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08.習得

 茂みから飛び出してきたのは、エレナの友達であるハンナだった。


「驚かさないでくださいよ」

「少年、エレナとはうまくいったのかね?」

「俺の目的は達成しました」

「ほう、明日が楽しみだの」


 ハンナは笑いながら立ち去った。


―何だったんだ―


 少し気を乱されたが、ジークは自主トレをすることにした。



 ジークが魔力を感じれるようになって数日が経つ。ほとんどの人が魔力を感じれるようになっている。しかし、その先になかなか行けない。


「くそっ! どうやったら魔力を活性化できるんだ」

「特訓あるのみだろうね。頑張ろう」


 そう言うのは、セシリオ・カベド。二人で水場のある寮の中庭で、自主トレをしている。

 セシリオはジョルディと昔から知り合いらしく、最初の模擬戦で、ジークがジョルディに一太刀浴びせようとしていたのに興味を持ったらしい。それからセシリオが、ジークに話しかけて仲良くなった。

 この数日間で身体強化(ブースト)を習得したのは、三人いる。ノーランとジョルディ、そしてザックだ。ザックは模擬戦でノーランに瞬殺されたが、次席合格だけあって、身体強化を習得するのも早かった。


「くそっ! 早く習得しないと、あいつらとの差がまた開いちまう」

「焦っちゃだめだよ。冷静にならないと魔力を感じ取れないよ」


 焦る気持ちは募っていく。一応ジークは、入学成績が五位である。ほかの奴に負けたくないと思うのは必然と言える。


「頑張っているね、ジーク君とセシリオ君だっけ?」


 そう言って話しかけてきてくれたのは、寮長であるヤンだった。


「寮長…質問いいですか?」

「何だい?」

「魔力の活性化のイメージがわかないんですけど、コツって何ですか?」

「そうだね…僕のイメージは…」


 ヤンは井戸でバケツに水を汲んでくる。

 それからセシリオの質問に、ヤンは親切に答えてくれた。


「まずは、このバケツに入った水を見て。何もしなければ、水は波すら立てずに、ここに存在しているだけだよね? でもこうやって手でかき混ぜてあげると、渦ができる。これが僕の魔力活性のイメージだよ」

「それはなんとなくわかりますが…」

「やれって言われても難しいよね。集中すると魔力を感じ取れる。魔力が感じ取れたら、魔力をかき混ぜるように頭の中で思い描く。その際、集中をさらに深くするんだ。これは練習して慣れるしかないよ」

「頑張ります」


 それからヤンは練習に付き合ってくれた。

 ジークたちは、ヤンの教えてくれたことを意識して、必死に練習した。



 夜も更けてきた頃、希望が見えてきた。


「セシリオ君、今のすごくよかったよ」

「今の…最後のほうは、力がみなぎってきました」

「感覚を忘れないように、もう一度やってみよう」


 セシリオは目を閉じる。

 魔力を感じ取れるようになったジークは、セシリオの変化に気付く。

 通常状態より、魔力の動きが早く、気迫が変わった。


「やったね。それが身体強化(ブースト)の感覚だよ」

「今の状態なら、ジョルディにも勝てる気がする」

「くっそ! 先を越されたか!」


 ジークは焦る。


「ジーク君、焦っちゃだめだよ。冷静になって集中するんだ」


 ジークは深呼吸を三回する。


―今やるべきことは焦ることじゃない。集中…集中―


「雰囲気が変わりましたね」

「いい調子だよ」


―魔力を感じたら、かき混ぜるんだ―


 ジークは力がみなぎる感覚がした。初めての感覚だ。


「おめでとう」

「やったねジーク」

「これが魔力の活性化…身体強化(ブースト)か!」


 今なら何でもできる気がする。


「その感覚を忘れないでね」

「ありがとうございました」


 二人はヤンにお礼を言う。ヤンは笑顔で去って行った。


「さすが寮長だ。学年首席はどの学年もすごいな」




 二人が身体強化を習得し、一週間ほどで五人が使えるようになった。


 風の噂で教官が、今年は才能がある奴が多いと言っていた。


 その評価通り、最終試験までに三分の二の学生は身体強化を習得した。


 最終試験は、魔導騎士団管理の第二演習場と呼ばれる、広大な森で行われる。モンスターの出る広大な森を、三日間で踏破しなければならない。最終試験はチーム戦であり、魔導科と合同で行う。


 騎士科の学生は、チーム決めのためのトーナメント戦を明日に控えていた。

次回から、本格的な戦闘が始まります。

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