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最強の幼馴染  作者: 武藤 勢
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1話

誤字脱字注意!

ある冒険者三人グループを敵に回してはいけない。絶対に二倍……いや10倍返しで返り討ちに遭う。

 「ねぇ、俺達は君の後ろにいる子に道を聞きたいだけなんだけど」

「そうそう。だからさ、そこどいてくれる」

体格の良いチャラそうな長髪と刈り上げの男二人が、ニヤニヤしながら人通りの少ない一角を囲うように立っていた。

 「道案内ならこの子の代わりに僕がします。だから、少し離れてください」

二人の間から男にしては高い、まだ変りをしていないような声がした。その声の主はさらっさらの髪に大きな黒い瞳が特徴の可愛らしい女顔、痩せ型で160ちょっとの小柄な身長、長袖・長ズボンの冒険家のような服を身に纏った少年である。彼はその大きな瞳を男たちにまっすぐ向けている。その後ろにはふわふわな髪を手で押さえブルブル震えている少女がいた。

 「走れる?」

少年がちらっと少女を見ながら聞くと少女は小さく頷いた。

 「おやおや、何コソコソ話しているんだ」

刈り上げの男が一歩前に出た。

 その瞬間少年がウエストバックから小さな球を取り出すと下にたたきつけた。

辺りに煙が広がりゴホゴホと男たちが咳をする。少年はくるっと向きを変えて少女の腕を捕まえ走り出した。

やがて煙幕が収まると男たちが、待てー!と追いかけてきた。

少し距離があるが逃げ切れるほどの距離ではないそのうちに追いつかれるだろう。普段ならもっとちゃんと装備していたのにあいにく今はバイト帰りなので常時具えている小型のモノしかなかった。

仕方ない。僕に注意を向けて残りの装備で何とか逃げ切ろう。もし余裕があったらアイテムボックスから何か取り出そう。そうすれば何とか逃げ切れる。

少年は、少女の手を放し、男たちに向き合い足を止めた。

「そのまま、走って逃げて」

少女は頷くと走って逃げていった。

「おいおい、何だぁ。僕が相手になるってか」

「ガキが、王子様気取りですか」

男たちは走るのを止めポキポキ指を鳴らしながら歩いてきた。

 もう一度煙幕でその後追ってきた早い方をしびれ玉でもう一人は仕方ない何とか撒こう。

男たちとの距離がじりじりと近くなる。

 ……もう少し、もう少し。今だ!

ウエストバックから球を取り出そうとしたとき

 「同じ手は食わないぜ」

刈り上げの男がバっと走り少年の胸ぐらを捕まえて上にあげた。少年が何とかしびれ玉を取り出そうとすると。

「おーっと。これは外しとくぜ」

と、長髪の男がウエストバックを外した。

「ん?よく見たらこいつ可愛い顔してんじゃん」

「おっ。ほんとだ、さっきの子より俺タイプかも」

二人がニヤニヤ話している。

 ん?ばかでかい荒立っている魔力が二つ、すごい速さでこっちに来てる。目の前の二人は気持ち悪い顔で話をしていて気づいていない。……ご愁傷様です。

ボッキ!

 僕はそのヤバイ音と同時に誰かに抱えられた。

「おい、てめえら。〝フェア〟に何してくれてんだ」

逆立った金髪の髪、端正な彫りの深い顔、背の高い引き締まった体、腰に剣を携え青色の勇者服を身に纏った青年がフェア(捕まっていた少年)を抱え、その青い瞳で男たちを睨んでいる。

 「痛ってーーー!」

刈り上げの男が悲鳴をあげて右腕を抑えた。

 あっ、やっぱりあの音は折れたよね。早く回復魔法かけてあげないと。

 そう思いフェアがレオ(フェアを抱えている青年)に声をかけようとしたとき。

 「念力(サイコキネシス)

凛とした女性の声と共に長髪の男の指がウエストバックから離れ、ウエストバックはそのまま声の方に行き、男の体はいったん宙に浮いたと思うとそのまま投げられるようにレンガの建物に打ちつけられた。

 声の方を見ると艶のある長い茶髪に声と同様に凛とした顔、すらりと高い身長に長い手足、出る所は出ているが全体的に引き締まった体、赤い長袖と膝上の赤いスカート太ももまである茶色い靴下を履いた手に杖を持った女性が立っていた。

