのです。昔は、間延びする様にゆっくりでした。しかし、そこには直ぐに決断をしない、思慮深さもありました。
どちらが良い悪いという話にはしたくないのですが、タイパな世界は、ポピュリズムに飲み込まれてしまうようで怖いです。表面的な善悪で、物事が断罪されていくようなら、それによる多くの被害者が生まれる様な気がします。腰を構えて考える。そんな事も必要だとは思うのですが……。