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06.戦闘訓練開始

 ジークはエドガーと、朝早くから走り込みをしていた。


「エドガーこんなんでへばってたら、半年後痛い目を見るぞ」


 半年後にジークたちは、訓練課程の最終試験が控えている。

 騎士科と魔導科は、入学してから半年の間、体を徹底的に鍛え上げる。騎士はもちろん、騎士とともに行動する魔導士も、体力がなければ務まらないからだ。

 また、ハンターはこの試験を通過しないとなることができない。ハンターは騎士科または魔導科で、半年間の戦闘訓練を受けることでなれる。学院卒業までは低級のハンターだが、卒業後は実力次第で稼ぎも変わる。ジークの目指す最初の関門が、半年後の訓練課程の最終試験なのだ。

 ちなみに最終試験を突破できなかった者は退学になる。


「わかってるけど、体がついてこないんだ」


 魔導士志望の者たちはエドガーのように、体力の無い者が多い。大半の人は、魔導士は魔法が使えればなれると思っている。昔はそれでよかったが、今は体力がないと務まらない。

 魔導士は魔法を極める弊害で、近接戦闘を不得意としている。しかしそれでは魔力が切れたときに戦うことができない。二五〇年前の世界大戦では、魔力切れの魔導士が、他国の騎士によってたくさん命を落とした。そこで魔力が切れても、体力自慢の騎士から逃げられるように、魔導士にも体力が求められた。


「今の練習を続けていれば、半年後には体力バカになれるぞ」


 ジークは笑いながら答えた。

 エドガーとともに朝の自主トレを始めて、もう一週間が経っていた。今まで、走り込みなどの体力トレーニングをしてこなかったエドガーは、一週間でやっと三キロを走れるようになった。


「そろそろ終わりにするか」

「そうだね。学校に遅れちゃう」


 二人は水場で汗を流してからいったん部屋へと戻った。



 授業が始まり三日、ジークの所属する騎士科では、本格的な戦闘訓練が始まる。


「今日からお前たちには身体強化(ブースト)をマスターしてもらう。使えるようになるまで、早い者は一週間もあればできるが、一か月はかかると考えておけ」

「質問いいですか?」

「なんだ?」


 ある学生が教官に質問をする。


身体強化(ブースト)は魔法じゃないんですか?」

「正確には魔力を使ったスキルだ。体外に魔力を放出するわけではないから、騎士にも扱える」


 身体強化(ブースト)は体内の魔力を活性化させて、戦闘時の能力を底上げする。騎士にとっては必須のスキルだ。通常魔法と違って、魔力を放出するわけではないため、魔法を扱えない騎士でも習得ができる技である。

 生まれたときから全生物が魔力を保有しているが、当然個人差がある。しかし、身体強化(ブースト)はスキルであるため、練習をすればするほど効果も上がる。魔力量に比例しないのが特徴だ。


「コツは体内の魔力を感じること。まぁお前らは騎士科だからな、難しいよな」


 魔法を使えない騎士は、そもそも魔力を感じることが難しい。平均で一か月かかるのもうなずける。


「どうやったら魔力を感じられますか? そもそも魔力ってどんな感じですか?」

「魔力ってどんなのか? それは言葉では表せないな。魔力を感じるには、とにかく集中しろ。体内を流れる何かを感じ取れるはずだ」


 教官の説明だけでは、大半の学生が理解できなかった。ジークも例外ではない。


「わかった。見本を見せよう。センスのあるやつは魔力を感じれるはずだ」


 そう言うと教官は目を閉じる。


 次の瞬間、目をぱっと開けると、雰囲気が変わっていた。


「今ので魔力を感じ取れた奴はいるか?」


 教官のその言葉に反応する者はいないと思ったが、スーッと一人だけ手を挙げた。


「ウィンコット…今ので分かったのか?」

「はい」

「さすが魔法を使えるだけはある。()()()()()を超える逸材ってのは伊達じゃないな」


 ジークはほかの学生が噂しているのを聞いたのだが、ノーランは闇属性以外の全属性を扱えるらしい。そのうえ剣も使えるときたら天才中の天才。九英雄の一人、冥王ロディオン以来の才能だと言われている。


「なら、身体強化(ブースト)も使えるんじゃないのか?」

「やってみます」


 ノーランは目を閉じる。

 ジークは空気の流れが変わるのを感じた。


「ほぉ! やっぱり筋がいいな。初めてにしては上出来だ」


 ジークたち他の学生には、変化を感じれなかった。しかし教官には変化がわかるらしい。


「ほかの者もウィンコットや寮で先輩に聞いて、早く魔力を感じられるようになって、身体強化(ブースト)を使えるようにしろ。今日はこのまま自主トレとする。わからないことは俺かウィンコットに聞け」


 ジークはすかさずノーランにコツを聞きに行った。


「ノーラン、どうやれば魔力を感じられる?」

「最初のうちは難しが、そこらへんに座ってみろ」


 いわれるがまま座る。


「そのまま目を瞑り、感情をできるだけ無にしろ」

「無にするなんて無理じゃね?」

「できるだけと言ったろう」


 無言のまま数分が過ぎる。

 するとジークは、体内に何か()()()ものを感じた。


「何か感じたか? それが魔力だ」

「あれ? 感じなくなっちゃった」

「集中が切れたからだ。慣れないうちは集中している時しか感じることができない」


 その後、ノーランに教わったとおりにやってみたが、ジークは魔力を感じることはできなかった。

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