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クズ のち 転生。  作者: 小寝夢
3/19

卵と森と狼と

あれからどのぐらい経ったのか。

目が覚めた。

いや、既に覚めていた。

というほうが感覚的には近いかもしれないが、とにかく意識は覚醒した。

曖昧な表現に聞こえるだろう。

でも、仕方ない。

何故なら、目も開かないし、うまく身体が動かせないから。

さっきまでと違って、身体の感覚はあるし、全方向同時に見えるなんてこともない。

むしろ、何も見えないので、真っ暗。

身じろぎ位はできるが、とにかく狭い。

しかも、水の中にいる感覚。

不思議と呼吸は苦しくないんだけど、体験したことない不思議な感覚だった。

そこでふと、さっき見たステータスの事を思い出した。


階級:卵


…階級ってのがよくわからないけど、多分これ卵の中ですよね。

今の現状をなんとなく理解できた俺は、ため息をつきたかったけど、それも出来なかった。


ところで、外からなにかの音がするけど、もしかして親龍とかいるのかな?

たしか、龍人とかって言ってたけど、卵から産まれるのか…。


産まれたらどんな姿なんだろう。

イメージ的にはゲームとかで見たことあるリザードマンみたいな顔だけトカゲの顔をした人型のモンスターって感じだが…うーん。

まぁ、百聞は一見にしかずといいますよね。

…だから、なんにも見えないんだっつの。


出口のない思考に、現状に不安を感じはじめたころ、何度も聞いたあの声が聞こえた。


『"魂"の定着が完了しました。』


『条件を満たしました。クラスチェンジを開始します』


‥‥転生前に一瞬感情のこもった声を聞いた気がしたけど。

今、聞いた声は最初に聞いた時と同じ、淡々と告げるだけの機械音声のままだった。


ビキッ


...クラスチェンジって、卵が割れるってこと??

あぁ、そういえば、さっき階級が卵とかってなってた気が、じゃなくていきなりすぎる。


心の準備もできてないんだが…


そんな心の叫びもガン無視でヒビがどんどん広がる音がする。


で…出る…かも…。


遂に卵が割れた。


卵の中に押し込められてた身体がそのまま外に投げ出され、咄嗟に受け身を取ろうとしたが、上手くいかず、そのまま顔から地面にダイブした。


...普通に痛い。


どこからか吹いてくる風を感じる。

それを受けて、ゆっくりと目を開けてみると、そこは青白い光が満ちた、大きな空洞だった。

起き上がって、周りを見ようと思ったけど、力が上手く入らない。

生まれたてだからだろうか?

ゲームみたいなステータスとかあるのに、しっかり現実的なとこがあるな。

仕方が無いので、視線だけ動かしてみる。


...ほんとに違う世界に生まれ変わったんだなぁ。


そこで見たのはこの青白い光の正体だ。

光っていたのは、周りの壁そのものだったのだ。

それもどうやら触れた感触や匂いでこれが木だいうことがわかる。

虫とかが原因で光るとかはテレビで見たことあるけど、木が自分で青く光るなんてのは聞いたことがなかった。


綺麗だなぁ。


現実とは思えない後継に思わず感動していると、また、一つ風が吹いてきた。

ふと、未練はない筈の前の世界のことを思い出した。

もう戻れないと思うと何故か少しだけ、寂しく、後悔にも似た気持ちが沸いた気がした。


...気にしてばかりもいられないか。


そう思って、気を取り直したところで、また風が吹いた。


...おかしい。


身体がうまくうごかせないので、卵から出た時から視線は動いていない。

そして、その視線の先には出入口らしき大きな穴が見える。

穴の向こうは、暗くてよく見えない。

けど、問題はそこではなく、さっきから吹いてくる風がその出入口からじゃなくて、真上から吹いていることだ。


けど、なにもおかしいことはない。

なぜなら、卵の傍にいる存在といえば、それを守るものか食べるものしかいない。

...後者だったら既に命はないので、大丈夫な筈だ。

とはいえ、いつまでもこのままというのもなんなので、俺は渾身の力を込めて!