 そしてカバンを持つと慌ててこちらにやってきた。

 「フェア~。良かった無事で」

ブルジナ(凛とした女性)はレオからフェアを奪うとギュッと抱き着いた。

「いい加減、フェアから離れろ」

レオが怒ったような声を出しブルジナを睨んだ。

「何よ、さっきまでフェアをお姫様抱っこしていたくせに、まだこうしてたっていいじゃない」

ブルジナもレオを睨み返した。

 二人の間で火花が散る。

「……く、苦しい」

無言の圧を破ったのはフェアの潰れた声だった。

「あっごめん」

ブルジナはフェアから体を話すと心配そうに顔を覗き込んだ。

 「僕は大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」

フェアがふわりと笑う。

《かっ、可愛い~。天使降臨!》

レオとブルジナは表面上は笑顔でいたが心の中の二人は悶えて見えない壁をバンバン叩いていた。

「私の転送(テレポート)で帰りましょ」

「そうだな、帰ろう」

そういうとブルジナがフェアとレオの背中に手をついた。

「ちょっと待って、それよりまずやる事あるよね」

フェアが二人に尋ねた。

「やる事?……分かった。左腕も折る。いや、鉄拳を加える」

「私は(ジ グラウンド)の(オブ)大地(ブレイズ)で焼き尽くすか」

「違う!」

フェアはもっと制裁を加えようとする二人のおでこに背伸びしてデコピンした。

「まずは、あの人たちの手当てでしょ」

「はぁ!あいつらフェアに攻撃しようとしてたんだぜ」

「そうそう、しかもフェアのバック奪ってたのよ」

「フェアに手ぇ出したやつは二度と出さないよう肝に銘じさせないと」

二人の声が重なった。

 フェアは、だめだこりゃと頭を横に振った。そして、二人を置いて刈り上げと長髪のもとに行き回復魔法をかけようとした。

「……分かったわ。でも待って、私がやる」

仕方ないという様に渋々ブルジナがこっちに歩ききながら言った。

「ありがとう」

フェアが花のような笑顔で言った。

《可愛い。何時間見ても絶対に見飽きないこの笑顔》

心の中で二人はまた心の中で悶えた。

「巻き戻し(リワインド)」

ブルジナが杖をかざすと灰色の魔法陣が杖の前に現れ、二人の体が灰色の光に包まれた。みるみる二人の傷が消えて折れ曲がっていた手も元の向きに戻っていく。

 男たちも悲鳴を止めゆがんだ顔が痛みが消えたことにより元に戻っていった。「あれ」「ふぇ?」というような素っ頓狂な声を数回発した後、目の前にいるブルジナと少し離れたところにいるレオを見て目を見開いて震えた。

 「お、俺夢見ているのかな。目の前に世界で唯一全魔法が使える天才魔導士と剣を握らせたら敵なしと言われる天才剣士がいるように見えるんだけど」

「いや、俺もそう見える……」

「私達がなんだって」

ブルジナが震える二人に脅すような威圧をかけながら言った。

 「本物!十歳で世界最高峰のハルティビア魔法学校に入学、半年で総代となり魔法学校創設以来の天才その年に卒業。その後たった二年ですべての魔法を無詠唱で使えるようになった。世界最強の魔道士ブルジナ!」

 「てことは、あっちにいるのが同じく十歳で世界最高峰のクロフィス剣術学校に入学、二年後総代となり、その半年後それまで最強と言われていたライザット騎士長との一本勝負で勝利し、その年に卒業した。世界最強の剣士レオ!」

男二人の顔が明らかに青くなった。

 確かに世界最強と言われる二人からにらまれ威圧されたら誰でも震えちゃうよね。何か、ごめんなさい。

 「フェアが言うから怪我をなくしただけで俺達はまだ腹の虫治まってねぇからな。痛い目見たくないならさっさと立ち去れ」

 「ひい」

男達が四つん這いで少し歩き、立ち上がり走って逃げていった。

 ……本当にごめんね。

 「さあ、今度こそ帰りましょう」

ブルジナがそういうと、レオがフェア達の方に歩いてきた。

 タッタタッタ……

 走ってくる靴音が聞こえる。魔力や軽い靴音からさっきの人達ではないことは分かる。まあ、二人に威圧かけられて戻って来る人はいないと思うけど……。

 「あ、あの……先程は助けて下さり、ありがとうございました。」

先程の少女が少し息を弾ませてフェアに頭を下げた。

「いいよ、お礼なんて。でも、無事でよかった。逃げる時とか怪我してない?大丈夫?」

「はい!大丈夫です」

少女が頭をあげて笑顔で言った。良かった。とフェアが笑顔で返した。

 「ヤバイ、男女のはずなのに百合の花が見える」

「俺も見える。あそこだけ別空間のように感じる」

ブルジナとレオは、コソコソ話しながら可愛さに震えた。

「そういえば、お前あいつらに回復魔法じゃなくて時魔法使ったよな」

「そう、しかも時間が経過するとちゃんと折れた状態に戻るから、六時間後この街の何処かから悲鳴が聞こえると思うよ。フェアに汚い手で触れて、しかも手を上げようとして、バックまで奪っていたのよ。あの一瞬だけで終わらせるわけないでしょ。しっかりその痛みを持って二度とフェアにひどいことしないように誓わせないと」

「ナイス」

ほわーんというような空気を出して笑顔で話している二人の後ろで真っ黒な二人が拳を合わせた。

 その後二人に気づいた少女が頬を紅潮させながらお礼を言って帰っていき、三人はブルジナの転送(テレポート)で宿に戻った。

 ……六時間後街に汚い悲鳴が響いたのであった。


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