寝返りをうった。

ふぅ、やりとげた。


そこでまた、目の前の光景に目を奪われた。

そこにはいたのは白く美しい毛並みをした狼だった。


いや、狼というにはおかしいかもしれない。

まず、3~4メートルはありそうな大きさの狼なんて、ジ〇リ映画でしか見たことない。

さらには鼻の辺りからねじれた形で頭の上まで伸びた角がある。

毛の色よりも更に白いそれは、周囲の蒼い光を受けて美しく輝いている。

両の瞳は蒼く、深い色を称えたまま、俺をじっと見つめていた。

しかし、その時の俺はといえば、今の状況を理解する前に、目の前の白狼の美しさに目を奪われ、そして、その瞳に映る自分の姿に…


な、な、なっ…


「キュイイイイイ!(なんだこれはぁ!?)」


突然の俺の雄叫びに白狼?...龍っぽいから白龍狼か?も目を丸くする。

本当に驚いたのかはわからないけど、俺はもっと驚いていた。

それは、生まれたばかりだからじゃなく、まして、今出した、変な鳴き声のせいでもない、いや、それもあるが獣の目に写った俺の姿はどう見ても、人間のそれではない…


ドラゴンだった。それも子供の、短い手足をした生まれたばかりの赤ん坊だ。

額に1本の真っ直ぐな角を持った、ドラゴンだった。


慌てて、首を巡らして、体を見る。肌は黒に近い灰色をしていて、鱗はなく、爬虫類のようなザラザラした肌感があった。

背中には翼があったが、まだ小さくとても飛べそうにはない。手の先には短い爪があり、先端は丸く、戦闘力は皆無だろう。

いや、そんな事はいまはどうでもいい。あの時、俺は神龍人と、言われて人型なんだと安心してたのに、どういうことか。

これでは、ただのずんぐりとした羽の生えたトカゲだ。

…詐欺だ…成長と共に二足歩行になるのだろうか…殻が割れた時のようにクラスチェンジがまだ待っているのか?その可能性の方が高い。そう思いたい…。

生前に読んだ異世界モノの小説には、すんなりと現実を受け入れる主人公がいるが、これは、想像以上の衝撃だ…彼等の精神力の高さに改めて感嘆する。


「キュウゥ…」


そして、この鳴き声…ずいぶんと可愛らしく、ドラゴンにしては情けない声だった…とにかく、落ち着こう…ところで、なにか忘れてるような。


「…」


あ、そうでしたね。あなた様がいましたね。これは失礼しました。

再び、白竜狼(?)と目が合った。相変わらず白竜狼はこちらをじっと見つめたままだ。


「きゅ、きゅう~?(は、はろ~?)」


声?を掛けてみるが微動だにしない白龍狼。


デスヨネー...どうしたらいいんだ。


再び、悶え出すチビドラゴンこと俺。それを首を傾げながら見つめる白竜狼。やがて、狼は腰を降ろし、暫く悶え続ける俺を眺めて、鼻を近づけ・・・


べろんっと、俺の顔を舐めてきた。そのまま、体を屈め、俺を腕の間に置いて、毛繕いをするように舐め続けた。

そこに、俺を害する感情など、一切感じられない。


...やっぱり、母親なのか。


目を細め、優しく腕の中に抱きながら、白竜狼は俺を舌で綺麗にしていく。

似ても似つかないが、これしか考えつかない。

どうやら、この白狼が俺の母親のようだ。

しばらく、俺を舐めまわしたあと、白竜狼は俺を見つめる。

その目を見ていると、不思議と落ち着いた。

大丈夫だと、何も心配はいらないと、そう言われてる気がした。


《【念話】を取得可能になりました、取得しますか?》


頭のなかにシステム音が聞こえる、だがいつもの声とはまた違うような。

反射的に「はい」と頭の中で考えると今度はいつものシステム音が聞こえた。


『《念話》Lv:1を習得しました。』


これでよかったのか、無事にスキルを手に入れたらしい。

それと同時に、頭の中にイメージが伝わってくる。

それは目の前の白竜狼からとすぐに理解した。


(歓喜..心配...幸福)



(...愛情)



隠すこともないまっすぐな、感情に、俺の心は今にも泣きそうなほど嬉しかった。

けど、こんな時、どうすればいいかはわからないからとにかく俺は短く。


「キュイ!」


元気よく、返事した。

ごめんよ、スキルの使い方がわからないんだ。これが精一杯だから、許して欲しい。

なにはともあれ、初めまして、母さん。

初めまして、新しい世界。

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